あちこちをViモードにしていこう

2008年8月21日(木)
萩原 佳明

Webブラウザだってvi

 Vimに慣れると、マウスはなるべく使いたくなくなってくるが、そのほかのアプリケーション、例えばWebブラウザを使う場合などはマウスの使用は避けられない。

 そこで紹介するのがVimperatorだ。これはFirefoxをVimモードのキーバインドで操作できるようにするプラグインである。インストールするには、FirefoxでVimperatorのWebサイト(http://vimperator.mozdev.org/)を表示し、Downloadsのところにあるxpiファイルへのリンクをクリックする。するとインストール確認のダイアログが表示されるので、画面に従いインストールし、Firefoxを再起動すれば、インストールは完了だ。

 Firefoxを再起動してまず目につく違いが、メニューバーとツールバーがなくなっていること。これはあくまでもVimモードの操作感を得られるようにという、開発陣のこだわりだが、メニューバー(m)とツールバー(T)が必要な場合は「:set guioptions=mT」で表示させることができる。

 ウインドーのスクロールは「hjkl」だ。「Ctrl-U」や「Ctrl-D」での半ページスクロール、「Ctrl-B」や「Ctrl-F」での1ページスクロールももちろん可能だ。「gg」でページの先頭に移動できるし「G」は最後尾に移動できる。「/」で文字列を検索できるのもVimと同様だ。「d」でカレントのタブを「削除」して、「u」で最後に削除したタブを「復活」できるのは、なるほどと思われるだろう。

 Vimperator特有の操作としては、「H」と「L」が左右移動の関連操作のような扱いになっており、Webブラウザの履歴の前後移動になる。つまり「H」で1つ前のページに戻り、「L」で1つ先に進む。もちろん、数字プレフィックスは有効なので、「10H」と入力すれば10個前に戻ることが可能だ。

 Vimでは上下移動(ノーマルモードの場合)のコマンドである「Ctrl-P」と「Ctrl-N」は、タブの移動に割り当てられている。「ZZ」はVimでは「上書き保存して終了」だが、Vimperatorでは「セッションを保存して終了」になる。つまり、次回起動したときに今まで開いていたウインドーやタブがそのまま開かれるようにして終了、ということが簡単にできる。

 一方、全く異なる役割になっているキーももちろんある。例えば「r」はリロード、「R」はスーパーリロード(キャッシュを無視したリロード)、「B」はバッファ、つまりこの場合はタブのリストを見ることができる。「zi」や「zo」は折り畳み関連のコマンドではなく、ここでは「ズームイン」と「ズームアウト」、つまりページの拡大と縮小に割り当てられている。

マウスにさようなら、それがvi流

 さて、ここで初めてVimを触ったときのことを思い出してほしい。たぶん多くの人は「jとkで移動できるのはわかったけれど、じゃあどうやってjとかkとかを入力するの?」と疑問に思ったのではないかと思う。

 この疑問をVimperatorに当てはめると、「フォームに文字を入力したいときはどうなるの?」とか「もともとのショートカットキーは使えないの?」ということになるだろう。前者は、実はフォームの入力欄をアクティブにしてあげれば(「マウス」で入力欄をクリックすれば)入力可能になるし、入力欄にフォーカスがある間は、もともとのショートカットキーの方が有効になる(例えば「Ctrl-P」は「印刷」)になる。

 しかし、マウスを使って入力欄をアクティブにするのが面倒だったり、一時的にVimperatorの機能をオフにしたいときは「I」をタイプする。これですべての入力がそのままFirefoxに出力できるようになる。

 1回のタイプだけを無視してほしい場合は「Ctrl-V」。これはVimでも「次に入力する文字はそのまま使う」という場合に使うので、それほど違和感はないかもしれない(例えば「。」を全部改行に変換したいときは、「:%s/。/」まで入力したあと「Ctrl-V」をタイプしてからエンターキーを押して「^M」、改行を入力したあと「/g」を入力して、全体として「:%s/。/^M/g」のようにする)。

 そして「あの入力欄をフォーカスしたい」「あのリンクをクリックしたい」という場合は、「f」をタイプする。そうするとページ上にアルファベットが書かれた赤い四角が表示される(図2)。入力欄やリンクが少ない場合は「H」「J」「K」「L」「A」「S」といった1文字の四角、リンクが多いと「JL」、「HJ」、「AH」、「HK」といった2文字の四角が表示される。

 この四角に書かれた文字をタイプすれば、入力欄であればそこにフォーカスできるし、リンクであればそのリンクをたどれる。これで、マウスには手を触れないまま、ブラウジングが可能になるのだ。

 では最後に、Vimに関する衝撃の事実をお伝えする。

1973年佐賀県生まれ。東京大学文科I類中退。株式会社アスキーで3年半ほど編集者生活を送った後に独立し、(有)プラスワンデジタルを設立。Webサイトの企画・運営やサーバ管理、プログラム作成などを担当。著書に「日本のSEはこれからどうなるのか」「これならわかる不正アクセス対策 入門の入門」(いずれも翔泳社)がある。http://www.p1d.com/

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