今さらながらのVim!
肩凝りマン必見!
それはよく行く整骨院での話。担当の整体師さんが僕をマッサージしながら言うには「萩原さん(僕のこと)って、コンピュータ関連の仕事のわりには、あんまり肩が凝ってないですよねえ」と。
そう。僕がvi(またはVim、以下Vim)を使う一番大きな理由は「手をホームポジションに置いたままいろんなことができるので、ずっとキーボードを打ってても疲れない」ということにある。手や腕の移動が少ないから体もラクチン。ホームポジションから手を動かさなくなった関係でタッチタイピングも得意になり眼球の移動が少なくなって目もラクチン。
あとこれはVim固有の特徴ではないが、黒バックのターミナルに明るめのグレーの文字でVimを使っているので、目が過剰な光にさらされず、シャバシャバしない。そういった理由から、肩凝りやドライアイとは無縁なのである。
だから「なんだか最近疲れやすい」が口癖で肩凝りに悩まされがちなプログラマーの方々には、すぐにVimをお勧めしたい。1文字あたりの違いは微々たるものかもしれないけれど、1日あたりの違いは結構大きい。
さて、ここでそもそもvi(そしてVim)とは何なのか紹介していこう。
Vimは、いわゆるテキストエディターの1つだ。その昔、まだコンピュータが現在のように高速ではなかったころ、エディターはファイルの全体を読めるものではなかった。
と言われてもピンと来ない方が大半だと思うが、当時のエディターはラインエディターと呼ばれ、1行ずつしか、編集やら表示やらができなかった。それを拡張して、複数の行を同時に見えるようにして視覚的にファイルを編集できるようにしたのがVIsual editorであるところのvi。ちなみに作ったのはBSDの創始者であるビル・ジョイだ。そして、そのviをいろいろと拡張したのがVi IMprovedであるところのVimなのである。
そして、昔のコンピュータにはマウスなんて付いてなかったし、カーソルキーだってなかったから、viではマウスもカーソルキーも使えない。「使えない」と言うとネガティブな感じだけど、逆に言えば「使う必要がない」。
カーソルを上下左右に移動したいときはホームポジションにある「hjkl」のキーで行うし、文字を選択したいときは「vをタイプしたあと2をタイプしてeをタイプ」する(基本的な操作方法については、連載の中で順番に紹介していく)。
だからVimを使ってれば、カーソルキーを求めてちょっとそこまでおでかけする必要もないし、マウスを求めて遠くへ旅立つこともない。ずっとホームポジションで大丈夫だ。
あと、古くからあるソフトだけに、UNIX系のOSであればまず間違いなくVim(がなくてもvi)がインストールされてるってのも大きい。
さて、ここで図1を見てほしい。これはWindows上でここまでの文章をVimで入力した場合の、キーの押され方を記録したものだ。赤いところほど多く押したキーであるが、ご覧のとおり、Vimがどれだけ手を動かさずに済むかがわかるはずだ。カーソルキーより向こうには、手が動いてないのだ。
とはいえ「たしかにマウスとかカーソルキーとか、使う必要はないかもしれないけど、全然使えないのはさすがにちょっと」と思ってしまうのも事実。でもご安心を。いまどきのOS、例えばLinuxなんかでviを起動して立ち上がるのはほとんどの場合Vimだし(手元にあるCentOS 3~5とDebian 4.0(Etch)とGentoo Linuxにて確認済み)、Vimではマウスもカーソルキーも使えるのである。
「そんなの使うのは邪道だ!」という意見もあるが、Vimのようなとっつきは悪いかもしれないけれど、かめばかむほど味が出るツールは、最初から完ぺきに使うのは難しいので、あまり気張らずに使い始めるのがよい。
ちなみに僕も、今回原稿書くために調べたら、いろいろと「知らなかった機能」を発見した。これはこれで楽しい。
ところでvi(とVim)は何と読むのか?
コンピュータ業界はカタカナ用語が多いこともあり、間違って発音して恥ずかしい思いをした経験を誰でも1つや2つ持っているのではないだろうか。
なので発音が怪しい用語は出会ったときに読みまで押さえときましょう。viは、「ブイアイ」。Vimも「ブイアイエム」で通じるだろうけど本当は「ヴィム」。
次は実際に使い方を説明していこう。