色が引き出す感情効果とは
「色調」で印象が変わる
人は一千万色以上の色彩を見分けることができると言われています。そしてどの色も多かれ少なかれ人の感情に影響を与えることができます。
色が持っている性質を整理すると、以下の3つの基本的な性質を挙げることができます。
1.色相:赤の仲間、緑の仲間といった、色彩の基本的な「色み」のこと
2.明度:明るい色、暗い色など、色が持っている明暗の階調
3.彩度:鮮やかな色、にぶい色など、色の強さの度合いのこと
色彩を人に伝える時、これら3つの属性をスケール化して表すことができます。この3つの属性で色彩を整理すると色彩の立体空間ができます。その色彩の立体を使って、色と色との関係を示すことができます。一方で、3つの属性で色彩を示すということは、3次元空間になり煩雑になるため、色彩について気軽にコミュニケーションするためには不便です。
そこで、通常は「色相」と「色調」の2次元で色彩を整理します。
図1-1は、「色調」ごとに色をグループにしたものです。縦軸に明度、横軸に彩度を取り、だいたい同じ彩度を持つ、ある範囲の色彩を同じグループにしてあります。大きく6つの分類に分けていますが、もっと細かく分けることもできます。
一番左の白から黒のニュートラルカラーを除いて、ほかのグループはどれも同じ色相の色で構成していますが、色の雰囲気が違うことに気づきます。色調とはこのような色の「雰囲気」ととらえると分かりやすいでしょう。
図1-2は、それぞれの色調のイメージについて調査した結果をまとめたものです。図1-1の各グループに記された色調を表す形容詞と比べて見てください。調査結果に表れたキーワードと、色調を表す形容詞と意味が似ています。このことは「色調」がいかに私たちの心に影響を与えるかということを示しています。
私たちがあるイメージを表現しようとする時、赤や青などといった「色相」に意識が向きがちですが、まずは、濃い、淡い、くすんだ、鮮やかな等といった、「色調」をどうコントロールするかが大変重要なのです。
各色調が与える感情効果
「さえた」色調は、都会的で洗練されたイメージがある一方で、低俗なイメージも合わせ持っています。ほかの色との組み合わせや、使う場面次第で、洗練されたイメージにもなるし、俗っぽいイメージにもなる色です。
「淡い」色調は、爽(さわ)やかでソフトな印象を作ることができます。都会、モダン、幸福、女性といったイメージがあります。この色調には、さえた色調に表れるようなマイナスイメージはありませんが、例えば、男らしさを強くアピールしなければならない場面で、このような色調を使用すると思わぬ結果が待っているかもしれません。
「灰(はい)みの」色調には、「上品」なイメージがります。品格がある色と言い換えてもいいでしょう。加えて「まじめ」な印象を与える色ですが、変化に乏しく、おもしろみに欠けるといった印象も合わせ持っています。
「にぶい」色調には、「田舎」のイメージがあり、安心感がある一方で、やぼなイメージもあります。
「暗い」色調には、地味、重厚(重い)イメージがあります。伝統的でフォーマルな印象を与える色で、高級感もあります。
色みを含まない、白からグレー(ニュートラルカラー)も、感情に与える重要な要素を持っています。
白は、ハレの場のイメージがある一方で、メルヘンのようなやさしいイメージも持っています。白は、灰みの色調にある品格のイメージや、洗礼性、爽(さわ)やかさ等、すべての色のいいところを集めたようなイメージプロフィルを持っています。
灰色は、都会的で洗練された、品格を感じさせる色です。ほかの色に比べて「知的」というイメージが強い色です。
黒は、死の象徴として使われることが多いせいか「葬式」のイメージがあります。一方、洗練、都会的、格調の高いといったイメージ、優雅さやセクシーさを感じさせる色です。