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連載 :
  インタビュー

富士通のOSS関係者とエンジニアに訊いたクラウドサービスK5の真実

2018年2月22日(木)
松下 康之
OpenShiftを新たなサービスとして加える富士通のクラウドネイティブへの考え方をインタビューした

富士通株式会社が提供するパブリッククラウドサービスであるK5に、新たにDockerとKubernetesをベースとしたアプリケーション実行環境であるOpenShiftが追加されることは、下記の記事ですでに紹介した。

参考:モノリシックとマイクロサービスを同時にサポートするOpenShift 3.7

富士通がCloudFoundryベースのPaaS環境とは別にOpenShiftを採用したのはなぜか? 富士通のオープンソースソフトウェア関連の責任者や、Kubernetesのコントリビューターなどに話を訊いた。

今回集まっていただいたのは、K5を担当するデジタルビジネスプラットフォーム事業本部ビジネスプラットフォームサービス統括部シニアマネージャの川合康太氏、ミドルウェア事業本部アプリケーションマネジメント・ミドルウェア事業部第二開発部部長の武田俊男氏、KubernetesのコントリビューターでもあるLinux開発統括部シニアプロフェッショナルエンジニア亀澤寛之氏(富士通ではオープンソースソフトウェア、ミドルウェアのプロフェッショナルだ)、そしてプラットフォームソフトウェア事業本部Linux開発統括部統括部長の江藤圭也氏だ。江藤氏については、前述のRed Hatによる記者発表でも登壇して説明をされていた。

まずは、CloudFoundryをベースにしたK5 CFに新たにDockerとKubernetesをベースにしたOpenShiftを追加するということですが、それに至る背景を教えてください。

武田:そもそもCloudFoundryを選んだ理由をお話しますと、CloudFoundryベースのK5 CFをリリースしたのが2016年4月で、その前から検証は1年ぐらいやっていました。Heroku、OpenShiftを含めて比較をやりましたが、その頃はまだKubernetesは影も形もなかったですね。クラウドネイティブなアプリケーション実行環境として、Herokuと比較してCloudFoundryを選んだのはオープンだからということに尽きます。当時のOpenShiftは今のものとは全く違うものでしたし。コミュニティのサイズとかその質も含めて、Herokuよりも良いという評価です。特に耐障害性も優れていましたし。

ミドルウェア事業本部アプリケーションマネジメント・ミドルウェア事業部第二開発部部長 武田俊男氏

ミドルウェア事業本部アプリケーションマネジメント・ミドルウェア事業部第二開発部部長 武田俊男氏

川合:2016年には、CloudFoundryにおいても「Dockerをベースにしてオーケストレーションはどうしようか?」という話は出ていましたよね。CloudFoundryも良いんですが、お客さまのほうから、Buildpackではなくオープンなテクノロジーでアプリケーションを実装したいという要望が出ているのは承知していました。あとは具体的にDockerコンテナでアプリケーションを開発を進めたいという話もありました。その時に丁度、Kubernetesが出てきたというタイミングです。

デジタルビジネスプラットフォーム事業本部ビジネスプラットフォームサービス統括部シニアマネージャ 川合康太氏

デジタルビジネスプラットフォーム事業本部ビジネスプラットフォームサービス統括部シニアマネージャ 川合康太氏

亀澤:CloudFoundryにも、コンテナのオーケストレーションをやるならKubernetesにして、とお願いに行ったこともあります(笑)。

Linux開発統括部シニアプロフェッショナルエンジニア 亀澤寛之氏

Linux開発統括部シニアプロフェッショナルエンジニア 亀澤寛之氏

江藤:Dockerはいいのだけれど、実際にDeployしてみるとすごく複雑で難しいと。その頃、Googleからコンテナを上手く運用するためのツールが出ると言う話があって、聞いてみるとそれがKubernetesだと。で、それをCNCF(Cloud Native Computing Foundation)がホストするというので、CNCFの設立と同時にプラチナメンバーとして富士通が参加したという話です。

プラットフォームソフトウェア事業本部Linux開発統括部統括部長 江藤圭也氏

プラットフォームソフトウェア事業本部Linux開発統括部統括部長 江藤圭也氏

それを決めたのは誰なんですか?

亀澤:それは江藤ですね。あと実際にKubernetesを触ってみて「これは新しいオペレーティングシステムだ」と感じたということもありました。

つまり「クラウドのLinux」だと。

亀澤:そうですね。私がKubernetesのコミッターとしてアサインされたのもトップダウンでした。

まとめますと、CloudFoundryをK5のPaaSとして準備しながらも、顧客が求めるよりオープンな環境で使えるクラウドの実行環境を模索している時に、DockerそしてKubernetesが出てきて、これは本物だと判断した。そして戦略的にCNCFにも入ってKubernetesにも貢献を始めた。そしてその流れでOpenShiftの採用に至ったと言う感じですか。コンテナオーケストレーションにも色々なオープンソースがありますが、その中からKubernetesを選んだのは?

亀澤:ソフトウェアの機能というよりも、やはりコミュニティのサイズと質ですね。KubernetesはDockerと比較しても、コミュニティがとてもオープンなんですよ。一つの例ですが、Dockerの社員であるコントリビュータが出すリクエストと、それ以外のエンジニアが出すリクエストが承認される速度を比べてみたことがあります。そうするとやっぱりDocker社員のリクエストのほうが早く承認されるんですよね。まぁ社員はそれでお金を貰っているので、当然と言えば当然なんですけど。でもKubernetesにおいては、そういうことは特にはなく、すごく透明でオープンだなぁと感じたのを覚えています。

武田:でもソフトウェア自体としては、Kubernetesも1.4ぐらいの時は色々苦労しましたよ。今の最新版はもう1.9になっていますけどね。

亀澤:企業としても、Googleという会社との付き合いはオープンソースのコントリビューターとして長いのでやりやすいというのはありましたよね。相手のことが良く分かっているというか。そのGoogleが推しているKubernetesというのは良さそうだと。

川合:実はCloudFoundryとOpenShift以外に、もうひとつ検討しているプラットフォームがあります。Pivotalが商用化しているCloudFoundry、Red Hatが推進するOpenShift、それらとは別に純粋なオープンソースソフトウェアであるDocker+Kubernetesを組み合わせたプラットフォームを提供しようと。

CloudFoundryという商用のPaaSや、Red HatがサポートするOpenShiftとは別に完全にオープンソースソフトウェアで素の状態のコンテナプラットフォームを提供すると。商用から完全なオープンソースまでのラインアップができたと言う感じですね。

川合:そうなりますね。まだ具体的にいつ頃に提供するのかはお話できませんが。

よくレガシーでモノリシックなアプリケーションをマイクロサービス化する際に、Lift&Shiftみたいな方法論が出ますが、必ずしもパブリッククラウドに載せることが全てではないと思います。富士通としてはそれについてはどう思われますか?

武田:実際にお客さまが抱えているアプリケーションをみるとCORBAで後ろはTuxedoといったものがまだあります。それらをマイクロサービスにするというのは、そんなに簡単ではありません。ですからそこは、エンジニアがコツコツやっていくしかないと。

川合:そういう部分の苦労というか、知見はかなりあるんですが、皆さんにお披露目するにはちょっと憚られるというか、あんまり技術的な話ではなくなってしまうので(苦笑)。

エンジニアをどう確保するか?みたいな苦労話ですね。

川合:そうです(笑)。

今回のK5についての考え方、そして製品の位置付けが理解できた気がします。ところで創立当初から参加してプラチナメンバーとして活動しているCNCFですが、これからどうなっていくと思いますか?

亀澤:CNCFにホストされているプロジェクトを見てもらうとわかりますが、機能的に被っているものがあるんですね。でもそれはCNCFとしては問題ないと思っています。なので、今後もプロジェクト自体は増えていくと思います。Istioについても今、ホストするかどうかを投票している段階です。

江藤:CNCF自体について言えば、私は元々プロダクトの人間なので、「製品を作る」という観点でソフトウェアを見ているのですが、CNCFには最近、サービスをやっている会社がものすごく活発に活動をしています。そしてオープンソースソフトウェア自体も、サービスをやっているベンダーからのものが増えていると思います。なのでちょっとこれからどうなるのかという点に関しては、私の想像を超えているというのが正直なところですね(笑)。

亀澤:LyftやTwitterからのソフトウェアもありますし、そういったサービスの現場で使っているよく使い込まれたソフトウェアが出てきているんですよね。なので、そういう流れはこれからも続くと思います。

江藤:富士通としても、K5のサービスを通じて培われてきたソフトウェアや知見がありますので、それを今後どうやってコミュニティに貢献していけるか? を考えています。

日本発のオープンソースソフトウェアとしてコミュニティが健全に成長していくのを見ていきたいと思いますので、ぜひ、頑張ってください。

K5 CFが単なるCloudFoundryの富士通版というのではなく、これから訪れる新しいクラウドネイティブなITに向けて着々と準備が始まっていることを感じさせるインタビューであった。

会話の中で「富士通にPHPを書けるエンジニアがいるわけがない」というネットでの書き込みに対して、すでに社内でもGitHubが使われており、1000名規模のアクティブなエンジニアがいるということをもう少し知ってほしいというコメントもあった。ウォーターフォール型の受託開発のような旧来のビジネスを、根本から変えようとしているシステムインテグレーターの苦悩を垣間見た気がする瞬間であった。K5の将来を注視したいと思う。

<編注:2018/2/22 19:00更新>サービス名称に関して一部誤解を招く表現があったため訂正しました。

フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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