Pythonを選んだワケ

2008年11月18日(火)
柏野 雄太

ZopeからみたPython

 筆者がPythonを選択した2つ目の理由は、WebのフレームワークであるZopeがPythonでできていたからです。むしろ筆者がPythonに出会ったのは、Zopeに出会ったからだと言えます。その当時筆者は小さなソフトハウスでWebシステムの受託開発をしていましたが、システムインテグレーションに利用するフレームワークの1つとして採用したのがZopeで、それがZope/Pythonに触れるきっかけでした。

 Zopeは、ダウンロードしたらすぐに使うことができるWeb統合環境で、Webサーバー、Webアプリケーションサーバー、オブジェクト指向データベースの3つを最初から組み込んでいる、フルオブジェクト指向Webフレームワークです。

 開発を初めてすぐにわかったのは、ZopeはどのWebフレームワークとも異なる独自の世界観を持ったフレームワークだということです。最初はとまどいましたが、実際に開発を進めていくと、合理的で一貫した作法に病みつきになりました。

 Zopeを使う場合、プログラミング言語はPythonになります。Pythonプログラミングのわかりやすさ、軽快さ、そして足回りの早さが、Zopeの合理的な作法と相まって、今まで体験をしたことがない気持ちのよさを開発フレームワークに感じたのです。この2つを組み合わせることで、自分の思考リソースをプログラミングのシンタックスの問題に割くことなく、解決するべき問題に集中できるようになりました。

 こういった体験が高じて、筆者はZopeの開発元会社であるUS Zope Corpolationの日本法人に入社し、Zope 3の開発を行うことになりました。そして、そこにおいてZopeの父であるJim FultonやPythonのウィザードTim Petersと一緒に仕事をして感じたのは、Zopeというのはただ作る効率がよいというだけでなく、人の知的モチベーションをかき立てるような、教育的なフレームワークでもあるということでした。

 Zopeを通じてPythonのことを再び学ぶことがあります。このことは、ZopeはPythonで構築されている多くのフレームワークの1つであるにもかかわらず、ZopeがPythonの開発コミュニティで独自の地位を獲得していることの理由にもなっています。

 筆者がこれについて偉そうなことを言うよりも、有名なPythonハッカーPhillip J. Ebyの言葉を紹介しましょう。この言葉は、Philipp von Weitershausenの「Web Component Development with Zope 3」の前書きの一部です。

Zopeの教育性

 Phillip J. Ebyの言葉にあるように、Zopeを学ばない者は、それを再発明しなければいけない運命にあるのです。このようにZopeはPythonを、そしてコンピュータを利用した実装をより深く学ぶための、教育的なフレームワークになっています。

 次のページでは、Zopeの教育性を具体的に示します。

理学系博士課程単位修得退学。研究所、SIベンチャー、ヤフー(株)、ゾープ・ジャパン(株)を経て現在はアイル・オープンソース(株)に所属。オープンソースのZopeおよびPythonにかかわって7年になる。

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