日本の常識は海外では通じない? 日本と海外のさまざまな「違い」

2020年8月26日(水)
宮園 順光(みやぞの よりみつ)

はじめに

海外旅行へ行って、日本と海外との違いに驚かれたことはありませんか?

日本に住んでいると「当たり前」と思っていることでも、実は海外では当たり前ではないことがあります。海外の人から見ても「日本のこれは素晴らしい」と感じてもらえることもあれば、理解してもらえないこともあります。

「どちらが正しい」ということではなく、習慣や文化の違いを知ることで、お互いをより理解することが可能になります。そして、お互いを理解するために大切なことが「知ろうとする意識」と「言葉」です。

そこで今回は、海外に9年間住んでいた筆者の経験を通して「時間」「環境」「教育」、そして「食べ物」に対する考え方で日本と違うと感じた点を紹介します。

なお、ひとことで「海外」と言っても、例えばヨーロッパとアフリカでは考え方も文化も異なります。ここでは、筆者が特に関わりの深かった欧米での経験を中心に書いています。

「時間」に対する感覚の違い

日本では時間通りに何かが行われることは当たり前のこととして考えられています。電車が1分でも遅れるとお詫びのアナウンスが流れ、何かが時間通り行われないと不安になってしまう人も多いのではないでしょうか。

時間に正確であることは、日本が世界に誇れることだと思います。しかし、海外ではこれが必ずしも当たり前ではなく、中には時間通りにいくことの方が少ないところもあります。

例えば、筆者が以前住んでいたベルギーでは、バスやトラム(路面電車)、電車といった公共の交通機関が整備されていました。バスが渋滞にはまって遅れてしまうことは理解出来ますが、ベルギーを含むヨーロッパ諸国では、電車が時間通りに到着しないことはよくあります。

筆者は通学でバスを利用していましたが、ある日友人と電車を使うことになりました。本来電車が来る時間になってもまったく来る気配はなく、結局電車が到着したのは予定時刻を30分ほど過ぎてからでした。友達も少し遅いとは感じていたようでしたが、話を聞くと時刻表は「目安」でしかないので「予定時間通りに来たらラッキーだと思う」と笑って話していたことが衝撃的でした。

時間が当たり前に守られる日本に長くいると、この感覚を持つことは難しいでしょう。しかし、このような経験をしながら、実際に現地の方々の時間に対する感覚を知ることで理解できるようになります。また、こういった違いを理解するためにも、言葉はとても大切です。

このような経験をしたことで、数年前に仕事で行ったタイで、国際イベントが開始時間を15分ほど過ぎてようやく始まったときも、特段驚くことはありませんでした。

同時に、日本のように時間に正確なことが、海外では必ずしも「常識」ではなかったとしても、これは「誇るべきもの」という考えを持つことができたのです。

「環境」に対する意識

環境配慮のため、この7月から日本でもビニール袋(レジ袋)が有料になりました。近年では自治体によって方法は異なりますが、ゴミの分別も少しずつ進んで来ていると思います。

しかし、日本人に環境に対する意識が本当の意味で根付くまで、まだまだ時間を要するでしょう。しかし、筆者が環境を意識するようになったのは、もう20年以上も前です。きっかけはデンマークやベルギーで買い物をしたときのことでした。

旅行で訪れた北欧のデンマークでは、多くのスーパーにペットボトル回収の機械が設置されており、ペットボトルを入れるとお金が返金されるシステムになっていたのです。このシステムについてデンマーク人の友人に聞くと、ペットボトルの再利用を促進するために設置されているとのことでした。デンマークでは回収した際の返金額が元々の飲料の販売価格に上乗せされているとも言っていました。

昔は、日本でもジュースやビールの瓶をお店に持って行くとお金が返ってくる制度がありましたが、今日ではほとんど見られなくなってしまいました。ヨーロッパでは、このシステムが今でも残っているところがあるのです。

また、筆者がベルギーに住んでいた1990年代ではビニール袋を無料で貰えましたが、多くの人達がいわゆる“マイバッグ”や布製のキャリーバッグのようなものを持ってスーパーへ買い物に行き、ビニール袋を自主的にもらわないようにしていました。

また、パン屋ではビニール袋ではなく紙袋を使い、日本のようにパンを1つずつ透明のビニール袋で包むということはありませんでした。

一度レジ袋について友人に聞いたことがありますが、「ゴミが増えるしスーパーへ買い物に行くと分かっているのだから、家から袋を持って行けば楽でしょ?」と言われたことが当時としてはとても新鮮でした。

ヨーロッパでは、昔からある建物を何百年も利用することが当たり前であるように、今ある環境を大切にするということが当然と考えられているのでした。こういった意識も、実際に見ることに加え、彼らの言葉で生の考えを聞くことで、しっかりと知ることができます。

「教育」に対する考え方の違い

教育に対しても、日本と海外では大きな考え方の違いがあります。日本では、教育の目的が「大企業に就職するために、良い大学に入ることだ」という考え方が未だ根強く残っています。良い大学に入れば、教育の目標を達成したように思う人が多くいるのです。

現在では、変化してきている大学もありますが、多くの大学では必要な出席率を満たし、課題を提出することで単位がもらえ、卒業できます。極端な言い方をすれば、受け身で最低限の知識を身に着けただけでも、卒業できるのです。

これに対して海外では、教育を自分が生きていく上で何をしたいのかを考え、その準備や知識、経験を得るためのものと捉えているところが多いです。日本では授業が受け身になっていることが多いのですが、海外では積極的に自分が知りたいことを知るために、主体的に発言することが当たり前と考えられています。

これができなければ、大学では単位を落とし、退学になってしまうこともあります。また、特にアメリカでは、意見を交わして議論するディベート(討論)が多く行われます。自分の意見を発信できない人は、特に自分の考えがない、または他人の意見に同調にしたとみなされます。このディベート能力は、その後の人生でもとても大切な役割を担います。

よく日本では「外国人は主張が激しい」という声を聞くことがありますが、彼らにとって、それは教育を通して得た「常識」と言えるのです。裏を返せば、日本から海外へ出た場合、自分の考えを伝えられない日本人の方が彼からから見ると「非常識」だとみなされてしまう場合もあります。こういった違いを理解しつつ、自分の意見を伝えて議論することは大切だと言えるでしょう。そして、何より考えを伝えるためには、言葉が大切です。

日本人が持っている協調性は世界に誇るべきものです。同時に、自身の意見を主張する意識、そしてそれを可能にする語学力を持つことで、国際社会でも十分に活躍できるようになれるでしょう。

「食べ物」に対する考え方の違い

最近では、日本でも健康を意識する人が多くなっています。しかし、特に東京や大阪といった大都市で働く人達は、ゆっくりと食事をする時間がないため、まだ便利なコンビニ等で毎日の食事を購入することが多いのではないでしょうか。

和食はとても健康的で体に良いのですが、それらを作って食べる時間がなくなってしまっている点はとても残念に感じます。忙しく働く日本人の多くは、食事を作ったり、食べたりする時間を減らして働く時間や自由時間を確保する傾向があります。

しかし、本来は「体が資本」と言われるように、運動や食事が重要視されるべきなのです。

筆者が住んでいたヨーロッパでは、これを身近に感じることができました。例えば、朝はパンと決めている家庭が多く、当日食べるパンを朝早くにパン屋へ行き、でき立てのものを購入していました。

また、昼食にはサラダやサンドイッチを作って持ってくる人が多く、忙しい人でも「食事は健康的なものを食べよう」という意識を持っていました。

これについても筆者は、いつも昼食を作ってくるのは面倒ではないかと尋ねたことがありました。それに対して「自分で作った方が何を食べているか分かるし、習慣化しているから面倒でもない」というとても説得力のある答えが返ってきました。

確かにお店で買う方が簡単ではあっても、材料が何か分からないお弁当等を買うよりも、自分で材料を選んで作った方が健康を維持できるというのは、「その通り」だと感じたことを覚えています。

「売っているものだから安心」と考えるのではなく、「自分のことは自分で守る」という意識を持つことは大切だと考えさせられたものです。また、会話を通してこういった考えを改めて認識することができ、言葉の重要性も実感しました。

おわりに

今回紹介した例は、もちろん地域や個人によっても異なると思います。海外との考え方や意識の違いを紹介するために、筆者自身の体験を元にお話してきました。

今回の内容を通して皆さんにお伝えしたいことは、日本の方が良いとか悪いということではなく、日本では当たり前(常識)だと思っていることが、実は海外では常識ではないことも多くあるということです。もちろん逆も然りです。

そういった違いがあることを理解した上で、英語等の言語を通して違う考えや文化を持った人達と接し、お互いの違いを知り、受け入れることがとても重要です。言語は単に情報を交換するための道具ではなく、文化や習慣の違いを理解するためのツールでもあるのです。

また、言葉を理解することは人としての成長にも繋がります。言葉を学ぶことを通して、文化や習慣の違いを知り、そこで暮らす人たちのことを深く理解できるようになる。そのような考えも持ちながら英語学習に励んでいただくと、より学習意欲が高まるのではないでしょうか。

著者
宮園 順光(みやぞの よりみつ)
株式会社グローレン
株式会社グローレン 取締役。小学校〜高校卒業までをベルギーで過ごす。上智大学を卒業後、大手英会話スクールにて7年間教務主任として多くのクラスを担当。外国人講師の指導にも従事。マンツーマン英会話教室の代表を経て、2014年から現職にて語学プログラムの総監修を務める。これまで1万人以上にレッスンを提供。TOEIC990点、英検1級。

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