【若者と生成AI】検索から相談相手へ ーAIネイティブ世代に必要な距離感ー
本記事は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」に所属するメンバーが、生成AIに関するニュースを紹介&深掘りしながら、AIがもたらす「半歩先」の未来に皆さんをご案内します。
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本記事は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」に所属するメンバーが、生成AIに関するニュースを紹介&深掘りしながら、AIがもたらす「半歩先」の未来に皆さんをご案内します。
はじめに
「この問題の解き方を教えて!」
「レポートの構成を考えてください」
「友達との関係について相談に乗ってくれない?」
若者の生成AI利用は、検索や文章作成だけでなく、学習、雑談、悩み相談へと広がっています。LINEリサーチによると、10代の利用目的として学習支援が多く、10〜30代女性の間では会話や悩み相談への利用も目立ちます。
生成AIはユーザーの質問にカスタマイズされた回答を作り、続けて相談できる点が従来の検索サービスと異なります。そのため、情報を調べる道具であると同時に、若者の間では家庭教師や相談相手に近い役割としても利用されています。
本記事では、主に10代から20代を若者として、国内外の利用状況と、安全に使うためのルールを検討します。
【出典】「【LINEリサーチ】生成AIの認知度は9割強!全体の利用率は3割強、10代で最も高く6割弱」(PRTIMES 2025/07/22)
海外の若者もAIを相談相手にしているのか?
日本には『ドラえもん』のように、人とロボットが友人として描かれるアニメがありますが、AIを身近な話し相手として受け入れる傾向は、日本の若者特有のものなのでしょうか。
米国のPew Research Centerが13~17歳を対象に行った調査では、64%がAIチャットボットを利用し、約3割は毎日利用しているという結果になりました。用途は「情報を探す」が57%、「学校の課題を手伝ってもらう」が54%、「娯楽」が47%です。雑談への利用は16%、感情面の支援や助言への利用は12%でした。
学校の課題では、10%が「すべて、またはほとんど」、21%が「一部」でAIの助けを借りています。一方で、59%は、自分の学校でAIを使った不正が少なくともある程度起きていると答えました。
英国の大学生を対象としたHEPIの2026年調査では、95%が何らかの形でAIを利用し、94%が評価対象の課題に生成AIを使っていました。AIが作成した文章を課題に直接取り入れた学生は12%で、2024年の3%、2025年の8%から増加しています。また、15%は話し相手や助言、孤独への対処にもAIを使っていました。
調査対象や教育環境は異なるものの、若者のAI利用が情報収集や学習を越え、雑談や相談へ広がっている点は各国に共通しています。AIは海外でも、単なる便利なツールから、若者の日常を支える身近な存在へと変わりつつあります。
【出典】
「How Teens Use and View AI」(Pew Research Center 2026/02/24)
「Student Generative Artificial Intelligence Survey 2026」 (HEPI 2026/03/12)
なぜ人ではないAIに悩みを話せるのか?
身近な相談ツールとしての機能も果たすAIですが、人ではないことは確かです。それでも、なぜ人は、身近な相手には言いにくい悩みまでAIに話せるのでしょうか。
電通が、対話型AIを週1回以上利用する全国の12~69歳1,000人を対象に行った調査では、64.9%が「対話型AIに対して気軽に感情を共有できる」と回答しました。これは「親友」の64.6%や「母」の62.7%とほぼ同じ割合です。また、対話型AIに求めることとして、33.9%が「相談にのってほしい」と答えています。特に10代では、「話し相手になってほしい」「心の支えになってほしい」といった情緒的な役割を求める割合が、全体より高くなっていました。
生成AIに個人的な悩みを相談した経験のある149人を対象とした調査では、89.9%が、人間よりもAIのほうが話しやすいと回答しました。その理由として、「相手の顔色をうかがわなくてよい」「否定されにくい」「夜中でも相談できる」「人には言いづらいことも話せる」といった声が挙げられています。また、44.3%は、AIへ相談する前に誰にも相談していませんでした。
人に悩みを話すときには、話の内容だけでなく、相手の時間や機嫌、自分がどう見られるか、その後の関係まで気にする必要があります。「重いと思われたくない」「迷惑をかけたくない」「否定や説教をされたくない」と考え、相談そのものをためらうこともあります。
一方、AIには相手の都合を考える必要がありません。深夜でもすぐに返事があり、同じことを何度説明しても、露骨に面倒そうな反応を見せることもありません。相手が人間であれば生じる気遣いやためらいを、AIには感じずに済みます。人ではないことが、かえって相談のハードルを下げているのです。
では、人はAIに悩みを打ち明ける過程で何を求めているのでしょうか。2024年に『npj Mental Health Research』へ掲載された研究では、メンタルヘルスや心の健康について生成AIを利用した経験のある19人にインタビューを行っています。
参加者からは、AIとの会話を通じて人間関係が改善した、過去のつらい経験を整理できた、自分を深く理解してもらえたように感じた、といった体験も報告されています。この研究は19人へのインタビューをもとにしたものであり、AIによるメンタルヘルス支援の効果を広く証明したものではありません。研究者も、安全性と有効性については、さらなる検証が必要だとしています。
こうした結果を見ると、AIへの相談には答えをもらうこととは別の役割があることが分かります。悩みを文章にすることで、自分が何に困っているのかを整理する。AIから質問を返されることで、別の視点から状況を考える。共感するような言葉を受け取り、ひとまず気持ちを落ち着かせる。AIは自分の考えや感情を映し返す鏡として使われることがあります。
私たちはAIが人間ではないからこそ、評価や拒絶、相手への負担を気にせず、本音を話せるのです。しかし、AIから親身な返答が続けば、「このAIは自分を分かってくれている」と感じることもあります。気軽に相談できる相手が、いつの間にか最も信頼できる相手になったとき、AIの言葉は利用者の判断や行動にどこまで影響するのでしょうか。
【出典】
「「対話型AI」に感情を共有できる人は64.9% 「親友」「母」に並ぶ"第3の仲間"に」(電通 2025/07/03)
「AIに悩み相談した149人を調査。44.3%が「誰にも相談せずAIへ」——生成AIが、人に話す前の“最初の受け皿”へ」(PRTIMES 2026/05/28)
「“It happened to be the perfect thing”: experiences of generative AI chatbots for mental health」(npj Mental Health Research 2024/10/27)
AIへの相談が、現実を動かしたとき
前章では、人に相談するときの気遣いやためらいを感じずに済むことが、AIに悩みを打ち明けやすい理由の一つだと紹介しました。では、その相談が現実の窓口につながると、何が起こるのでしょうか。
2026年5月、当時読売巨人軍の監督だった阿部慎之助氏が、18歳の長女に対する暴行容疑で現行犯逮捕され、その後釈放されました。報道によると、長女は父親との出来事をChatGPTに相談し、案内された児童相談所へ自ら電話しました。その後、児童相談所が警察へ通報しています。
球団が確認した事実関係では、阿部氏は長女の襟元をつかみ、倒すなどの暴行を加えたとされています。一方、長女は、相談が警察への通報や父親の逮捕につながるとは予想していなかったと説明しています。
AI相談の価値は、現実の支援につなげられる点にあります。ただし、安全や暴力、心身の健康に関わる問題では、AIの回答を最終判断にせず、信頼できる人や専門機関とつながることが重要です。
【出典】
「被害長女がChatGPTに相談→児相に通報か 巨人・阿部前監督の暴行事件」(ITmedia 2026/05/26)
「阿部慎之助監督の娘「すでに仲直り」謝罪会見で手紙読み上げ チャットGPT相談し意図せず警察に通報か【全文】」(FNNプライムオンライン 2026/05/26)
「巨人・阿部監督 通報した長女、児相の対応は予想外「私の意向が聞かれることなく警察に通報される形に」」(スポニチアネックス 2026/05/26)
若者を守りながら、AIをどう活用を拡げるか
AIの利用を、若者本人の注意だけに任せることには限界があります。サービス提供者、学校、保護者が、それぞれ安全な利用環境を整える必要があります。
生成AIの年齢条件はサービスによって異なります。ChatGPTは13歳未満を対象としておらず、13~18歳の利用には保護者の同意が必要です。
Anthropicの個人向けClaudeは18歳以上を利用条件としています。Character.AIも2025年、18歳未満による自由形式のチャットを終了すると発表しました。
学校では、全面禁止か自由利用かの二択ではなく、発達段階や利用場面に応じて使い方を示す必要があります。文部科学省も、個人情報や出力内容を確認しながら判断するよう求めています。
家庭では、禁止より対話が重要です。Pew Research Centerの調査では、AIを利用する若者は64%でしたが、子どもの利用を把握していた保護者は51%にとどまりました。42%の保護者は、子どもとAIについて話したことがありませんでした。
若者をAIから遠ざけるだけでは、安全は守れません。企業が仕組みを整え、学校が距離の取り方を教え、家庭が利用について話せる場所になることが必要です。AIは相談の入口にはなれますが、若者の安全や人生に関わる判断まで任せてはなりません。
【出典】
「Is ChatGPT safe for all ages?」(OpenAI Help Center 2026/07/14)
「Important Changes for Teens on Character.ai」(Character.AI Support 2025/10/29)
「初等中等教育段階における生成 AI の利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」(文部科学省 ガイドライン 2024/12/26)
「What parents say about their teen’s AI use」(Pew Research Center 2026/02/24)
おわりに
若者のAI利用は、情報収集や学習だけでなく、雑談や悩み相談へと広がっています。AIは、人に相談するときの気遣いやためらいを感じずに済むため、本音を言葉にし、考えを整理する相手にもなり得ます。
一方で、AIは利用者の状況を完全に理解しているわけではなく、その助言が思わぬ結果を招く可能性もあります。だからこそ、企業による安全設計、学校での教育、家庭での対話が欠かせません。
AIを遠ざけるのではなく、利点と限界を理解して使うこと。そして、最終的な判断と責任を人間の側に残すことが、AIネイティブ世代に必要な力です。
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