CloudNative Days Winter 2025レポート 6

【CNDW2025】Grafanaが明かす「オブザーバビリティの哲学」ー最小限の労力で実用的なインサイトを得るには

2025年11月18-19日に開催された「CloudNative Days Winter 2025」より、グラファナラボ日本合同会社のセッションレポートを紹介する。

齋藤 公二 (さいとう こうじ)

6:30

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提供:グラファナラボ日本合同会社

今やバズワードといえる「オブザーバビリティ(Observability:可観測性)」。システムの状態を観測する能力や仕組みを指す言葉だが、本来の意味が正しく理解されているかは微妙なところだろう。2025年11月18〜19日に開催された「CloudNative Days Winter 2025」に、Grafana Labsのシニア デベロッパープログラム ディレクターであるRichard Hartmann氏が登壇。「オブザーバビリティの哲学」と題して、人類が記録を残し始めて以来どのようにデータを扱い、最適化してきたのかを振り返りながら、最小限の労力とコストでデータから実用的なインサイトを得るための考え方を紹介した。

多くの企業が直面する現実
「システムとデータの散在」

Grafana Labsはオープンソースのオブサーバビリティ(可観測性)プラットフォーム「Grafana」をベースとしたサービス「Grafana Cloud」を展開する米企業だ。2025年11月には日本法人としてグラファナラボ日本合同会社を設立し、国内企業とのさまざまなパートナーシップのもと、日本市場に最適化されたサポートの提供も開始している。

同社でシニア デベロッパープログラム ディレクターを務めるHartmann氏は、CNCF運営委員会や技術監督委員会のメンバーを務めるほか、PrometheusやOpenTelemetryといった主要プロジェクトにも深く関わるエンジニアだ。同氏はまず、現在の企業が抱えるデータ管理の課題について、「さまざまなシステムを取り扱わなければならず、データが散在している現実があります」と切り出した(写真1)。

写真:Grafana Labs Senior Developer Programs Director Richard Hartmann氏

例えば、Oracle Databaseに格納されたデータの場合、Oracleの管理画面だけで完結するとは限らない。必要に応じてAppDynamicsで障害調査を行ったり、ElasticsearchやSplunkでパフォーマンス分析を行ったりと、複数のツールを行き来する必要がある(図1)。

「システムやデータがバラバラだと人間が短時間で理解するのが難しくなります。オレンジと赤が並んでいると見分けがつきにくいようなものですね。データを異なるシステム間でどうナビゲートすればいいか、機械に理解させることも難しくなります」(Hartmann氏)

こうしたデータ管理の課題に対応するために「データ管理の基本に立ち返って考えてみましょう」とHartmann氏は述べた。

図1:OracleやAppDynamics、Splunkなど、異なるツールにデータが分散しており、全体像の把握や相関関係の理解が困難になっている

産業の成熟プロセス
「ログファースト」から「ナンバーズファースト」へ

そもそも人類はデータとどう向き合ってきたのか。Hartmann氏は、電力メーターのログを集計したダッシュボードや、地球上の鋼や鉄について組成や特性を記した書物、人類最古の書簡である取引記録を記した粘土板、人類最古の絵文字などを写真で示しながら、こう述べた。

「重要なポイントは、人類は数千年にわたり、詳細な記録から重要な事象や数値(ナンバー)への集約と最適化を繰り返してきたということです。まず何か価値のあるものを絵やストーリーに残しました。ただ、それを繰り返し行うと多くのコストがかかることに気がついたのです。そこで主要なイベントのログのみを記録することにしました。しかし、ログ抽出だけでもコストがかかることがわかり、最終的に数値へと集約するようになったのです」(Hartmann氏)

現在は、あらゆる業界で数値が利用されている。まずイベントをログとして残し、効率化、最適化のなかで、数値に集約する。

「どんなことでも、まずは記録を優先する『ログファースト』で始まります。その後、産業として成熟すると『ナンバーズファースト』へと変化していきます。例えば、家庭での水道の消費を測るときも、最初は消費した水の利用量だったかもしれませんが、今は水道の利用料金が数値化されています。『どのくらい水を消費したか』よりも『いくら払わなければならないか』という数値のほうが重要だからです。一方、ITはどうでしょうか。いまだにかなりログヘビーな状況といえるでしょう。最適化できておらず、十分に成熟しているとはいえません」(Hartmann氏)

世界で2500万人が利用するダッシュボード
「Grafana」の哲学

そこでポイントになるのがオブザーバビリティだ。Hartmann氏によると、オブザーバビリティの概念は、1800年代の数学者、カール・フリードリヒ・ガウスにまで遡ることができるという。

「ガウスは、オブザーバビリティを真実への近似だと主張しました。真実への近似は、未知量を決定するのに絶対的に必要な数よりも多くの観測を適切に組み合わせることによってのみ達成できると説いたのです」(Hartmann氏)

また、1960年代「カルマン理論」として知られる制御理論の創始者ルドルフ・エミル・カルマンは、オブザーバビリティを「システムから出力される情報の知識から、その内部の状態をどれだけうまく推論できるかの尺度である」と定義している。こうした考え方のもとで提供されるのがGrafanaだ(図2)。

図2:Grafanaのアクティブなインストール数は100万件以上、ユーザー数は2500万人を超える。7000社以上の顧客と強力なコミュニティに支えられている

「Grafanaは、世界で最も人気のある運用ダッシュボード技術です。データをビジュアル化する技術として、Grafanaは2,500万人以上に利用されており、稼働中(アクティブ)のインスタンスは100万を超えます。これは東京都の人口(約1400万人)よりも多い数です」(Hartmann氏)

Hartmann氏はGrafanaが成功した理由の1つとして、「大型テントの哲学(big tent philosophy)」を挙げた。

「ログ、メトリック、トレースに関してクラス最上位のデータベースを持っていますが、その使用を強制しませんし、ユーザーを特定のベンダーやツールに縛りつけることもありません。競合とも言える200以上の他社プロダクトをサポートしています。オープンソースはもちろん、クラウドの商用サービスもすべて利用できます。こうした包括性が差別化のポイントです」(Hartmann氏)

必要なデータだけを分析する
「Adaptive Telemetry」と自動化機能

Grafana Labsが提供するサービス、Grafana Cloudの重要な機能としてHartmann氏が挙げたのが、「アダプティブテレメトリ(Adaptive Telemetry)だ(図3)。

図3:メトリクス、ログ、トレースに加え、プロファイルへと対応領域を拡大しているAdaptive Telemetry。必要なデータのみを分析対象とすることでコストを削減する

「お客さまにとって本当に役に立つデータは何か。フィードバックや経験をもとに、機械学習などを組み合わせて分析・最適化する機能、『アダプティブテレメトリ』を提供しています。この機能を使うことで本当に使われたデータに対してのみ課金しますので、データ総量を40〜50%減らすことができます」(Hartmann氏)

Grafana Cloudでは、こうした機能に加え、オブザーバビリティを構成するさまざまな機能をクラウド上で提供している。AWS、Azure、GCPといった主要なクラウドプラットフォームにも対応しており、クラウド環境全体を横断した可観測性を実現できる点が特徴だ。

オープンソース版のGrafanaや、個別に提供されるクラウド機能との違いとしては、ナレッジグラフの活用、障害発生時の根本原因分析(RCA)、Kubernetes環境への高度な対応、ユーザーが開発した独自アプリケーションの自動検出、さらにAIエージェントへの対応など、運用を高度化するための機能が含まれている(図4)。

図4:Kubernetes、インフラ、アプリなどを網羅的に可視化。ナレッジグラフによる相関関係の可視化や、AIを活用した根本原因分析機能も提供している

「ナレッジグラフを使うと、データの相関関係、相互に連携しているデータをまとめてグラフという形で見ることができます。また、根本原因分析では多くの作業を自動化できます。経験豊富なエキスパートが行うような原因特定を、ジュニアと呼ばれる経験の少ない担当者でも担うことができます。ある事例では、ツールを使わずにエキスパートが対応した場合、ツールを使ったジュニアよりも3.5倍も時間がかかってしまいました」(Hartmann氏)

Hartmann氏は「私はドイツ人。ドイツでは企業がツールを導入するにあたり、システムインテグレータからのアドバイスを重視します。日本も同様であると聞いており、2025年に設立したGrafanaの日本法人も、ドイツでの成功事例を参考にしながらシステムインテグレータとの協業を進めていく予定です」と、日本での展開に力を入れていくことを訴えた。

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