オープンソースソフトウェアの信頼性評価

LinuxWorld Expo/Tokyo 2006
LinuxWorld Expo/Tokyo 2006
LinuxWorld EXPO/Tokyo 2006レポート

オープンソースソフトウェアの信頼性評価
会場:東京ビッグサイト(東京国際展示場)
記者:ThinkIT編集局  2006/6/5
JBossとTomcatの信頼性確認の必要性

   LinuxWorld EXPO/Tokyo 2006の3日目は最終日ということもあって、多くの人が集まっていた。基調講演はもちろん、会場内オープンシアターにおいても多くの講演が行われた。

   会場内オープンシアターのOSS推進活動紹介エリアにおいて、「APサーバ クラスタの信頼性確認の方法とその結果 〜 JBoss Tomcatの結果と注意点〜」という講演が日立システムアンドサービスの研究開発センタ 評価センタ 主任技師である鈴木和義氏によって行われたので、ここでその内容をご紹介しよう。

日立システムアンドサービスの鈴木和義氏
日立システムアンドサービスの鈴木和義氏

   「ユーザは開発コミュニティからオープンソースソフトウェア(OSS)を手に入れることができるが、利用する場合にはサポートとして信頼性評価する必要があります。どのレベルまでSIerのサポートが必要であるかをユーザ自身が判断できる、このことがオープンソースの特性なのです」と、鈴木和義氏はOSSの特性について語った。

   しかし信頼性が求められるはずのアプリケーションサーバのクラスタについては規格化されておらず(J2EE 1.4の対象外)、各ソフトウェアが各々実装しているのが現状である。そこでアプリケーションサーバのクラスタリングについて規格化が行われれば、ユーザとSIerのサポートの範囲が明確化され、効率的なサポートが可能となると鈴木氏はいう。

開発コミュニティ以外のベンダーのサポート
開発コミュニティ以外のベンダーのサポート
(出典:OSS推進フォーラム)


信頼性評価の方法

   そこで日本OSS推進フォーラム サーバー部会が行った今回の検証では、「アプリケーション/ネットワーク/データベースで障害が起きたらどうなるか?」など13項目について、WASCluster(注1)という評価方法でJBossとTomcatのクラスタ機能を評価した内容について、詳しく話が述べられた。

※注: Web Application Server Cluster Test:Servletを利用したWebアプリケーションクラスタシステムにおける障害時の動作検証を行うテスト。
テストツール(WASClust/Live Checker・WASClust/DB Checker・負荷シナリオ JMeter Script)

テスト方法の構成
テスト方法の構成
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   テストを行った環境はJBoss・Tomcatともに次の通りであり、JBoss(4.0.2/3台構成)は2005年8月に、Tomcat(Tomcat 5.5.15/3台構成)は2006年2月に実施したそうだ。

ハードウェア IBM BladeCenter HS20
OS Miracle Linux 3.0
Webサーバ Apache 2.0.54(mod_jk:1.2.13)
DBサーバ PostgreSQL 8.0.3

テスト実施環境

   このテストの結果をもとに「評価の結果、適正な設定をすればJBoss・Tomcatともに問題なく動作します」と、鈴木氏は今回の結果を述べた。その設定とは、次の通りだという。

ネットワークの障害と復帰に対して、mod_jkのワーカ属性を設定する
socket_timeout:3(sec) //デフォルト0(∞)
prepost_timeout:500(msec) //デフォルト0(∞)
reply_timeout:10000(msec) //デフォルト0(∞)
アプリケーション処理中の障害に対して、mod_jkのワーカ属性を設定する
recovery_options:3 //デフォルト0

DBサーバ障害(JBoss/Tomcat)に対して、アプリケーションにコネクションを渡す前にselect分を発行し、設定の確認を行う
JBoss:<check-vaild-connection-sql>
select * from oss_stuff:<check vaild connection-sql>
Tomcat:<Resource
vailidationQuery="select" * from oss_stuff"/>
select * from oss_stuff:<check vaild connection-sql<

問題なく動作させるための適正な動作

   なおこの評価の内容は、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が運営しているOSS iPedia(http://ossipedia.ipa.go.jp/)で公開されている。

評価結果
評価結果


今後の課題

   最後に鈴木氏は信頼性確認の方法についての今後の課題を3点をあげた。

  • 手作業/目視による確認が必要
  • 障害をユーザオペレーションで発生させるため、細かい障害発生タイミングを意識したテストができない
  • EJBへの対応

今後の課題

   今回のテストはhttp_session情報のレプリケーションが中心のものであり、EJBについては未対応である。しかしEJBについて対応するのであれば、より汎用的な評価となるであろう。また、その他2つの課題を解決することができれば、より実際の障害に即した評価となると思われる。

   オープンソースソフトウェアを利用する場合、十分なスキルを有しているエンジニアの不足からサポートの面で不安がある。しかし、こういった信頼性評価を公にすることによって、ユーザが担当する部分やSIerがサポートできる部分が明確になれば、今後のオープンソースソフトウェアの利用が活発になっていくことがこの講演によって語られたといえるだろう。

(ThinkIT編集局:石黒 大介)

記事一覧
Linux World/EXPO 2006レポート
1日目 基調講演:日本経済の活性化に向けて 〜ITイノベーションへの挑戦〜
2日目 現在Linuxは戦争中
3日目 オープンソースソフトウェアの信頼性評価

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