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見える化とは何か〜改めて問うその真価
第3回:プロジェクト進捗状況を「見える化」する
著者:
チェンジビジョン 山崎 知恵
2006/12/18
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にこにこカレンダー
にこにこカレンダーは、チームメンバーの気持ちを見える化するツールである。カレンダーにメンバーの名前を付け、毎日仕事を終えて帰る際にその日の気分を「色」と「一言」で表現する。よく使われているのは「黄=Good」「赤=Normal」「青=Bad」で、シールに顔を描いてカレンダーに貼るだけである(にこにこカレンダーの詳細は、解説サイトがあるのでそちらを参照されたい)。
図3:TRICHORDチームのにこにこカレンダー
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
ニコニコカレンダー
http://www.geocities.jp/nikonikocalendar/index_ja.html
色付きのにこにこマークがずらっと並んでいるカレンダーは、少し離れた位置から見ても、色の分布からその時期のチームの状況を感じ取ることができる。間近で1つ1つ見ていけば、ちょっとした顔の表情で、同じ黄でも違いがあることがわかる。
にこにこカレンダーは、日々の作業報告書や進捗メールなどではあらわされないチームメンバー個人の気分をにこにこマークを通じて表現する。リーダーや管理者が聞きだして得られる情報ではなく、開発者自身が気軽にその日の気分を表現できる点がポイントである。チーム内でも互いを知ることができる上、管理者はタスクかんばんにもバーンダウンチャートにも決してあらわれない、チームメンバー1人1人の気分をにこにこカレンダーから見ることができる。
各メンバーの気分を完全に把握することはできないが、周囲が気づいて苦しい状況を軽減することはできる。メンバーが記録するその日の気分を集めると、チーム全体のムードができあがる。チームメンバーが今どんな状況かを見える化することは、プロジェクトを人間の視点からとらえる1つの方法である。
ただし、にこにこカレンダーだけをチーム全体の状況判断の材料にすることは危険である。その時期にどういったイベントやトラブルが発生しているのか、進捗状況はどうだったのかをあわせて考える必要がある。ソフトウェア開発のプロジェクトには必ず締め切り日(リリース日や納期)が存在し、それが近づくにつれてチームに緊張が高まるのは必然であり、明るいだけではいられないのが現実である。
また、障害が見つかったり、トラブルが発生したりといった割り込みで発生する問題はプレッシャーをもたらす。つまり、良い状態を続けることは非常に難しく、悪い日があったからといって、そのすべてに対応することが必要かというと、必ずしもそうではない。にこにこカレンダーは、プロジェクトの状況を把握する他のツールと併用することで、悪い状態へ進み続けないように早めに動くきっかけを作るのである。
見える化はプロジェクトを円滑に進めるための手段であり、それ自体は目的ではない。タスクかんばんやバーンダウンチャートを通してチームの今の状況を知り、メンバーやマネージャーの行動へつなげることが目的である。プロジェクトに携わるすべての開発者がより良いソフトウェアを開発できるように、見える化するのである。
ソフトウェアは人が人のために開発しているからこそ、プロジェクトの見える化に取り組む際は、何のために見える化するのかを明らかにし、それを常に確かめながら実践していくことが大切である。
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著者プロフィール
株式会社チェンジビジョン 山崎 知恵
UMLモデリングツール「JUDE」、プロジェクト管理ツール「TRICHORD」のマーケティングを担当。コミュニティサイトの運営や、イベントの企画・開催を通じて、ユーザーと開発者との対話を促す場の創出に努める。
INDEX
第3回:プロジェクト進捗状況を「見える化」する
ソフトウェア開発状況を見渡すために
バーンダウンチャート
にこにこカレンダー