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ブロックチェーンを超えるブロックチェーン? 日本発の新たなブロックチェーン基盤「BBc-1」が目指す世界

2018年3月19日(月)
wasabi
2017年はBitcoinをはじめとする各種暗号通貨の時価総額の変動や世界各国で相次いだICO(Initial Coin Offering)ブーム、毎日のように新たな動きを見せるブロックチェーン技術に大きな注目が集まり、もはやどのニュースに注目したらいいのかわからなくなるほどブロックチェーン関連の話題にたくさんの動きがあった年でした。

今後あらゆる分野が抱えている問題を解決する大きな可能性を秘めているとして注目を集めているブロックチェーンですが、その技術にはさまざまな未解決の課題が残っていることでも知られています。たとえばブロックチェーンは分散型台帳であるため、即時性を要する用途には向きません。ネットワークを通じたデータベースの整合性確認に一定の時間を要するからです。そのほかも秘匿性、スケーラビリティの問題など今後クリアしていくべきさまざまな課題があります。

そんなブロックチェーンが抱えている問題を解決する新たな基盤ソフトウェアが日本から誕生しました。それが「BBc-1 (Beyond Blockchain One)」です。

BBc-1 (Beyond Blockchain One)とは?

BBc-1は、一般社団法人ビヨンドブロックチェーンが開発した基盤ソフトウェア。「ブロックチェーンでできるとされていることを本当に」実現するため、そして現在のブロックチェーンが抱えている課題への解決策を提示するために生まれたソフトウェアです。それでは一体何が優れているのでしょうか? BBc-1が実現する特徴は以下の通りです。

  • 既存のブロックチェーンよりも強固な改ざん耐性
  • ブロックやProof of Work(作業証明)といった、効率を損なう要因を取り払い、即時性、省資源およびスケーラビリティを達成できる設計
  • データの共有範囲を設定し秘匿性を達成できる、「ドメイン」と呼ばれるサブネットワーク
  • Bitcoinの考え方を踏襲した、(同一ドメイン内の) 第三者による検証可能性を担保したデータ構造
  • プライベートな応用でもトランザクションの証明機能を提供
    • 初期にはBitcoinやEthereumといった既存のブロックチェーンと共に動作することにより達成
    • 中長期的には履歴交差の考え方を応用した独自方式により達成
  • ユーザ識別子と公開鍵を分離することにより、秘密鍵が失われた場合の回復手段を提供
  • コア部ではベーシックな機能だけを提供することによる高度な拡張性

出典:プレスリリース(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000029278.html

ブロックチェーンができなかったブロックチェーンの本質を叶える

2016年5月に、暗号通貨Ethereumプラットフォームを通じて当時の価値にして約65億円相当の資金調達をしたThe DAOというプロジェクトが、自社のコードに存在した脆弱性をハッカーに突かれて資金が流出する通称「The DAO事件」が起こりました。この盗まれた資金を取り戻すために、起こったことがEthereumのブロックチェーンを分岐させる、ハードフォークです。Ethereum上でその事件の歴史を消してしまうことで、その事件をなかったことにする動きが起きました。これは非中央集権的な特性を持つブロックチェーンの考え方に反しているとして、大きな論争が起こりました。このように、ブロックチェーンは未だに「ブロックチェーンができるとされていること」を十分に実現できているとは言えない状況です。

一般社団法人ビヨンドブロックチェーン代表理事の斉藤 賢爾氏によれば、BBc-1は内容も存在も否定できない記録、消せないデータを実現できると言います。

一般社団法人ビヨンドブロックチェーン代表理事の斉藤 賢爾氏

「BBc-1と引き合いに出されることの多いブロックチェーン基盤としてHyperledgerが挙げられます。Hyperledgerが"社内報"だとすれば、BBc-1は"新聞"に近い概念です。新聞は誰にでも見えるし、確認ができますよね。BBc-1は記録を誰も否定できない、消せないということを、誰にでも確認できるようになっています。そして、誰にもそれを止めさせません。」

BBc-1がユニークであり革命的である所以は、本当の意味でのオープンネス、非中央集権性という「ブロックチェーンが実現できなかったブロックチェーンの本質」を叶えているところにあるのでしょう。

教育から宇宙まで - BBc-1の実用例が見せる「持続可能な社会」

BBc-1の技術が応用されている興味深い例として、株式会社アイネス総合研究所が行った愛媛県の高校生を対象としたワークショップが挙げられます。このプロジェクトは地域通貨を使って地域活性化を図るものです。実際に高校生がスマホで地域通貨を動かしてブロックチェーンの社会浸透を実感することができる教育プログラムで、今後同様の活動を全国に広げていきたいのだそう。

そしてもう1つ、BBc-1技術の使い道として現在研究されているプロジェクトとして筆者が驚いたのは「宇宙ゴミの回収」です。一体宇宙ゴミとBBc-1の技術がどう繋がるのかまったく想像できなかったのですが、話を聞いて驚きました。

株式会社ゼタント代表取締役の久保 健氏

「ご存じの通り、宇宙には現在たくさんの宇宙ゴミがありますが国際問題として現実的にどの国がどのくらいのゴミを回収するべきなのかを決めることは難しく、回収はビジネスにはなりません。しかしBBc-1技術を応用すればゴミ回収がもたらす経済効果を数値化し、通貨として発行できるようになります。ゴミ回収の報酬をその通貨で支払うことが可能になるため、現在研究が進んでいます。」

BBc-1が持つ無限の可能性にとてもワクワクしますね。私がBBc-1に関して共感を覚える点は、ブロックチェーン技術が持っている社会に影響をあたえられる可能性を既存のブロックチェーン以上に示す、もしくは問い直すことができている点ではないかと思います。

「Apache Web Serverのように、良い意味で存在感を消したい」

そんなBBc-1ですが、今後世界でどんな存在を目指していくのでしょうか? 代表の斉藤氏はこう語ります。

「ゴールとして、ブロックチェーンが本当に叶えるべき持続可能でやわらかな強い社会を作っていきたいと考えています。具体的に言えば、現在のブロックチェーン関連で開発されるサービスには別にブロックチェーンでなくてもできることがたくさんあります。不幸な実証実験が多いのです。それをなくすことが目標です。」

「BBc-1は、言うなればApache Web Serverのような存在になりたいですね。どういうことかといえば、そこまで意識されなくても選ばれるという段階を目指しています。ウェブサイトやブログを作成するとき、「WordPressを使っているよ」と言う人はいても、「その裏側でApacheを使っているよ」なんて言う人はめったにいないですよね。それはそのくらいApacheが当たり前のように使われているからです。BBc-1も、良い意味で存在感を消したいですね。」

現在、ビヨンドブロックチェーンは組織を支えていくために会員企業を国内外で増やしていくなど精力的に活動を進めているのだそう。BBc-1は2017年10月末にオープンソースとして公開されたため、今後いかに開発コミュニティを広げていけるかも発展のポイントとなりそうです。

ビヨンドブロックチェーンではコアハッキングハッカソンなども開催中とのこと。この機会にBBc-1に興味を持たれた開発者の方はぜひ次回の情報をチェックしてみてはいかがでしょうか?

一般社団法人ビヨンドブロックチェーン】

ドイツベルリン在住のブロガー/ディレクター。自身のブログ「WSBI」ではディスラプティブテクノロジーを利用したこれからの新しい生き方を紹介し、支持を受ける。2016年には「TEDxYouth @Kobe」に登壇し、新卒で海外に渡ってフリーランサーとなった経験をシェア。ブロックチェーンについての理解を深めるために、ブロックチェーンの英語最新情報を日本語に要約するサイト「Blockchain Alert(http://blockchainalert.net/)」に編集として携わり、記事翻訳から編集までを務める。
ブログ「WSBI」:http://wsbi.net/

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