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ネットワーク通信で押さえておきたい基礎知識(後)

2015年4月24日(金)
榊 正憲(さかき まさのり)

MACアドレス

ネットワーク機器に割り振られるアドレスを示す用語として、MACアドレスや物理アドレスという言葉がしばしば使われます。

MACはメディアアクセス制御(Media Access Control)という意味で、MACアドレスは共有ケーブルや電波が伝わる空間へのアクセスを制御するためのアドレスという意味です。実際に物理メディアにアクセスする際に使われるという意味で、物理アドレスと呼ばれることもあります。

有線のイーサネットや無線LANでは、48ビットの数値で識別されるMACアドレスが使われています。

パケット交換ネットワーク

日頃使っているアナログ電話のネットワークを考えてください。電話をかける時は、まず相手の番号をダイヤルします。するとそのダイヤル指示が交換機に送られ、交換機は目的の相手の電話回線に接続し、呼び出しを行います。そして相手側が電話を取れば、こちらと相手の2台の電話機が接続され、会話や通信を行うことができます。

電話がつながっている間、この2台の電話機につながっている2本の電話回線は、この通話のために独占的に使われています。その間、この回線はほかの通信には使用できません。わかりやすく言うと、ある相手と電話している間は、同じ回線を使って別の相手に電話をかけたり、あるいはほかの人からの着信に出られないということです。別の相手に電話したり、誰かからの着信を受けるためには、現在接続している相手との接続を切る必要があるのです。

このようなネットワークの形態を、回線交換ネットワークといいます。ネットワーク上の通信を行う2台の機器の間に、独占的かつ排他的な通信路を確保するという形です(図1)。

回線交換ネットワーク

図1:回線交換ネットワーク

コンピュータなどの情報機器のネットワークの場合、このような接続方法は不便です。もしネットワークが回線交換方式だと、例えばパソコンの画面であるWebサイトを閲覧している間は、ほかのサイトを見ることも、メールを受信することもできません。また、Webなどのサービスを提供しているサーバーは、あるクライアントPCにサービスを提供している間、ほかのパソコンにサービスを提供することができません。

一般にネットワークに使われている通信システムは、常時その能力いっぱいで使われている訳ではありません。例えば100MbpsのネットワークでWebサイトを見ている場合、実際にその回線が利用されている率はごくわずかです。1、2分に1回、数百Kバイトないし数Mバイトのデータをやり取りする程度でしょう。その間、相手との接続をずっと維持しておく必要はありません。必要な時に必要な量のデータのやり取りだけを行うようにすれば、並行してほかのサイトに接続したり、メールなどのやり取りを行えるようになります。

回線交換の場合は、接続先の指定は最初の接続時に行い、以後ずっと接続を維持します。このような固定的な接続をやめて個々のデータに宛先と送信元を指定し、ネットワークがこの宛先を見て目的の相手にデータを伝送してくれれば、回線を独占することなく随時多数の相手とデータの送受を行うことが可能になります。もちろん、それぞれのデータごとに宛先を指定するというコストが発生しますが、コンピュータなどの情報機器の場合、そのコストを考えても、どちらのやり方が好ましいかは明らかでしょう。

このように個々のデータブロックごとに宛先などの情報を付加し、ネットワーク上で情報をやり取りする方法をパケット交換といいます。パケット(Packet)という言葉は、今ではほとんどネットワーク用語として通用していますが、もともとは「小包」という意味です。郵便局や運送業者によって運ばれる小口の荷物は、1つ1つに宛先と送り元が記載された送り状が付けられています。荷物は物流ネットワークの中で、この送り状に示された宛先情報に基づいて中継、配送され、それぞれ異なる宛先、あるいは同じ宛先に届けられます。

情報ネットワーク上でのデータのやり取りも同じことです。送受するデータのブロックに、送り状に相当する宛先/送信元情報が付加されたパケットの形で、ネットワーク上で情報をやり取りします。多数の機器が接続されたネットワークで、伝送に必要な情報を付加したデータブロックを送受するというやり方を、回線交換に対してパケット交換といいます(図2)。

パケット交換

図2:パケット交換

今日のローカルエリアネットワークは、基本的にパケット交換ネットワークです。

巨大なデータブロックを送ると、せっかくのパケット交換なのに通信路が独占されてしまいます。そのためパケットのサイズには上限があります。データブロックのサイズを制限することでパケットの切れ目が生じ、ほかのパケットを伝送する機会が得られるのです。このサイズは、それぞれのネットワーク方式において仕様として定められています。例えばイーサネットでは、最小のデータサイズは46バイト、最大データサイズは1500バイトです。

最大データサイズのことを、MTU(Maximum Transmission Unit、最大伝送単位)と言います。

1つのパケットで送れないような大きなデータを送りたい場合は、パケットに収まるようにデータを小さく分割し、それぞれのパケットに宛先情報を付加して送り出します。各パケットは大きなデータの一部ですが、ネットワーク上ではそれぞれが個別に伝送され、最終的に目的の宛先に届きます(図3)。

大きいデータを分割して送信

図3:大きいデータを分割して送信

通信速度と伝搬遅延

ネットワークの能力を考える時、だれもが思い浮かべるのが通信速度です。例えば100Mbpsのネットワークといえば、毎秒100Mビット(1億ビット)のデータを送れるという意味です(bpsはBits Per Secondの略です)。この数値が大きいほど、大量のデータを短時間で送ることができます。

現在広く使われている有線イーサネットは、初期の規格は10Mbpsでした。現在は100Mbpsと1000Mbps(1Gbps)が一般的で、データセンターなどではさらに高速な10Gbpsのものが使われています。

無線LANは初期のものが数メガbps、新しい規格ではギガの帯域になります。無線LANの場合、電波は環境の影響を受けやすいので、規格上の上限速度が実際に達成できるとは限りません。無線LANは接続が維持されることを最優先にしているので、環境が悪化すると速度を下げ、通信を維持するようになっています。携帯電話のネットワークも同様で、理論上は100Mbps以上の通信が可能ですが、電波環境やユーザーの数、ネットワークの混雑などで速度は大幅に低下します。

通信会社が提供するワイドエリアネットワークにはさまざまなサービスがあり、通信速度や品質なども変わってきます。サービスの種別により、いかなる状況でも正規の通信速度が保証されている回線もありますし、混雑の影響を受けるサービスもあります。

ネットワークの性能を考える時、通信速度とともにもう1つ重要なことがあります。それはデータを伝送する際の遅延時間です。ある場所でデータ送信を行い、それが接続先で受信されるまでにどれだけの時間がかかるかということです。もちろん、この時間は短いに越したことはありません。伝送遅延時間は、伝送の経路や中継の仕組みなどに大きく左右されます。例えば中継が行われる場合、そこで多少の遅延が発生します。アナログ通信と異なりデジタルデータ伝送では、データが一時的にメモリに格納されることがあるためです。また国際通信などでは、通信路の長さの影響も受けます。有線の場合は海底ケーブルで1万キロあまりも中継されることがありますし、衛星回線だと数万キロの距離を電波が伝わることになり、人間にもはっきりとわかるほどの遅延が発生します。

伝搬遅延が大きいと、データを送信してからその確認の応答が返ってくるまでの時間が長くなります。そのため、回線の通信速度が高速であっても、確認に時間が取られ、データ伝送の速度が低下することもあります。

この記事のもとになった書籍
完全マスターしたい人のためのイーサネット&TCP/IP入門

榊 正憲 著
価格:2,000円+税
発売日:2013年12月19日発売
ISBN:978-4-8443-3511-5
発行:インプレスジャパン

完全マスターしたい人のためのイーサネット&TCP/IP入門

世の中で広く知られているイーサネットとTCP/IP、つまりインターネットや社内LANなどで、標準的に使われているネットワーク方式とプロトコルについて詳しく解説。 各項目については初歩的なレベルから解説し、中級レベルまで掘り下げています。 その過程で、仕組みや原理についてなるべく詳しく、そしてなぜそのような仕組みになっているのか、といったことを説明しています。 「これはこうなっている」という知識だけではなく、「これは何をするために、どのような原理でそうなっているのか」まで、きちんと体系立てて理解できる、ネットワーク初心者必携の1冊です。

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著者
榊 正憲(さかき まさのり)

電気通信大学卒業。プログラミング、システム管理などの仕事のあと、フリーランスで原稿翻訳、執筆などを行う。現在は、有限会社榊 製作所 代表取締役。著書に『復活!TK-80』『コンピュータの仕組み ハードウェア編(上・下)』、翻訳書に『Inside Visual C++ Version 5』(いずれも旧アスキー発行)、『Pthreadsプログラミング』(オライリー・ジャパン)などがある。

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