操作ログを活用した業務改善
操作ログについて注意点と活用法
こんにちは、「ハミングヘッズ」です。連載も3回目を迎えて、話は折り返し地点を過ぎました。今回は、操作ログを活用した業務改善について見ていきたいと思います。
会社のルールを制定し、それを守らせる「内部統制」の客観的な事実証明として、あらゆる経路/あらゆる操作を対象とした(以下、「網羅的」と表現)操作ログを取ることが有効であることは前回お話しました。
今やほとんどの業務においてPCが利用されています。そのため「網羅的な」操作ログを取ることが業務把握にとって有効な手段となりますが、「網羅性」について正しく理解していない方が多いのも現状です。
正確には網羅性を欠いている場合、すなわち記録に残らない操作がある場合は、そのシステムを利用して構築された内部統制にも抜け道があるということです。これでは業務把握に有効とは言えません。
ほかにも、「網羅的」な操作ログは大幅な業務改善の効果を期待できます。ログによって業務の内容を把握できるため、結果として無駄な投資や効率的な資源の使い方が可視化されるからです。
重要なポイントは、操作ログを取得する意義は、従業員の行動監視ではなく、会社の業務監視だということです。ある業務が行われているかどうかを継続的に監視することが、内部統制における業務把握を容易にします。
操作ログは正しい業務をしている従業員の冤罪(えんざい)を晴らしたり、行為の正当性を主張する目的に利用できます。正当な業務をしている従業員にとっては、操作ログは「守ってもらうもの」と考えることができます。
このような考え方を念頭に置き、まずは操作ログによって業務が実際に効率化された具体例を挙げつつ、その後、内部統制が有効に機能していることを継続的に評価するプロセスである「モニタリング」の負担を軽減する方法、操作ログをさらに有効利用するための方法などを解説していきます。
ログ取得と業務改善
行動履歴をログとして残すことで業務を劇的に改善した、ある大学病院の例を紹介します。
医療界は近年、人手不足が続いており、そのマンパワー不足もあってか医療事故/医療訴訟が新聞をにぎわしています。人手不足や財政難から閉院する病院があるというニュースも耳に挟みます。こうした中、その大学病院では医薬品の購入から投薬までの流れをバーコードで読み込んでデータベースに記録し、履歴として残す取り組みが行われ、その結果としてコストと医療事故の大幅削減に成功しました。
前提として、投薬が抱える問題があります。医薬品はさまざまな薬品を混ぜ合わせて服用しますが、混ぜ合わせた後では返品が利きません。また患者の容体は刻一刻と変化するため、投薬の内容が毎日同じとは限りません。混ぜ合わせた後に投薬変更(および中止)となった場合、薬品を破棄することになります。
先ほど紹介した大学病院では、医者の診察結果が常にデータベースに反映される仕組みになっています。一方、患者に対する投薬時や薬品の調合時には、その前に薬品や患者のIDをバーコードで読み取り、自動的にデータベースへ問い合わせることになっています。このため、投薬中止や調合中止の指示があれば、投薬や調合の実行前に分かります。
この大学病院では指示変更が投薬全体の4割にも及ぶそうですが、システム導入後に投薬ミスは発生していません。さらに調合中止された薬品は返品できるため、その経費を浮かせることもできました。こうして医薬品の購入費12億円のうち1億円を削減しました。毎年これだけの費用が浮くことが分かれば、高額なシステムを導入しても「効果が見込める」と判断できます。
また、単純に費用が浮くだけではありません。記録を取っておくことで、トラブルが発生した時に、過去にさかのぼって診断の正誤を確認できます。さらにログ分析から、無駄やミスが発生しやすい個所が判明し、ミスの少ない医療へつなげることもできます。操作ログから業務改善がなされた典型的な例です。
次のページからは操作ログ取得によるさまざまな利点を紹介していきます。