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エンタープライズ・モバイル

2010年4月30日(金)
永井 一美

ビジネス・モバイル事例(背景)

今から紹介するユーザー事例は、カーナビ、業務用モバイル端末、リッチ・クライアント、帳票を利用したもので、事例としてはほかに類を見ない先駆的なものだと思います。

伊藤忠エネクス(創業1961年)は、伊藤忠グループの一員として、ガソリン・灯油・軽油・重油・LPガス(石油製品)などを取り扱っている企業です。

同社の「ホームライフ事業」では、家庭向けLPガスを取り扱っています。取扱い総量は年間100万トン、一般家庭用への供給は約130万世帯です。 ご存知のように、LPガスは各家庭にタンクが置かれており、この保安点検作業は法規制のある、大変重要な仕事です。

従来は、保安員が車で移動し、点検中または点検後に「点検調査票」に手書きで結果を記入し、顧客に票の控えを渡して、正本を会社に持ち帰っていました。 そして、それを元にシステムに入力していました。

このオペレーションでは、手書きによる書き損じや2重入力による手間、さらに手書き文字の読み違いを含め、システムへの入力ミスが発生していました。 また、この作業は属人的であり、個々の保安員ごとに点検・調査内容に格差が発生していました。 こうした課題が原因で、点検調査票の品質確保に膨大な工数がかかっていたのです。

ビジネス・モバイル事例(改善効果)

LPガスの保安点検業務を改善するにあたり、以下の3つの要件がありました。

 ・業務、点検、調査内容の平準化
 ・チェック体制の簡素化
 ・入力業務の排除

これを踏まえたシステム要件は、以下のものになりました。

 ・保安点検データのシステム入力を現場で行う
 ・保安点検調査票を現場で出力する
 ・モバイル環境でも高速レスポンスを維持する
 ・モバイル端末、モバイル・プリンタともに小型で軽量
 ・点検は野外で行われるため、堅牢(けんろう)性が必要(防水、落下耐性)
 ・オフラインでも業務遂行が可能
 ・バッテリでの駆動時間を長く(業務継続性)
 ・モバイル端末はPND(カーナビ)端末と併用
 ・点検データの誤入力を排除する
 ・ITリテラシの低い保安員であっても大丈夫な簡単操作に
 ・「ガス保安点検管理システム」と連携する

これらを実現するために使用した機器とソフトウエアは以下の通りです。

・業務端末(PND搭載)
 PRO MAPLUS(株式会社エディア製)

・モバイル・プリンタ
 PocketJet(PJ-560)(ブラザー工業株式会社製)

・端末ソフトウエア
 Windows CE 6.0〔OS〕
 Biz/Browser Mobile〔モバイル用リッチ・クライアント〕
 PrintStream for Mobile〔モバイル用帳票ツール〕

要件から見えてくる需要として、「簡単な操作で誤入力を排除するUIが必要であること」、「レスポンスが高速で、オフラインでも業務が可能なこと」、 「LPガスの設置場所によっては、せまい空間で入力業務を行わなければならないこと」などがあります。これらの需要を満たすために、リッチ・クライアントは必須でした。

UIの大枠のポイントは、以下のようなものです。

 ・選択式のコントロールを用いる(PulldownList、OptionButton)
 ・固定的なマスター・データは保持
 ・タブ画面(別画面をメモリー上に持つ)
 ・入力エラー、必須項目の入力漏れに対する分かりやすいフィードバック

こういったポイントを実現するためにも、開発コストを抑えるためにも、モバイルに特化したビジネス用途のリッチ・クライアント製品が必要です。 モバイル端末のリソースは、デスクトップPCに換算するとWindows 98のころのものしかありません。 最新のWindows VistaやWindows 7クラスのリソースを要求するツールではモバイル端末用のアプリケーション開発はできません。

帳票印刷においては、プリンタ環境の選定が重要でした。小型軽量でコストが安く、なおかつA4版の複写紙に極めて鮮明な印刷をする必要がありました。 また、Windows CE純正の印刷機能はプアなので、どうしても外部のツールを必要とします。そこで、プリンタにはPocketJet(PJ-560)を選び、 PrintStream MobileとPJ-560用のドライバを用いて印刷機能を実現しました。 今までの手書きの紙ではなく、きれいな印刷による調査票を渡せるようになったことで、LPガスの顧客の満足度も高まりました。

これまで、5回にわたって画面と帳票について解説してきました。技術者の方々にとっても、ビジネスを考える方々にとっても、 それぞれ至らない点があったと思っています。お付き合いをいただき、感謝いたします。

アクシスソフト株式会社 代表取締役社長
SI会社においてOS開発、アプリケーション開発、品質保証、SI事業の管理者を経て、ソフトウェア製品の可能性追求のため、当時のアクシスソフトウェアに入社、以降、一貫して製品事業に携わる。2006年より現職。イノベータであり続けたいことが信条、国産に拘りを持ち、MIJS(Made In Japan Software consortium)にも参加、理事として国産ソフト発展に尽力している。

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