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日本の帳票文化とツール

2010年4月9日(金)
永井 一美

そもそも、帳票とは

前回は、画面設計のあり方として、リッチ・クライアントの動向を解説しました。一方、画面UIと並ぶ、もう1つの課題が、帳票/印刷です。今回は、帳票/印刷機能を支援する帳票ツールについて解説します。

そもそも帳票とは何か。これを語ると、会計の話になります。「帳」は帳簿、「票」は伝票のことです(図1)。いずれも、商売のために必要なものです。

帳簿は、仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳などを指しており、取引を記録します、一方、伝票は、票(紙片、用紙)に、金の流れや取引の流れなどを証拠として記載するとともに、伝(受け継いで残す)えるものです。伝票には、入金伝票や売上伝票などがあります。

つまり「帳票」とは、“記録と証拠”と言ってよいでしょう。

何かを記録する行為は、はるか昔より行われていました。江戸時代にも帳簿は存在しています。明治以降に制度会計として商法や税法などで一部の帳簿が義務付けられる前からです。

商人は、帳簿の重要性をおのずと理解していました。現金取引ではない信用取引においては、債権、債務を把握しなければ資金計画が立てられません。記録は、制度で強制されなくとも必要なことでした。

日本の帳票文化と電子化

初期のコンピュータの役割は、事務の効率化でした。まだ「電子計算機」と呼ばれているころで、PCS(パンチ・カード・システム)が花盛りとなり、算盤(ソロバン)で行っていた給与計算などが機械化されていきました。計算を引き受ける会社として、当時の会社名に「計算センター」が多いのは、この象徴です。

これに対して、帳票は、コンピュータの発明以前から存在します。機械化/コンピュータ化する以前から、確固とした帳票文化が存在していたのです。

日本も、機械化/コンピュータ化の段階でそれまでの帳票文化をいったんリセットし、思い切ってコンピュータに合わせていれば、その後が楽になったはずです。しかし、日本人は、かつて手書き時代に行っていたことを、同じようにコンピュータにおいてもやりたいと“意固地に”考えたのです。

こういったことは、自社の業務を市販のERP(統合業務パッケージ・ソフト)に合わせる海外と、“パッケージという定食”では妥協せずに自社向けのカスタマイズを積極的に作り込む日本の違いにも現れています。

日本の帳票は複雑

日本では帳票の複雑さも見逃せないポイントです。きめ細かく、罫線や矩形(長方形)を多用し、罫線の幅も一律ではなく、角を丸める角丸めもあります。数字は桁(けた)区切り線が必要で、3桁ずつの区切り線はほかと太さを違えるなど、「そこまで必要か」と思うほどのスペックで、一切妥協していません。

“文化の差”と言ってしまえばそれまでですが、日本の帳票と欧米の帳票に見られる差は、手書き文化とタイプライター文化の差と考えられています。表現される文字数の差が根底にありますが、タイプライターの浸透の差が帳票文化に影響したものと見られています。一般の日本人がタイプライターではなくキーボードに慣れ親しんだのは、PCの普及以降です。

タイプライターの歴史をひもとけば、18世紀中ごろ(1750年ごろ)にはすでに「文字を機械で打つ」ことが考えられていました。それが具体化され始めたのは19世紀中ごろ(1850年ごろ)のこと。この時代がどういう時代かと言うと、ちょうど日本にペリーが来航したのが1853年のことです。

歴史と文化は、帳票のサイズにも影響を与えています。日本にはレター・サイズで帳票を打つ習慣はありませんが、欧米ではレター・サイズが一般的です。さらに、日本にはB4サイズやB5サイズも存在します。

日本の帳票の歴史

では、日本独特の帳票を機械化するにあたり、具体的にどういった経緯があったのでしょうか。

帳票の機械化/コンピュータ化が始まった当初は、(ページ単位で印刷する)ページ・プリンタは、存在していません。タイプライター同様に、行単位に文字を左から右へ打って(印字して)いく方式です。帳票設計は今のようなフォーム・ベースではなく、行のどこに何を印字するかという、行印字の積み重ねです。

画面についても当てはまりますが、当時のシステム開発は1画面いくら、1帳票いくらといった見積もりが当たり前で、発注側も請負側も、この見積もりで合意できていました。複雑な画面も複雑な帳票もなかったので、これで十分でした。

このころ筆者は、保険関係のシステム開発を担当していましたが、ミシン線で切り取れる連続した基本契約書(プレプリント用紙)をライン・プリンタにセットし、内容だけを印刷、物理的にオーバレイしていました。プレプリント用紙での運用が多いのは、手書きの併用や複写を必要とする書類が多いことも理由でしょう。

その後、ページ・プリンタが登場しました。これにより、フォームはフォームとして用紙設計を行い、データとマージする方法が主流となります。そうなると、紙で実運用していた帳票をそのまま電子化したいという要求が起こり、それを実現するために帳票専用のツールが現れだしました。

筆者が所属するアクシスソフトでは、リッチ・クライアント・ツール「Biz/Browser」に加えて、帳票ツール「PrintStream Core SE」(初期版出荷当時の名称は「Biz/PrintServer」)を開発/販売しています。Webシステムを快適にするために、画面と帳票のどちらも必要だったからです。

リッチ・クライアントとは異なり、帳票ツールは歴史も古く、多くのベンダーがツール市場に参入しています。次ページからは、帳票ツールが備えるべき機能について解説します。

アクシスソフト株式会社 代表取締役社長
SI会社においてOS開発、アプリケーション開発、品質保証、SI事業の管理者を経て、ソフトウェア製品の可能性追求のため、当時のアクシスソフトウェアに入社、以降、一貫して製品事業に携わる。2006年より現職。イノベータであり続けたいことが信条、国産に拘りを持ち、MIJS(Made In Japan Software consortium)にも参加、理事として国産ソフト発展に尽力している。

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