ユーザーに使ってもらってチェック!
ある転職支援サービスのユーザビリティ調査
ユーザビリティ調査について、大まかに理解していただけたのではなかと思います。しかし、重要なことは調査の結果どのようにWebサイトが改善されるのかです。そこでユーザビリティ調査の実例を紹介します。
この調査例では、ユーザーシナリオ上のどこがボトルネックになっているのかを、事前のアクセス解析による仮説を基にして検証しました。仮説を持って検証することが成果につながる、ということを少しでも感じていただければと思います。
ある転職支援サービスサイトにおいて、登録フォームでの離脱率が問題となりました。そこで担当ディレクターのAさんは登録フォームの改善を行いました。記入必須項目を減らし、エラー表示をわかりやすく、また半角・全角を自動で変換し誤入力を減らしました。これで登録フォームでの離脱はかなり減るはずです。
しかし離脱率はあまり改善しませんでした。そこでAさんは、アクセス解析で「登録フォームまでの経路」を調べました。調査の結果「TOPページから登録フォームへ遷移し離脱する」という経路が多いことがわかりました。
この経路をたどるユーザーには2つのパターンがあると考えられます。
1.リピートユーザーが再訪問して登録する
2.新規ユーザーがTOPページを見て登録する
再訪問してくるリピートユーザーが登録フォームで大量に離脱するとは考えにくいです。では、消去法で新規ユーザーがTOPページから登録フォームへ遷移し離脱している傾向が強いということになります。何が問題なのでしょう。ここでAさんは「そもそも新規ユーザーがTOPページだけを見て転職支援サービスにいきなり登録するとは考えにくい。新規ユーザーがサービス内容をよく理解しない状態で登録フォームへ遷移しているのではないか?」という仮説が浮かびました。
この仮説を検証するため、Aさんはユーザビリティ調査を実施しました。タスクは「ある条件の仕事を検索し、登録してもらう」というものです。そして事前の仮説から「TOPページを見て何のWebサイトだと思ったか教えてください」と言う質問を被験者に対して行いました。
調査の結果、被験者のほとんどがこのWebサイトのTOPページを見て「転職情報サイト」と回答しました。転職支援サービス(転職先を紹介するサービス)ではなく「求人情報が掲載されている転職情報」のWebサイトだと認識されていたのです。その結果、流入した新規ユーザーは会員登録フォームへ遷移し、途中で転職支援サービスであることに気づき離脱、という導線ができていたのです。
AさんにとってはこのWebサイトが転職支援サービスであることなど分かりきったことです。しかし、ユーザーにこれがどのようなサービスのWebサイトなのかをTOPページできちんと伝えることができていませんでした。そして、この調査結果を基にAさんはWebサイトのトップページを大幅にリニューアルしました。
ボトルネックはアクセス解析だけではわからない
この調査のポイントは、アクセス解析からユーザーシナリオ上の問題を仮説立て、検証を行ったことです。
数字上のボトルネックはアクセス解析で見ることができます。しかし、ユーザーシナリオ上のボトルネックは必ずしも数字に表れるとは限りません。現に、今回の例では登録フォームでの離脱要因は「フォームの使いにくさ」ではなく「TOPページでのサービス訴求不足」だったのです。このような問題は仮説を基にユーザーに使ってもらうことで初めて洗い出されます。ユーザビリティ調査は、このような形で実際のユーザーが目的を達成するまでの導線(=ユーザーシナリオ)上のボトルネックを検証できるのです。
次回は、ユーザビリティ調査結果の指標化について説明します。