論理力とは何か?
プロジェクト管理は職人技?
「プロジェクト管理は経験に裏打ちされた職人技の側面がある」。システム開発プロジェクトの現場でよく言われることです。プロジェクト管理は、理詰めで厳密に考えることより、過去の成功体験や直感に頼る場合が多いということですが、こうした考えがはびこるには2つの理由があると考えられます。
1つ目はプロジェクト管理の現状です。世の中には、プロジェクト管理に関する知識体系が存在し、PMP(Project Management Professional)などの資格も存在します。しかし、プロジェクト管理の知識や資格が現場で常に通用するとは限りません。それは、必ずしも合理的でない「人」という存在を含めた検討や、不確実であいまいな情報に基づく意志決定を求められるからです。実際、プロジェクト管理は理詰めで考えることができる部分とそうでない部分があり、どちらも考慮していかないと管理できないということは事実です。
2つ目は、プロジェクトマネージャになる人のキャリアです。システム開発のプロジェクトマネージャは、通常プログラマやSEの長い経験があり、その分野で成果を上げてきた人がなることが多いと思われます。
このような人は、それまでプログラムやシステムを完成させる作業において論理的に検討し合理的な解決を図ってきたと思われます。ところが、彼らがプロジェクトマネージャになり直面する問題は、先ほど述べたように決して論理的で合理的な手段だけで解決できるものではありません。そのため、今までのやり方が通用しにくいことから過度に論理的な考え方を否定することがあります。
やはり、「プロジェクト管理は職人技」なのでしょうか?
プロジェクト管理に求められる「論理力」
当然ながら、プロジェクト管理においても厳密に理詰めで考える必要があります。ただ、何について考えれば効果的なのか、どのような知識や技法を用いて考えればよいのかがプログラミングやシステム開発と比べてわかりにくいだけです。
プロジェクト管理はさまざまな活動を含んでおり、有効な考え方もさまざまです。有効な考え方を知り、プロジェクト管理に実際に適応し、考え方の有効性や限界を経験的につかむことにより、徐々に論理的なプロジェクト管理ができるようになるわけです。ここでプロジェクトマネージャに必要となるものが「論理力」です。
では、「論理力」とは何でしょうか?
「論理力」と表現しましたが、合意された言葉ではないようです。筆者は「論理力」を「事実を丹念に積み上げること」「積み上げた事実を元に理詰めで考えること」そして「考えた結果を基に一貫した行動を取ること」であるととらえています。
このように書くと「論理力」はコンサルティングを職とする人が得意とする特殊な才能であると思いがちです。しかし、「論理力」は鍛えることができます。才能ではなく、さまざまな定石とも言える技法を学んでそれを利用していくことにより自らに蓄積されていくものなのです。
さらに「論理力」は問題解決や意志決定の精度を高めるために広く使うことができますので、プロジェクト管理だけでなくさまざまな業務においても役に立つ「力」です。システム開発においてはもちろんのこと、顧客への説明、社内会議での企画の承認、教育プログラムの開発などでその力を発揮することができます。
そこで、本連載ではプロジェクト管理で使える「論理力」を紹介します。プロジェクト管理における「どのような問題」に「どのような考え方」が使えるのかを紹介していきます。