高いシェアでOfficeや他社製品との連携に強み
製造業、建設業、情報システム、政府機関など、世界中の数多くの組織で使われているプロジェクト管理ソフトが、米Microsoftが開発し日本マイクロソフトが販売する「Microsoft Project」である。進ちょく状況の定量管理を主軸としており、PM(プロジェクト・マネージャ)1人での管理から全社規模での管理まで、規模に応じた数種のエディションを用意している。
最初のバージョンの発売は1984年と、米Microsoftではワープロ・ソフトの「Microsoft Word」の次に古い製品であり、現行バージョンの「Microsoft Project 2010」にいたるまで、数多くの拡張を施してきた。現在では、PM個人でプロジェクトを管理するための「デスクトップ」に加え、メンバーからの入力による報告も可能な中規模チームのための「ワークグループ」、企業戦略に基づく意思決定も支援する全社規模の「エンタープライズ」といった、組織の規模に応じたエディションを用意している(チーム開発などのコラボレーションには「SharePoint」の機能を利用する)。
プロジェクト管理ソフトの分野には競合製品も多いが、これらとの差別化ポイントは「デファクト・スタンダードであること」(日本マイクロソフト、インフォメーションワーカービジネス本部の相場宏二氏)。同社のソフトだけでなく、米Oracleや米Hewlett-Packardをはじめとする他ベンダーのソフトと連携できるようになっている。「価格も安い。さらに、今後リリース予定のクラウド版は月額課金で利用できる」(相場氏)。
日本マイクロソフトによると、2000万人以上のユーザーが利用しており、グローバル市場でのシェアは8割(出荷数ベース)に達する。ソフトの中で多言語や多通貨も扱えるため、最近では、海外への拠点分散やオフショア開発などを行う日本企業が、これまで使っていたツールから乗り換えるケースもある。
これまで、進ちょく管理といえば、Microsoft Excelを使うケースが多く見られた。実際、Microsoft ProjectのUI(ユーザー・インタフェース)は、Excelに似ている。しかし、Excelでは正確な計画を作ることが難しく、リソースの負荷を計算してシミュレーションすることができない。「Microsoft ProjectはExcelのお化けみたいなもの」(相場氏)であり、裏では、表示されない行が計算式で結ばれている。うまく使うためには、この構造を理解する必要がある。使い方については、さまざまなベンダーがトレーニング・プログラムや講座を展開している。
プロジェクトの規模が大きくなると、関係するメンバーからの正確な報告が、重要なカギとなる。サーバー版の場合、報告はブラウザから入力するだけと簡単だが、だからといってメンバー全員が入力してくれるわけではない。「ほとんどの導入企業では、入力をうながすために、何らかの制度を設けている」(相場氏)。外資系の場合は、日々の業務とそれにかかった時間などを細かく報告する傾向にある。一方、日本企業の場合は、あまり細かい管理を推進すると嫌がられるため、実績開始日、実績終了日、達成率の3種のパラメータをベースに管理することが多い。
綿密な管理も、ある程度ラフな管理も、どちらも可能なMicrosoft Project。米Microsoftの社内には、ソフトウエア開発やITに関わる作業など、業務フローやそれにかかわる予算などを決めた、全世界共通のテンプレートがある。計画の作成や進ちょく管理だけでなく、実績を元にしたテンプレート作成もできるMicrosoft Projectなら、さまざまな社内業務の標準化を図れるはずだ。