Pythonを選んだワケ
Zope3が導入した規律
前述のように、Pythonは言語取得についてのコストが低い上に、インデンテーションや予約語といった最低限のルールさえ守れば、プログラミングのスタイルを自由にとることができます。
またPythonは、ほかの言語からプログラミングパラダイムをいろいろと貪欲(どんよく)に取り入れてきたという歴史もあって、手続き型プログラミングでもオブジェクト指向プログラミングでも関数型プログラミングでも行うことができます。
Pythonは動的型付けのスクリプト言語であり、シンタックスも緩いルールである上に、複数のプログラミングパラダイムをサポートするというような、かなり自由度が高い言語です。
しかし、物事には必ず両面あるもので、自由度が高いプログラミングを許容するということは、無秩序な状況を生む温床にもなるのです。事実、可読性が高いはずのPythonで書かれたソースコードなのに、さっぱりわからない難読極まりない奇々怪々な様相を呈しているコード群に、何度も筆者は遭遇しています。こうなってしまうと、一切のメンテナンスが不可能になり、自由な記述というのは逆にデメリットとなってしまいます。
Zope 3ではコンポーネントアーキテクチャを採用し、このような無秩序を抑える機能を持つにいたりました。
システムを構築するときに、既存の部品を再利用する場合がありますが、このときに、オブジェクト指向プログラミングとしてのとるべき方法には2つあります。1つはサブクラス化をする方法であり、もう1つがコンポーネントと呼ばれている独立したオブジェクトに分ける方法です。
サブクラス化は、親となるオブジェクトを段階的に拡張できるという強みを持っている反面、機能の変更がある度にクラスを定義する必要があるというデメリットがあります。そして、このデメリットがシステムを無秩序にしていく原因でした。
サブクラス化により無秩序な状態になったZope 2の現状を反省し、Zope 3で採用されたのがコンポーネントに分ける方法です。注意しなければならないのは、複数のオブジェクトをコンポーネント単位で分けたとしても、それだけでは秩序を形成することができないのです。コンポーネント間の秩序を作るために、Zope 3において採用されたのは「インターフェース」です。
インターフェースはオブジェクト間の契約のようなもので、あるコンポーネントがほかのコンポーネントにどのような機能を期待するのか、またその反対にほかのコンポーネントに対してどのような機能を提供するのか、を明確に定義したものです。すべてのコンポーネントには、インターフェースが必要で、インターフェースを持つオブジェクトをZope 3ではコンポーネントと呼びます。
具体的にこのことを示しましょう。図3-1では、上記のコンポーネントをZopeのコンポーネントとして利用するためのトイコードを示しました。1つの物理定数を格納するだけのユーティリティーコンテナコンポーネントです。
まず、インタフェースの定義は、Zopeのライブラリzope.interfaceを利用します。インタフェースを実際のオブジェクトにコンポーネントとして利用するには、implements関数を利用します。インタフェースを定義し、そのインタフェースをオブジェクトに結びつければ、Zope 3ではコンポーネントとして利用できます。図3-2ではコンポーネントを実際に利用する例を示しています。
見方を変えますと、少し大きなプログラミングをするときは、たとえZope 3自体を使わなくても、zope.interfaceだけを利用してオブジェクトをコンポーネントに分けることが有用になります。コンポーネントアーキテクチャという概念だけを、自分のプログラムに導入するのです。
Pythonの豊かな生態系
今回示したかったのは、Pythonの持つ豊かな生態系のありようです。Pythonは、言語の自由度に加え、有用で成熟したライブラリが大量に存在し、それが言語の多様性を担保しています。その一方で、Zope 3のような規律化と秩序を導入し、言語を教育的に導いていく動きを内在的に持っているのです。
このような理由で、筆者はこれからもPythonを日常的に使い続けていくことでしょう。
なお、本稿の執筆にあたって、以下を参考にしました。
python(http://python.org)(アクセス:2008/11)
paramiko(http://www.selfdot.com/paramiko/)(アクセス:2008/11)
zope 3(http://wiki.zope.org/zope3/Zope3Wiki)(アクセス:2008/11)
Philipp Von Weitershausen『Web Component Development with Zope 3』Springer-Verlag New York Inc (発行年:2008年)