宣言型プログラミングの可能性と限界
宣言型プログラミングとは
命令型プログラミングと対比されるもう1つの大きな流れとして、ハードウエアとは独立した、数理論理学に根ざした流れが存在します。(純粋な)関数プログラミングや論理プログラミング、制約プログラミングなど、いろいろな理論に根ざしたプログラミングモデルが存在しますが、ここではそれらを総称して、宣言型プログラミングと呼ぶことにします。
宣言型プログラミングは、問題の解法、すなわちデータ構造とアルゴリズムを記述する命令型プログラミングとは対照的なプログラミングパラダイムです。宣言型プログラミングが記述するものは、問題の定義、すなわち解くべき問題の性質や、その際に満たすべき制約の記述です。
問題の定義は、問題の解法とはなるべく独立しているべきです。なぜならば、問題の効率的な解き方は、実行環境に依存したさまざまなやり方が考えられるからです。たとえ、ある環境では効率的な解き方であっても、別の環境では非効率になってしまう場合もあります。
命令型のプログラムを記述する場合、まずは問題をどのようなデータ構造で表現すれば良いのか?どのようなアルゴリズムでデータを処理すれば良いのか?というような、低レベルなデータ構造とアルゴリズムについて考えなければなりません。そのような実装の詳細の決定は、システムの隅々にまで影響を与え、後の変更を困難にするため、できるだけ先延ばしにできた方が良いのです。
命令型のスタイルは、実行環境に深く依存したデータ構造とアルゴリズムを駆使して、非常に効率的な解法を記述できる可能性があります。しかしその半面、実行環境が変わるたびにプログラムを大きく書き直す必要が出てきます。また、問題とは直接関係無い、さまざまな非本質的な記述がプログラムの中に混在することになるので、どこがプログラムの本質なのかがわかりにくくなってしまいます。
論理型プログラミング言語Prolog
宣言的なプログラミング言語の1つに論理型プログラミングPrologがあります。あまりなじみの無い方がほとんどだと思いますが、その歴史は古く、70年代から主に自然言語処理などのAI(人工知能)分野においてよく使われています。Prologは、PROgramming in LOGic(論理によるプログラミング)という名前の通り、普及している命令型のプログラミングとはかなり異なる「プログラミング」の可能性を示した言語です。
論理プログラムの特徴として、制御構造(処理の流れ)という、命令型プログラムでは空気のように当たり前の概念が(理論上は)存在しないことが挙げられます。
もちろんPrologは現実のプログラミング言語ですから、言語処理系内に組み込まれたアルゴリズムによって、最終的には命令型言語と同様に実行されます。その際の効率のために、命令的な記述を許すように拡張された処理系もあります。
しかし、「純粋な論理プログラム」が記述するものは、あくまでもロジックであり、手続きそのものではないのです。宣言性が高い、つまり制御構造を意識しないで済むプログラムは、自然と双方向性を持つ、より汎用的なものとなります。
例えば、図1に示す有名なプログラムappendは、第一引数のリストXと第二引数のリストYを連結したものを第三引数のZに返す、という通常の関数的な使い方以外にも、リストを分解し、すべての分解パターンの可能性をしらみつぶしに探すというようにも使うことができます。