AIを活用したDevOps : 導入のベストプラクティス

2025年3月24日(月)
Mav Turner
第3回の今回は、AIを活用したDevOps導入のベストプラクティスと、企業が直面する課題や成功のポイントについて解説します。

DevOpsにおけるAI活用の現状と可能性

今日、人工知能(AI)の活用は業界を問わず急増しており、AI技術の導入企業の割合は72%にも及びます。企業のITチームはこうした変革を主導しており、課題解決だけにとどまらず、イノベーションの加速を目的にAIを利用しています。さらに、2025年を迎える前には世界のAI市場規模は1,840億ドルに到達すると予想されており、AIの有効活用が、企業の未来を左右すると考えられます。

このような状況下で、AI技術はDevOpsチームにとって強力な資産となりつつあります。ソフトリリースの迅速化及び効率化が求められ、自社のソフトウェア・デリバリー・サイクルを加速させる必要に迫られている中、AI技術を使用するチームは、AI技術の効果を実感しています。当社が最近発表した調査レポート「DevOpsにおけるAI活用の実態」によると、AIを活用していないDevOpsチームと比較して、既にAIを導入しているチームでは、チームの状態を「極めて効果的」または「とても効果的」と評価する割合が30%高くなっています。

生産性の向上やスキルギャップの縮小、コスト削減、ソフトウェア品質の向上など、DevOpsチームが直面する主な課題について、AIはすでに解決策となっています。さらに、AI Copilotは計画、コーディング、ソフトウェアテストのフェーズで、付加価値を提供する役割として需要が高まっています。このようにAIの可能性は周知の事実ですが、AI技術の導入は「言うは易し、行うは難し」です。AIの採用を成功させるためには、自社の開発チームとテストチームに対し、AIシステムと効果的に連携するために必要なスキルを習得させることが不可欠です。

AIによるDevOpsの強化

前述の調査では、ソフトウェア・デリバリー・サイクルの中でAIによって最も費用対効果が得られる分野としてソフトウェアテストが上位に挙げられており、DevOps実践者の約3分の2(60%)が「最も効果的な投資」として回答しています。テスト計画の策定、テストケースの作成、テスト結果の分析、コード変更のリスク評価など、AIはさまざまなテスト業務で活用されています。こうしたAIを活用するアプローチにより、品質保証チームは、エラーが最も発生しやすい領域に優先順位をつけ、最も重要なタスクにリソースを集中させることが可能になります。

AIはコーディングとセキュリティの両方に顕著な影響を及ぼしており、DevOps実践者は、これらの分野をテストに次いで費用対効果が得られると評価しています。セキュリティに関しては脆弱性に関するプロアクティブな特定・対応、脅威検知機能の強化、新たなリスクへの対応の自動化で、AIツールは高い効果が実証されています。それでもなお、リリース管理、展開、プラットフォームエンジニアリング、計画などのフェーズには、AIの大きな可能性が残されています。ソフトウェアの安定性と拡張性を確保する上で不可欠なこれらのフェーズは、AIがもたらす予測機能、リソース最適化、運用・保守プロセスの合理化によって多大なメリットを享受すると期待されます。

AIの推進:専門性と信頼性が鍵

生成AIとAI CopilotはこれまでAI技術の採用促進に寄与してきましたが、DevOpsでは引き続きAIの専門知識が大きく不足しています。特に、回答者の3分の2以上が「AIが生成したアウトプットを少なくとも半分の機会で手作業でレビューしている」と回答しており、レビュープロセスに未だ人手が求められていることを考慮すると、この溝は深刻です。

こうした課題を解決するため、企業は専門的なトレーニングコースを開発し、自社のDevOpsチームに対してAIツールの活用スキルを適切に習得させる必要があります。業界で認知されたコースや社内プログラムを通じて資格取得を推奨することで、技術的な専門知識を大幅に強化できます。

AIによる戦略的な意思決定、特に文脈の理解が鍵となる分野では人の監視が必要なため、スキルアップも不可欠です。さらに、ソフトウェア開発におけるAIの貢献に関して信頼と自信を構築するために、ガバナンスの明確な枠組みを確立する必要があります。こうした複数の要素の間でバランスを取ることでAIは企業にとって価値ある資産となり、AIに関する説明責任を守りつつ業務の効率化を推進できます。

米国政府の「AI権利章典」でAIの活用におけるプライバシー、透明性、公平性を保護するための国家的な枠組みが示されているように、米国政府はAIガイダンスの策定に着手しています。州法と連邦法が重なり合うことで規制を取り巻く状況は複雑化しています。両方のガイドラインに対応することで、企業は自社のAIシステムで倫理や法令を遵守し、従業員や民間からの信頼を得ることができます。

チームの持続可能な成長を牽引し
効果を維持するには

AIとの統合を通じ、企業はDevOpsの実践を強化することが可能になります。しかし、前述の通り、AIの採用を成功させるには、AIシステムと効果的な連携をするために必要なスキルを、開発チームとテストチームが習得することが重要課題となっています。AIのアウトプットに対する信頼を確立するには透明性のあるガバナンスと規制も求められており、これによって、AI技術の能力に対する信頼を構築できます。

AIのスキルアップと信頼の構築に投資を行うことで、AIの生成と人の監視のバランスを取るための十分な準備が整います。こうしたアプローチにより、AIを強力なツールとして活用することで、効率性を強化し、市場投入期間を短縮し、ソフトウェアの高い品質基準を維持できます。

Tricentis 最高製品・戦略責任者
ソフトウェアリリースのスピードアップ、品質の向上、コストの削減を通じて、組織のデジタル変革を加速させることを目指し、研究開発、製品の機能拡張、戦略を統括。Tricentis入社前は、N-able社とSolarWinds社で製品担当バイスプレジデントとして従事。テキサス州立大学でコンピュータサイエンスの学士号を取得。

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