復旧時間を83%短縮、ただし重要な対処は人が承認――NTTデータ先端技術がHinemosで障害対応の自律化を検証
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- NTTデータ先端技術が、統合運用管理ソフトウェア「Hinemos」においてAIエージェント技術を用いた実証実験を開始した。期間は2026年10月1日から12月31日まで。障害対応の自律化、ジョブ異常発生時の影響・原因調査、アラートメッセージの抑制・集約ルール作成の3テーマで適用可能性を検証する
- 中核となる障害対応の自律化では、Hinemosによる障害検知を契機に、AIエージェントが運用情報の収集、原因分析、対処方法の選定・実行、復旧確認、結果報告までを遂行する。社内開発環境における検証では、特定のユースケースで復旧時間を83%短縮する効果を確認している
- 対処方法をルールベースで選定することで説明可能性を担保し、影響の大きい対処の場合は実行前に人による承認プロセスを設けるHuman-in-the-loopを取り入れる。2027年度上期をめどにHinemosでのサービス化を推進する
📝 Think IT編集部の見解 📝
この実証実験の設計で目を引くのは、自律化を謳いながら2か所に歯止めを置いている点だ。
1つは対処方法の選定をルールベースで行うこと。LLMに判断させるのではなく、あらかじめ定義されたルールから選ばせる。リリースはその理由を「説明可能性を担保」と説明している。障害対応では、なぜその対処を選んだのかを事後に説明できなければ、ポストモーテムも再発防止策の検討も成り立たない。推論過程がブラックボックスのままでは、運用の改善サイクルに乗らないという判断だろう。
もう1つが、影響の大きい対処に人の承認を挟むHuman-in-the-loopだ。添付の図を見ると、承認のステップに「責任は人が負う」と明記されている。AIが提案し人が承認するという形式は多くの製品が採るが、責任の所在をここまで明示しているのは珍しい。本番環境への変更を誰の判断として記録するかという、運用上避けて通れない論点に正面から答えている。
83%という数字の読み方には注意が必要だ。リリースは「社内開発環境における障害復旧を対象に検証を進めており、特定のユースケースにおいて」と条件を明記している。本番環境ではなく、かつ特定のケースでの結果である。今後は対象とする障害パターンを拡大しながら検証を継続するとしており、現時点では適用範囲が限定されていると理解すべきだろう。
先日取り上げたCognitionの「Devin Oncall」と比べると、アプローチの違いが鮮明になる。あちらはクラウド上でモデル非依存に動作し、レビューエージェントが推論の質を点検する構成だった。こちらはHinemosという既存の統合運用管理基盤を土台に、その収集・分析・自動化機能をAIエージェントが利用する形を取る。すでにHinemosを運用している組織にとっては、新しい基盤を導入せずに自律化へ進める道筋になる。
3つ目のテーマであるアラートメッセージの抑制・集約ルール作成も、実務的には価値が大きい。Hinemosメッセージフィルタのルール開発は、過去イベントの分析と運用者の経験に依存する作業で、属人化しやすい。ここにAIエージェントを入れてルールの提案から作成、適用までを担わせるという発想は、アラート疲れに悩む現場には現実的な解になりうる。
サービス化の目標は2027年度上期。11月26日に開催される「Hinemos World 2026」で中間成果の報告とデモンストレーションが予定されており、現時点でどこまで到達しているかはそこで確認できそうだ。
📰 リリースまとめ 📰
NTTデータ先端技術、Hinemosで障害対応の自律化に向けた実証実験を開始
株式会社NTTデータ先端技術(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:田中秀彦)は2026年10月29日、統合運用管理ソフトウェア「Hinemos」においてAIエージェント技術を用いた新たな実証実験を開始したと発表した。実証実験は2026年10月1日に開始し、同年12月31日まで実施する予定だ。
同社はHinemosにおいて、AIを活用してシステムを自律的に運用する「AIドリブン運用」の実現に取り組んでいる。本実証実験では3つの運用業務を対象にAIエージェントの適用可能性を検証する。中核となる取り組みとして、AIエージェントが障害の原因分析から復旧、結果報告までを自律的に遂行する仕組みの実現性を検証するほか、ジョブ異常発生時の影響・原因調査、およびアラートメッセージの抑制・集約ルール作成についても検証を行う。
背景——運用業務は依然として経験とスキルに依存
近年、AI技術が急速に発展しており、とりわけ自律的に判断・実行するAIエージェントが注目されている。一方でITシステムはクラウド化やサービス連携の拡大により複雑化しており、障害対応をはじめとする運用業務は依然として運用者の経験やスキルに依存している。そのため、対応品質のばらつきや復旧時間の長期化が課題となっているとNTTデータ先端技術は指摘する。
Hinemosは「収集・蓄積」「見える化・分析」「自動化」といった幅広い機能を備えた統合運用管理ソフトウェアだ。同社はこれまでも、Hinemosと生成AIサービスとの連携や過去ナレッジの活用など、AIドリブン運用の実現に向けた取り組みを推進してきた。今回はこうした取り組みをさらに発展させ、AIエージェントがHinemosの統合運用管理機能を活用して障害対応の一連の作業を自律的に実行する仕組みについて、その実現性を検証する。
テーマ1——障害対応の自律化
障害対応の一連のプロセスを自律的に行うAIエージェントの実用性を検証する。AIエージェントは、Hinemosによる障害の検知を契機に、Hinemosから必要な運用情報を収集して原因分析を行い、さらに対処方法の選定・実行、復旧確認、結果報告までを遂行する。
対処方法をルールベースで選定することで説明可能性を担保し、影響の大きい対処の場合には実行前に人による承認プロセスを設けることで、人が重要な判断に関与するHuman-in-the-loopを取り入れる。これにより、運用者の経験に依存していた作業品質を安定させ、復旧時間を短縮できると見込んでいる。
現在は社内開発環境における障害復旧を対象に検証を進めており、特定のユースケースにおいて、有識者に頼って人手で実施していた従来の復旧作業に比べ、復旧時間を83%短縮する効果を実現している。今後は対象とする障害パターンを拡大しながら検証を継続し、実運用への適用可能性を評価していくとしている。
テーマ2——ジョブ異常発生時の影響・原因調査
AIエージェントがジョブやリポジトリの依存関係をもとに影響範囲を特定するとともに、異常発生時間帯の性能情報や監視情報を分析し原因を調査する仕組みを検証する。これにより、原因調査や影響調査に要する時間の短縮への寄与を確認する。特に、大規模かつ複雑なジョブを運用するシステムにおいて効果が期待されるという。
テーマ3——アラートメッセージの抑制・集約ルール作成
「Hinemosメッセージフィルタ」はルールエンジンを活用して管理対象システムから発生する大量のメッセージを抑制・集約し、重要イベントを効率的に抽出するAIOps機能だ。このメッセージフィルタのルール開発に対して、過去イベントの分析や運用者による要件の入力をもとに、AIエージェントがルールの提案から作成、適用までを行う仕組みを検証する。ルール作成を効率化するとともに、運用者が重要なメッセージへの対応に注力できると見込んでいる。
将来的にはこれらの取り組みを発展させ、専門領域を扱う複数のAIエージェントが連携しながら運用業務を担うことで、システム全体の自律運用を実現することを目指すとしている。
今後について
NTTデータ先端技術は、本実証実験の結果をもとに2027年度上期をめどにHinemosにおけるサービス化を推進する。今後はシステム運用の高度化を目指すユーザー企業とのトライアルにも取り組み、実運用における有効性や課題を検証する。また、そのほかの運用作業へもAIエージェントの適用を拡大し、AIドリブン運用のさらなる発展を図る。
なお「Hinemos World 2026」が2026年11月26日に東京・品川で開催され、本実証実験の中間成果の報告とあわせて、AIエージェントを活用した運用のデモンストレーションが予定されている。
📎 一次情報・関連リンク 📎
- Hinemos World 2026:https://www.hinemos.info/seminar/HinemosWorld2026
- Hinemos 公式サイト:https://www.hinemos.info/
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