17件の障害をすべて解決、平均2分21秒――Cognitionの「Devin Oncall」が本番インシデントの一次対応を担う
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- Cognitionが、本番環境で発生するアラートやバグ報告をAIソフトウェアエンジニア「Devin」が自動で調査し、開発チームによる本番インシデントの原因究明と解決を支援する「Devin Oncall」の一般提供を開始した。すでに世界有数の大企業で導入され、日々数千件に上る本番環境のアラートを処理している
- 実際の本番障害をもとにしたSREベンチマーク「SREGym」で最高スコアを記録し、SREGym-Lite(17の障害)でエンドツーエンド成功率100%を達成した。本ベンチマークは、稼働中のシステムにおける障害の根本原因を特定し、同一の実行過程で問題を緩和することを求めるもの
- メインのエージェントと並行して非同期に動作する「レビュー」エージェントが、相関関係と因果関係の混同、矛盾するテレメトリの見落とし、きっかけと根本原因の取り違えなどを点検し、早計な結論の導出を防ぐ
📝 Think IT編集部の見解 📝
リリースが冒頭で認めている課題が、この製品の位置づけを示している。従来のAIエージェントによる本番デバッグは、コード生成能力と比べて精度が足りなかった。根本原因を特定する前に結論を出す、調査範囲が限定的、ロールバックやスケールアップで済む場面で大規模なコード変更を試みる——オンコール対応をAIに任せようとして諦めた経験がある読者には、心当たりのある挙動だろう。
その対策として置かれているのがレビューエージェントだ。メインのエージェントと並行して非同期に動作し、直近の推論とツール呼び出しとその結果を点検する。見ているのは「相関関係と因果関係の混同」「矛盾するテレメトリの見落とし」「きっかけと根本原因の取り違え」。いずれも人間の障害対応でも起きる典型的な誤りで、それを別のエージェントに監視させるという構成になっている。本誌が8月に取り上げたGitLab 19.3やNutanixのMCPサーバーが権限で縛る方向だったのに対し、こちらは推論の質を別の目で担保する設計だ。
3層のコンテキスト設計も実務的に意味がある。Responderごとの記憶、組織単位のスキル、組織単位の記憶。先日取り上げたNinjaOneのKatana AIが「汎用モデルの知識に依存せず組織の蓄積データから推論する」としていたのと同じ発想で、インシデント対応という領域ではその企業固有の履歴こそが判断材料になるという認識が共通している。過去の調査を参照して重複する調査の約60%を省略するという数字も、同じ仕組みから出てくる効果だ。
連携先の列挙も目を引く。Slack、Microsoft Teams、Datadog、Grafana、New Relic、Dynatrace、Sentry、Jira、Linear、ServiceNow。いずれも既存のオンコール体制で使われているツールで、新しい運用を持ち込むのではなく既存のフローに差し込む設計になっている。
一方で、SREGymの数字をどう読むかは慎重でありたい。SREGym-Liteは17の障害で構成されており、ベンチマーク環境と自社の本番環境では複雑さが異なる。AngelListの「インシデントの50%をDevinがエンドツーエンドで単独対応」という事例のほうが、実運用での到達点としては参考になるだろう。残り半分には人が関与しているということでもある。
本誌の連載「SREが語るインシデント対応の実践」第2回では、AIが一次調査を担うようになった結果、エンジニアが経験を積む機会が失われるという問題提起がなされていた。Devin Oncallのような製品が普及すれば、その問いはより切実になる。一次調査を任せた先で、何を人に残すかという設計は各組織が考える必要がある。
📰 リリースまとめ 📰
Cognition、「Devin Oncall」の一般提供を開始
ソフトウェア開発向け自律型AIエージェントのCognition(本社:米国カリフォルニア州、CEO兼共同創業者:スコット・ウー)は2026年10月15日(米国時間)、本番環境で発生するアラートやバグ報告をAIソフトウェアエンジニア「Devin」が自動で調査し、開発チームによる本番インシデントの原因究明と解決を支援する「Devin Oncall」の一般提供を開始した。
背景——コード生成に比べて遅れていた本番デバッグ
従来、AIエージェントによる本番環境のデバッグの品質は、コード生成能力と比べて十分な精度に達していなかった。根本原因を特定する前に結論を出してしまう、調査の範囲が限定的である、ロールバックやスケールアップといったシンプルな緩和策ではなく大規模なコード変更を試みてしまう、といった課題があったという。
しかしモデルの性能が向上した今、オンコール対応に必要なのは適切なコンテキスト、ツール、ワークフローを備えた高性能なコーディングエージェントであり、クラウド上で動作し対象システムにアクセスでき、チーム間でコンテキストを共有できる必要があるとCognitionは説明する。Devinはモデル非依存の設計のため、オンコールのタスクに応じて最適なモデルを選択し、より高性能なモデルが利用可能になった際にも柔軟に採用できる。
2つの機能構成
Devin Oncallはアラートの継続的な監視と、進行中のインシデント対応という性質の異なる2つの業務に合わせた機能で構成される。
Respondersはアラートやバグ報告の流れを監視して問題を自動で診断し、過去に調査した問題を記憶することで同じ問題に対する重複調査を防ぐ。「Alert Responders」と「Support + Bug Responders」の2種類を用意しており、複雑なランブックを用意することなく利用できる。
Incidentsは、Devinがインシデントごとに作成されるチャット(Slack/Teamsに対応)のチャンネルに参加し、エンジニアと並行して自律的に調査を進める機能だ。同時に、関係者がすぐに状況を把握できるようインシデントドキュメントをリアルタイムで更新する。エンジニアからの個別の質問には別のDevinが応答するため、全体の調査を中断することなく対応できる。
SREGymでの性能
実際の本番障害をもとにしたSREベンチマーク「SREGym」においてDevin Oncallは最高スコアを記録し、SREGym-Lite(17の障害)でエンドツーエンド成功率100%を達成した。Claude Opus 5.5を使用した場合には、成功率100%を平均2分21秒の緩和時間で達成し、最速の結果となったとしている。本ベンチマークでは、稼働中のシステムにおける障害の根本原因を特定し、同一の実行過程で問題を緩和することが求められる。
早計な結論を防ぐレビューエージェント
図:Devin Oncallの調査体制とレビューエージェントの役割(Think IT編集部作成)
メインのエージェントと並行して非同期に動作する「レビュー」エージェントが、直近の推論、ツールの呼び出し、その結果を点検する。相関関係と因果関係の混同、矛盾するテレメトリの見落とし、きっかけと根本原因の取り違えなどを確認することで、早計な結論の導出を防ぐ。
3層のコンテキスト
Responderごとの記憶(Per-Responder Memory)、環境を定期的にインデックス化し障害の影響範囲の算出など頻出するデバッグ作業のスキルを自動生成する組織単位のスキル(Per-Org Skills)、すべての調査結果から有用な情報を組織のナレッジとして蓄積する組織単位の記憶(Per-Org Memory)の3層により、導入初日から利用でき、チームが使うほど精度が高まる。Cognitionのモニタリングでは、誤った診断の発生頻度が時間の経過とともに減少していることが確認されているという。
またRespondersは過去の調査を参照し、関連するアラートをまとめることで重複する調査の約60%を省略する。これにより通常の自動化処理と比べてコストを半分以上削減できるとしている。
既存ツールとの連携
Devin Oncallは、開発チームが日常的に利用するチャット、オブザーバビリティ、チケット管理のツールと連携する。SlackやMicrosoft Teamsでは報告されたバグや問題を投稿されたその場でトリアージし、Datadog、Grafana、New Relic、Dynatraceとは発報したアラートをすぐに調査してテレメトリをもとにインフラの問題を根本原因まで追跡する。Sentryで検出したエラーは修正につなげ、JiraやLinearでは割り当てられたチケットを引き取りプルリクエストまで作成する。ServiceNowとも連携する。
導入企業の成果
Reductoでは、Devinが複数のアラートから問題の兆候を早期に検知し、問題の内容を添えてインシデントを自ら起票した。現在はエンジニアリングのアラートの大半をDevinが一次対応し、中程度の深刻度の問題を自動で修復するほか、エンジニアによるレビューに先立ってプルリクエストの作成やテストを行っている。
RivianとVolkswagenの合弁会社であるRV Techでは、Devinが顧客からの報告から車両の識別子やタイムスタンプを自動で抽出し、ログの取得、解析スクリプトの実行、問題のトリアージまでを行う。エンジニアは初期調査を手作業で行う必要がなくなった。
AngelListでは、Devinが同社が社内で開発した調査ツール「Sky」と比べて根本原因の特定において3.5倍の成果を示した。インシデントの50%はDevinがエンドツーエンドで単独対応しており、同社はSkyの利用を終了してDevin Oncallに移行している。
📎 一次情報・関連リンク 📎
- Cognition プレスリリース(PR TIMES):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000181315.html
- Devin Oncall 製品ページ(英語):https://devin.ai/oncall
- Cognition 日本サイト:https://devin.ai/ja
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