1日3.6億件の計算を、空冷のまま回せるか――みずほ証券がHPE Cray XD2000で液冷データセンターを新設
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- みずほ証券と日本ヒューレット・パッカードが、液冷データセンターを新たに構築し、国内の金融業界で初となる直接液冷(DLC)方式を採用した「HPE Cray XD2000」を導入すると発表。今秋から液冷設備やシステム構築、稼働評価等を実施し、2027年4月以降に本番稼働する予定
- 背景にあるのはグローバルマーケッツ部門の計算需要で、デリバティブ評価や市場リスク・信用リスクの計量に向けたシミュレーションは1日あたりの計算件数が3.6億件超と年々増加している
- DLC方式は空冷方式と比較してキロワットあたり最大20%の性能向上と15%の消費電力削減を実現する。新システムではサーバーノードあたり現行の1.6倍の性能を見込む。第1期として8サーバーノードを導入し、将来のプライベートAI基盤向けGPUサーバーへの展開も検討する
📝 Think IT編集部の見解 📝
液冷の採用判断は、これまで研究機関やHPC領域の話として語られることが多かった。それが金融機関の業務システムで、しかもデータセンターごと新設する形で出てきたことに、この発表の意味がある。
きっかけは明快だ。1日3.6億件超という計算件数が年々増加している。デリバティブ評価、市場リスク、信用リスクの計量はいずれも計算を積み上げる処理で、取扱商品が増えれば負荷も比例して増す。リリースが「システムリソースの拡張と、計算性能を安定的に引き出すための基盤強化が必須」と書くのは、ラックに詰め込める演算能力が空冷では頭打ちになる段階に来たということだろう。
技術的に押さえておきたいのは、提示されている数値がいずれもHPEの内部性能テストに基づく推定値である点だ。キロワットあたり20.7%の性能差、シャーシ電力14.9%の差は、SPEChpc 2021ベンチマークによる2023年4月時点の比較として脚注に明記されている。実ワークロードでの結果ではない。1.6倍という性能向上も、現行のHPE Apollo2000とHPE ProLiantを組み合わせたシステムとの独自比較であり、他社構成からの移行で同じ数字が出るとは限らない。
運用面で興味深いのは、冷却液の漏れを検知した際に自動通報する監視機能に言及している点だ。液冷は配管とクーラントという、従来のサーバー運用にはなかった管理対象を持ち込む。DLCシステムと電源システムの稼働状況をリアルタイムで可視化し、HPE Servicesが監視と保守を一貫して支援するという体制は、初めてDLCを導入する組織にとって現実的な選択だろう。自社で運用ノウハウを持たない領域をどう埋めるかという問いへの、1つの答えになっている。
段階的な進め方も参考になる。第1期は8サーバーノードにとどめ、本番環境で効果を確認しながらサーバーとラックを順次拡張する。そのうえでDLCの有効性を実証し、将来のプライベートAI基盤向けGPUサーバーへの展開を検討するという順序だ。GPUサーバーは液冷の必要性がさらに高い領域であり、業務システムで冷却方式の運用を固めてからAI基盤へ広げるという設計は、リスクの取り方として理にかなっている。
本番稼働は2027年4月以降。今秋から1年半かけて設備構築と稼働評価を行う計画で、液冷データセンターの新設がどれだけの準備期間を要するかを示す事例としても参照できる。
📰 リリースまとめ 📰
みずほ証券、国内の金融業界初となるHPE製直接液冷サーバーを導入
みずほ証券株式会社(取締役社長:浜本吉郎)と日本ヒューレット・パッカード合同会社(代表執行役員社長:望月弘一、以下HPE)は2026年10月6日、みずほ証券が液冷データセンターを新たに構築し、国内の金融業界で初となる直接液冷(Direct Liquid Cooling、以下DLC)方式を採用した「HPE Cray XD2000」を導入すると発表した。今秋から液冷設備やシステム構築、稼働評価等を実施し、2027年4月以降に本番稼働する予定だ。
背景——1日3.6億件超の計算件数
みずほ証券のグローバルマーケッツ部門では、国内外の顧客に公社債、株式、デリバティブなど多様な金融商品・サービスを提供している。デリバティブ評価をはじめ、市場リスクや取引に伴う信用リスクの計量に向けたシミュレーションを実行するにあたり、1日あたりの計算件数は3.6億件超と年々増加している。
ビジネス規模が拡大する中、より付加価値の高い金融商品・サービスをより多くの顧客へ提供するにあたり、システムリソースの拡張と、計算性能を安定的に引き出すための基盤強化が必須となる。こうした背景のもと、次世代の金融システムを見据え、液冷システム「HPE Cray XD2000」の導入を決定した。
導入の概要と期待される効果
みずほ証券は、現在の冷却要件に対応するとともに、将来のシステム拡張にも備えるため、液冷対応のデータセンターを新たに構築する。密度最適化されたスケールアウト型コンピュートシステムであるHPE Cray XD2000は、発熱量の大きい主要コンポーネントから熱を直接除去するDLC方式を採用している。空冷方式と比較して、キロワットあたり最大20%の性能向上と15%の消費電力削減を実現する冷却機能により、高密度型サーバーの安定稼働を実現する。新システムでは、サーバーノードあたり現行の1.6倍の性能を見込んでいる。
なお、これらの数値はHPEが2023年4月に実施した内部性能テストによる推定値に基づく。SPEChpc 2021のベンチマークを使用した比較では、空冷システムが1kW当たり6.61の性能、DLCシステムが1kW当たり7.98の性能を記録し20.7%の差が生じた。同じベンチマークでシャーシ電力は空冷システムが4,539ワット、DLCシステムが3,862ワットで、その差は14.9%だった。1.6倍という性能は、現行のHPE Apollo2000およびHPE ProLiantを組み合わせたシステムとの独自比較による。
また、HPE Servicesが導入後のシステムの監視と保守を一貫して支援する。DLCシステムと電源システムの稼働状況をリアルタイムで可視化し、冷却液の漏れを検知した際に自動通報する監視機能とHPEのサポートにより、みずほ証券にとって初となるDLCシステムの安定運用を支えていく。
みずほ証券は第1期として8サーバーノードを導入し、本番環境で効果を確認しながら、今後サーバーとラックを順次拡張する予定だ。また、本システムでDLCの有効性を実証し、将来のプライベートAI基盤向けGPUサーバーへの展開も検討している。
両社のコメント
みずほ証券株式会社 執行役員 CIO 兼 グローバルITヘッド 兼 CPrO 兼 グローバルオペレーションヘッドの宇都宮研氏は「みずほフィナンシャルグループでは、商業銀行と投資銀行の機能を世界規模で一体化して提供する『Global Corporate & Investment Banking(グローバルCIB)戦略』を推進しています。この戦略のもと、より付加価値の高い金融商品・サービスを、より多くのお客さまへ提供していくには、事業の成長を支える計算基盤を空冷方式から液冷方式へ強化し、安定的に運用することが不可欠です」とコメントしている。
日本ヒューレット・パッカード合同会社 代表執行役員社長の望月弘一氏は「みずほ証券様が取り組まれている金融シミュレーションの高度化において、計算性能を安定的かつ持続的に引き出す基盤の重要性を私たちも改めて認識しています。HPEは、50年以上にわたり培ってきた液冷技術とHPCの知見を活かし、みずほ証券様のさらなる事業成長とお客さまへの価値提供の向上に貢献してまいります」と述べている。
📎 一次情報・関連リンク 📎
- みずほ証券株式会社事例「国内初、金融業界において液冷データセンターの構築と直接液冷サーバー導入を実現」:https://www.hpe.com/psnow/doc/a00163539jpn
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