OS選定のポイントを整理する

2008年6月10日(火)
松下 享平

サーバOSの選択基準

 サーバOSの系統の選択基準を、図2のマトリックス図で説明しよう。

 当社では、メインで動かすアプリケーションの質によって、サーバOSの系統を決めている。オープンソースソフトウェアの代表的なものと言えば、ApacheやMySQL、PHP、Javaだ。プロプライエタリソフトウェアであれば、Oracle DatabaseやDB2などが挙げられる。

 マトリックス図を見ると、Linux系サーバOSが非常に有利のように見える。しかし実際は、プロプライエタリソフトウェアのサーバOSにはUNIX系やWindows系が選択されることが多い。これは、LinuxのサーバOSとしての歴史の浅さに加え、ソフトウェアサポートの歴史もまだ浅いため、まだ不安が残るケースがあるからだ。

 一方、プロプライエタリソフトウェアとオープンソースソフトウェアを組み合わせる場合、例えばPHPでOracle Databaseのデータを読みだすWebアプリケーションを作成するといった場合は、オープンソースソースソフトウェアとの親和性を重視して、プロプライエタリソフトウェアをLinux系サーバOSで動かすこともありえる。

 Linux系サーバOSがオープンソースソフトウェアとの高い親和性を備えるのであれば、あえてBSD系OSを選択する理由は無いと思うかもしれない。しかし、BSD系OSがセキュリティ面でアドバンテージを持つことは、前回で述べた。この利点は、DNSサーバやメールサーバなど、外部からの攻撃を受けやすいサーバで利用する際に高い価値を持つ。

 サーバOSの系統が決まれば、次はプロダクト/ディストリビューションの選択だ。

 これについて当社では明文化された基準を設けていない。理由としては、この選択によってユーザへのサービスレベルが極端に変わってしまうということが無いためである。要するに「当社の都合」なので、好きなものを選びなさいと言う意味だ。

 ただ、振り返ってみれば、傾向として一定の基準を見いだすことはできる。当社が今まで採用したサーバOSを顧みたところ、そこから3つの基準が抽出できた。それは、「1.開発が5年以上続いていること」「2.操作に慣れていること」「3.バージョンアップ内容の件数比率が、新機能:バグ修正=2:8」である。

 では、なぜこの3つの基準が重要であるのか、順番に説明していこう。

開発が5年以上続いていること

 1つのサーバは長ければ5年以上利用する。その間、アプリケーションの入れ替えやハードウェアの追加といった変化はあるだろうが、サーバOSの抜本的なアップグレードは行われないのが普通だ。要するに、サーバOSは5年以上安心して利用できるものでなければならないのである。安心の定義にはさまざまあるが、最低でもセキュリティパッチの提供が存続していれば、まず安心と言える。

 サーバOSベンダー側もこのことは理解しており、パッチ提供などの保証を長期間に設定しているベンダーもある。しかし、中小企業はもとより、大企業でさえ買収や合併が行われるのがIT業界だ。結果、ソフトウェア開発が不採算事業としてある日突然終了してしまう可能性もある。このような中、私たちが企業から提供される情報をそのまま信じてしまうのは、非常に危険だ。

 では開発が安定して継続される可能性を、どのような基準で見るのが良いだろうか。例えば実績で推し量るのも1つの手である。

 IT業界はまだまだ「流行の業界」と言え、IT系の企業やコミュニティといった団体の寿命は、おおむね3~5年程度のようである。この壁を越えたプロダクトディストリビューションは、順調に存続していることが多いことに加えて、利用者数もそれなりに多いことから、仮に買収などされたとしても買収元企業が開発を継続することが想定されるため、使用する上で安心度は高い。

ぷらっとホーム株式会社
1978年静岡生。ぷらっとホームオンライン事業室室長。EC事業運営を指揮。学生時代よりISP立ち上げなど情報インフラ構築事業に関わる。ぷらっとホーム入社後、基幹システム再構築プロジェクトの技術主任を経て、情報システム課でシステムやセキュリティのトータルデザイン指揮、のち2008年に現ポジションに着任。

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