FreeNASでストレージ専用機の構築
汎用サーバOSと「アプライアンスOS」
「第3回:Debianで作るプロジェクト管理環境(http://www.thinkit.co.jp/article/80/3/)」では、汎用的なサーバOSとして、Debian GNU/Linuxを取り上げた。しかし世の中には特定の用途に的を絞りカスタマイズされたサーバOSも存在する。筆者が調査したところでは、特定用途向けサーバOSを総称する言葉が見当たらなかったため、本連載ではこのようなサーバOSを「アプライアンスOS」と呼ぶことにする。
それでは、どのようなアプライアンスOSがあるだろうか。いくつか挙げてみたのが、図1だ。アプライアンスOSは、何かしらのOSをベースに作られていることが多い。これは、ゼロからOSを作るよりはるかに楽にOSを作ることができるからである。
アプライアンスOSは目的のアプリケーションを簡単に稼働・運用できることを目的に作られており、OSの存在を意識させないように作られている。そのため、ベースになっているOSが問題になることはあまりない。
ただし、アプライアンスOSは、汎用的なサーバOSに比べ、既存のシステムとの親和性が低い。これは、アプライアンスOSがほかのシステムと組み合わせないで稼働できるように設計されているためである。
よって、利用する用途が完全に合致していて、ほかのシステムと連携する必要性が比較的低い、いわゆるスタンドアロンなシステムを構築する際には、アプライアンスOSの採用を検討しても良いだろう。
部門サーバに対する不満とFreeNAS
読者の社内ネットワークには、部門内でのみ利用するファイルサーバ、いわゆる「部門サーバ」が少なからず存在するだろう。部門サーバの重要度は比較的低いが、その割にはユーザ管理やアップグレード作業、利用状況把握など手間は多く、費用対効果が合わなくて悩んでいる情報システム担当者は多いのではないだろうか。
このような部門サーバには、運用の手間を軽減するためにWindows Serverを選ぶことが多い。GUIの管理ツールによって、多くの作業を部門の担当者へ任せることが可能になり、情報システム担当者の負荷は減るだろう。しかしその代わりに、ソフトウェアの費用が発生してしまうことを考えると、もう一考したいところだ。
それに対する解の1つが、ここで紹介するFreeNASである。
FreeBSDをベースに作られ、Sambaなどの無償のオープンソースソフトウェアで構成されたFreeNASは、利用形態問わず無償である。また、Webベースの管理画面も標準で用意されており、管理も簡単だ。加えて言えば、低スペックマシンでも稼働するように設計されているため、Windows Serverよりもハードウェアに対する選択肢が広いのも特徴である。
一方では、汎用サーバOSにSambaとSWATをセットアップし、ファイル共有システムを構築する考え方もあるが、APTやyumで簡単にセットアップできるようになったとはいえ、FreeNASの構築速度の速さにはかなわない。また、FreeNASには各種レポート機能も備わっている。汎用サーバOSを使って簡単にここまでセットアップするのは無理だろう。FreeNASに限らず、アプライアンスOSには、用途に応じたベストプラクティスが詰まっているのである。
というわけで、FreeNASを実際にセットアップする手順を、当社のケースに沿って紹介していこう。
今回FreeNAS用に用意したハードウェアは、2004年に発売されたDELL Dimension 2400(CPU=Celeron 2.4GHz、Memory=512MB、Network=100Mbps)という古いPCに、Western Digital社製 320GBハードディスク(WD3200JB)を2台増設した構成だ。USBメモリはI-O DATA社製 128MBを使用する。
このハードウェアを部門サーバとして、ソフトウェアRAIDによるミラーリングとSambaによるWindowsファイル共有(CIFS:Common Internet File System)を構築する。
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