柔軟なシステム構築が可能なGentoo Linux

2009年7月23日(木)
青田 直大

TOMOYO LinuxがGentooに入るまでの経緯

 ここではTOMOYO LinuxがGentooに入るまでの過程を簡単にまとめてみようと思います。それぞれの段階でのMLアーカイブのURLも書いてありますので、生の雰囲気を感じとってみてください。

 もともとは2005年11月、まだTOMOYO Linuxが1.0だったころに、Gentoo開発者の松鵜さんによるebuildファイルがebuildJP(http://ebuild.gentoo.gr.jp/)に登録されていたことがはじまりです。

MLアーカイブのURL:http://sourceforge.jp/projects/tomoyo/lists/archive/users/2005-November/000007.html

 しかし、その後あまり更新されず、またebuildJPがうまく動かなくなっていたこともあったため、2007年12月に筆者が申し出て、松鵜さんのebuildをもとに変更を加えてTOMOYO project独自のoverlayを作成しました。

MLアーカイブのURL:http://sourceforge.jp/projects/tomoyo/lists/archive/dev/2008-April/000838.html

 その後、2009年1月にGentoo-Hardened用のパッチのリクエストを受けて、ccs_hardened-sourcesをproject独自のoverlayに追加しました。GrsecurityとTOMOYOの機能がぶつかるところもあって難しいパッケージでした。

MLアーカイブのURL:http://sourceforge.jp/projects/tomoyo/lists/archive/users-en/2009-January/000033.html

 そして2009年6月、Linuxカーネル2.6.30にTOMOYO Linuxがマージされると聞き、筆者もこのままproject独自のoverlayでは普及しにくいと考えた上で、GentooのオフィシャルoverlayであるsunriseにTOMOYOを入れようと決心しました。

 sunrise overlayにパッケージを登録するには、まず Gentooのbugzilla(http://bugs.gentoo.org/)に ebuildを登録します。それから、そのebuildを#gentoo-sunriseなどのirc.freenode.net上のIRCチャンネルでレビューしてもらい、Gentoo開発者からのOKをもらう必要があります。

 このレビューというのが難しく、時差と言語の壁もあれば、レビュアーによって少しずつ言うことが違ったりもしています。こうした難点をのりこえてなんとかccs-toolsとccs-sourcesをsunriseに登録できました(図3)。その後、松鵜さんのおかげもあり、それほど時間もかからずに(ccs-toolsは)本家ツリーに入ることができました。

 ほかに時差と言語の壁にも耐えながら、なんとかccs-toolsとccs-sourcesをsunriseに登録できました。その時点ではまだ時間がかかるかと思っていましたが、それほどかからずに(ccs-toolsは)本家ツリーに入ることができました。

筆者のTOMOYO Linuxの使いかた

 最後に私のTOMOYOの使いかたについて触れようと思います。TOMOYOの本質は「アクセス制御」ですが、それ以外の生かしかたもあります。

 まずはデバッグ用途です。対称プログラムを学習モードで走らせ、どのようなファイルにアクセスしているかを見たり、ccs-querydとgdbとを組み合わせて、アクセスしてほしくないファイルにアクセスした時のバックトレースをとったりするところでTOMOYOが活躍しています。デバッグとは少し違いますが、実際にTOMOYO Linuxによって、Fvwm-crystalのスクリーンショット機能がどこに画像を保存するのかを知ることができました。

 またRDEPENDを正確に記述する用途もあります。Gentooのebuildには実行時に依存するパッケージを列挙するRDEPENDという部分があり、lddでライブラリを調べて書くことが多いのですが、この方法ではそのパッケージから呼び出されたプログラムは見落とされがちです。そこでTOMOYOの機能を使ってRDEPENDをより正確に記述できるのではないか、と考えています。

 このようにいろいろな可能性をひめたTOMOYO Linuxですが、ユーザランドの整備、具体的な使いかたの研究はまだまだ不足していると思います。これからはそういった面でもTOMOYO Linuxを応援していきたいと思っています。

大阪大学基礎工学部情報科学科所属。2000年ごろからLinuxを使いはじめ、2006年からemacs-w3mへのパッチ投稿を皮切りにオープンソースの世界に積極的にかかわりはじめる。現在ではemacs-w3m、navi2chなど、主にEmacs関連のソフトの開発に携わっている。

Think ITメルマガ会員登録受付中

Think ITでは、技術情報が詰まったメールマガジン「Think IT Weekly」の配信サービスを提供しています。メルマガ会員登録を済ませれば、メルマガだけでなく、さまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think ITメルマガ会員のサービス内容を見る

他にもこの記事が読まれています