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企業通貨
新たな潮流企業通貨〜通貨エボリューション〜

第3回:企業通貨の導入・運用におけるキーファクター

著者:野村総合研究所  冨田 勝己、安岡 寛道   2007/1/16
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企業通貨を活用したアライアンスパターン

   提携パターンとしては、第2回に示した「フロント型企業とイネーブラー(Enabler)型企業」の組み合わせ、および「フロント型企業とフロント型企業」の組み合わせの2通りがあると考えられる(図4)。
企業通貨を活用した提携関係のパターンと役割
図4:企業通貨を活用した提携関係のパターンと役割

   顧客との接点を持ち、顧客にとってのフロント型企業として生き残っていくのか、それともイネーブラー型企業としてフロント型企業のパートナーとなり、商品やサービスの開発・生産にウェイトを置く企業として生き残っていくのか、は大きな選択肢である。

   ある意味イネーブラー型企業は自社商品をOEM提供し、その商品を流通・販売し、広告してくれるフロント型企業に販売促進費用を与え、それを企業通貨で消費者に直接還元する提携である。したがってフロント型企業には、「基軸通貨」に近い企業通貨を発行する企業があてはまることになる。

   一方でフロント型企業同士が相互に送客し合うためには、顧客視点での提携が必要である。その例としては、以下のような提携があげられる。

  • 顧客の物理的な動線に着目した提携(例:航空と鉄道)
  • 顧客のバーチャルな動線に着目した提携(例:インターネットサービス)
  • インターネットとリアルとの提携(例:インターネット新興企業と重厚長大企業)
  • 商品のバリューチェーンによる提携(例:メーカーから小売の消費プロセス)
  • 業界No.1連合(例:流通No.1と金融No.1)
  • 共通ブランドによる提携(例:かつての「WILL」ブランドの進化)
  • エリアでの提携(例:鉄道グループと地域通貨)

表1:フロント型企業同士の提携例

   これらの提携パターンは、現在行われているものもあれば、将来を想定したものもある。提携自体も生き物であるために、あらゆる提携が生まれては姿を消していくことであろう。


今回のまとめ

   企業通貨を媒体にした企業間の提携により、自社の顧客を自社で提供できない商品やサービスで満足させることができる。また他社の顧客を、自社の商品やサービスの購入や利用をするように送客してもらう、もしくは逆に送客することも可能になる。このような提携はすぐはじることができ、かつすぐに止めることができるという機動性があり、臨機応変に対応できる。

   ポイント交換のタイミングを無視すれば、特にシステム間のつながりは必要ない。また資本提携のような複雑で壁の高い提携でなく、消費者にわかりやすく柔軟に変更できる。

   ただし、現在は「よそがやっているから、うちも提携をする」というケースが多く、本当に送客効果があったのかという点や、提携自体を検証していく段階に差し掛かっていると考えられる。

   次回は「企業通貨の新しい活用方法」として、行動を把握する企業通貨(ポイント)を活用して、自社に対するロイヤリティを醸成し、優良顧客化につなげる方法について解説していく。

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株式会社野村総合研究所 冨田 勝己
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所  冨田 勝己
東京工業大学大学院経営システム工学専攻修了、2001年に株式会社野村総合研究所入社。市場調査から制度設計、アライアンス、オペレーション設計など、ポイントプログラムの導入に関する全般的な支援が主だが、情報通信業界における市場調査やマーケティング戦略立案支援、事業戦略立案支援も手掛けている。


株式会社野村総合研究所 安岡 寛道
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所  安岡 寛道
慶應義塾大学大学院理工学研究科電気工学専攻(修士)修了、1994年に株式会社野村総合研究所入社。2000年に一旦退社後、事業会社にて新事業を立上げ、外資系コンサルティング会社を経由し、2003年に再入社。その間、米国の通信制大学院にてDBA(経営学博士)取得。情報・通信分野を中心に、CRMおよびマーケティング戦略立案からオペレーション改革までを手掛けている。またインターネット新事業立上げの経験をもとに、各種の新事業に関する提言も行っている。


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