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企業通貨
新たな潮流企業通貨〜通貨エボリューション〜

第2回:企業通貨がもたらすインパクト

著者:野村総合研究所  梶野 真弘   2006/12/18
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業態変革からみた企業通貨

   第2回の今回は、企業通貨導入のインパクトや企業通貨を活用することで可能になった企業戦略について解説していく。
グーグルゾン

   「グーグルゾン(Googlezon)」というワードを読者の中にはご存じの方も多いとは思うが、ここで改めて説明を行いたい。このグーグルゾンとは、数年前にネットで広まった米国メディアの将来を予測する短編映像(EPIC2014)に登場する架空の企業で、字の如く「Google」と「Amazon」が合併するというストーリーである。
グーグルゾン(Googlezon)のロゴイメージ 出所:ジョージア工科大学
図1:グーグルゾン(Googlezon)のロゴイメージ
出所:ジョージア工科大学


   ご存じの通り、「Amazon」はECサイトの雄であり、顧客の過去の販売データに基づいて、効率の良い販売を実践できている企業である。一方、「Google」は検索サービスの雄である。この検索サービスにおけるキーワード入力は、「人々が将来に向けて何に関心を持っているか」、あるいは「何をしたいか」などのいわゆる将来の行動についての情報そのものである。つまり、その情報を押さえている「Google」は人々の未来の情報・行動を捉えることができる企業であるといえよう。

   この「Amazon」と「Google」の特徴をあわせ持つ合併会社は、顧客の過去のみならず将来をも見通すことができる企業として位置付けられる。顧客から見ると、「グーグルゾン」は自分のことを理解し的確なレコメンドを提示してくれる、非常に使い勝手のよい企業として映る。企業と顧客との関係から見ると、「グーグルゾン」は顧客接点を強力に握った企業の出現ともいえよう。


顧客接点を握る「フロント型企業」と「イネーブラー型企業」

   「Amazon」と「Google」の合併の話は架空の話としても、特定の分野においては、「顧客接点を握る」企業が出現するというグーグルゾン現象が現在においても部分的に進行してきている。

   顧客接点を強力に握った企業の出現により、この顧客接点を通じて他の企業と協業をするケースも発生している。野村総合研究所(NRI)では、「グーグルゾン」のように顧客接点を握った企業を「フロント型企業」、「フロント型企業」を通じて各種サービス・商品の提供を行う企業を「イネーブラー(Enabler)型企業」と呼んでいる。この2つのタイプの企業を結びつける接着剤として、企業通貨が機能するのである(図2)。

フロント型企業とイネーブラー型企業
図2:フロント型企業とイネーブラー型企業

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株式会社野村総合研究所  梶野 真弘
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所  梶野 真弘
東北大学大学院工学研究科原子核工学修了。92年野村総合研究所入社。ポイントプログラムの導入に関する全般的な支援に加え、情報通信分野、消費財分野の事業戦略立案、マーケティング戦略立案、新規事業支援、アライアンス支援などのコンサルティングに従事。


INDEX
第2回:企業通貨がもたらすインパクト
業態変革からみた企業通貨
  企業通貨を利用した航空会社と紳士服チェーンの成功事例
  企業通貨を自社顧客の囲い込みに利用した成功例