 |
|
1 2 3 4 次のページ
|
 |
はじめに
|
サーバ分野において、オープンソースソフトウェア(以下、OSS)を適用したシステムが普及・拡大している。数年前までは、Webサーバやメールサーバ、ネームサーバといった、フロントエンドサーバへの適用が中心であったが、最近ではアプリケーションサーバなどのバックエンドサーバへの適用も徐々にはじまってきている。
しかしながら、特に日本国内においては、アプリケーションサーバにはJBossやTomcatなどのOSSよりも、WebLogicやWebSphereといった商用のものが採用される事例が多い。
元来Linuxは、Apache、sendmail等のネットワーク系ミドルウェアを動かすOSとして発展してきた。そのため、フロントエンドサーバとしての利用に関しては、性能・信頼性に関する情報やノウハウが既にかなり蓄積されている。しかしながら、JBoss、Tomcatなどに代表されるアプリケーションサーバ分野は、OSSにとって比較的歴史が浅い、新しい分野であるため、以下の様な課題があると考えられる。
- システム設計・構築のための十分な情報がなく、各ベンダーで個別に評価している
- 評価方法も各社バラバラで、ノウハウが分散、OSSのコストメリットが生かせない
- アプリケーションサーバの進化のスピードが早いため、評価にコストがかさむ
|
 |
Javaアプリケーション層の性能・信頼性評価
|
そこで我々は、Javaアプリケーション層(より具体的にはJBoss)の性能・信頼性評価を実施し、評価手順並びに評価結果を一般に公開することで、この分野におけるOSSのさらなる普及に貢献したいと考えた。具体的には、以下に示す評価を実施した。
- Linux(OS)、PostgreSQL(DB)、JBoss/WebLogic(アプリケーションサーバ)、SPECjAppServer2004(ベンチマーク)の組み合わせによる評価手順の確立
- (1)の評価手順に基づく、Linuxカーネル2.4とカーネル2.6の比較
- (1)の評価手順に基づく、JBossとWebLogicの比較
- よりミクロな視点で処理性能を測定するためのプロファイラの開発
JBossを評価対象として選択した理由は、オープンソースのJ2EEアプリケーションサーバの代表格であること。にも関わらず、特に日本国内においては、他の商用アプリケーションサーバなどに比べ適用事例が少ない様に思われるためである。
本連載では、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)および、日本OSS推進フォーラム・開発基盤ワーキンググループによって公開された「Javaアプリケーション層の評価」報告書(以下、報告書)を基に、評価手順ならびに評価結果を説明する。より詳細な内容に関しては、報告書の方を参照されたい。
報告書の全体は以下に示すような構成となっており、本記事を含む3回の連載でそれぞれの章の概要について説明する。
- 第1章 本活動の概要
- 報告書全体の概要(本記事で説明)
- 第2章 評価手順書
- SPECjAppServer2004による性能・信頼性評価手順(本記事で説明)
- 第3章 カーネルバージョン間比較
- Linuxカーネル2.4と2.6の比較評価の手順ならびに結果について(本記事で説明)
- 第4章 分散処理性能比較
- アプリケーションサーバをクラスタ化した場合の評価手順および結果について
- 第5章 トランザクション特性評価
- ミクロな視点から性能測定を行う手順および結果について(連載第4回で説明予定)
- 第6章 商用APサーバとの比較
- JBossとWebLogicの比較評価の手順および結果について(連載第3回で説明予定)
- Appendix ノウハウ集
- SPECjAppServer2004、JBoss、WebLogic、PostgreSQLなどに関する様々なTips、ノウハウについて(連載第3回で説明予定)
また、報告書とともに、評価環境一式を読者の手元で再現するために必要な、様々な設定ファイル群なども付録ファイルの形で併せて公開している。
これらの付録ファイル群を使用し、報告書に示す手順に従うことで、我々が実施したものと同様の性能・信頼性評価を読者の手元で行うことが可能となる。
|
1 2 3 4 次のページ
|
資料紹介
「OSSの性能・信頼性評価/障害解析ツール開発」報告書
本記事は、OSS推進フォーラム 開発基盤ワーキンググループによって公開されている「OSSの性能・信頼性評価/障害解析ツール開発」報告書を基に記事を掲載しています。報告書には、本記事で紹介した評価手法の詳細な手順、評価結果、考察が記載されています。
Javaアプリケーション層の評価、DB層の評価、OS層の評価の各報告書や付録、障害解析ツール開発に関する各報告書などが、OSS推進フォーラム 開発基盤ワーキンググループのホームページにて公開されています。
■「Javaアプリケーション層の評価」報告書(PDF形式/2.99MB)
http://www.ipa.go.jp/software/open/forum/Contents/DevInfraWG/web.pdf
■日本OSS推進フォーラム・開発基盤ワーキンググループホームページ
http://www.ipa.go.jp/software/open/forum/DevInfraWG.html
|
|

|
著者プロフィール
新日鉄ソリューションズ株式会社 稲木 宏一郎
1992年に新日本製鐵(株)に入社後は、C++言語によるオブジェクト指向ソフトウェアの研究・開発に携わる。その後所属組織はそのままに別会社(新日鉄ソリューションズ)となる。現在はシステム研究開発センターでJava/J2EEアプリケーション・フレームワークの開発やOSSの評価などに取り組んでいる。
|
|
|
|