クライアント型SOAとは

2005年8月29日(月)
吉政 忠志

はじめに

継ぎ足し継ぎ足しで構築されてきた企業内のシステム。読者の皆様はそんなシステムに心当たりはないでしょうか?

情報システム部門の方々の総意として、本来システムはサービス・オリエンテッドなシステムで構築すべきである、もしくはありたいと思っているはずです。なぜならシステムは、利用者の生産性を向上させる道具だからです。

しかしながら現状の企業内のシステムは会社の事業拡大の歴史、ITテクノロジーの変遷、そして事業・部門単位で予算化されシステムが構築されてきたことなど、企業の文化・成長背景によって、その時々の最善のチョイスを行ってきた結果、現状の複雑なシステム構成になってしまっているケースが多いのではないでしょうか(図1)。
 

現状のシステム構成
図1:現状のシステム構成
 

システム構成図上では非常にシンプルかつ簡潔に記載をされていますが、その裏側に存在している、システム間のデータ連携、ビジネス・プロセスなどは複雑すぎて、とても一枚の絵には描くことが難しく、複雑に絡まってしまっている状態になっているようです。

そんなシステムの状況などはおかまいなしに、皆様のビジネスは事業拡大のために、市場追従のために常に変化しています。その変化に対応すべく、企業内のシステムも変化を求められるのは当然の要求です。

この要求に応え、変化に自社システムを追従させるために、さらなる「システムの継ぎ足し」を行い、システムの柔軟性下落に目をつむり、応急処置でしのぐか、全面リプレイスをするしか方法がなかったと思います。

そんな状況を打開すべく、この世に生まれたのが「SOA:Service Oriented Architecture(サービス指向アーキテクチャ)」です。

SOAは「既存のシステムを生かしつつ、システム間の連携(データ&プロセス連携)をすべて吸収し、混沌としたシステム環境を、利用者が使用するサービス・機能単位で整理し、利用者ニーズに柔軟な対応ができるようになる」と、ある意味救世主的なアーキテクチャに見えた方も多いと思います。

そういった期待もあり、多くのベンダーがSOAのビジネスに名乗りをあげ、ソリューションの選択肢も多くなりました。また本年はSOAの大型のイベントも開催され、「いよいよSOAも本格的に盛りあがってくるかもしれない」と感じている読者の方もいらっしゃると思います。

しかしながら現状のSOAソリューションが、皆様の期待感に応えられていますでしょうか?

 

SOAに期待されている要求

まず、SOAに期待されている要求を列記します。
 

  • SOAの採用メリットである「利用者の生産性」を向上させたい
  • 既存のシステムを生かしたい
  • 柔軟なシステムを構築したい

   この要求に応えるべくIT産業のベンダーのほとんどは下記の提案をしていると思います。



  1. 「利用者の生産性」を向上させるために、まさにサービス・オリエンテッドなシステムを作ります
  2. 利用者のニーズの変化に対応するために、サービスをコンポーネント化し、このコンポーネントの組み換えにより、システムの柔軟性を実現します
  3. 既存のシステムをいかすために、システムの連携を行う中継役のシステムを作ります
  4. 連携できていない部分も、ビジネス・プロセスを再確認した上で、より良いビジネス・プロセスのモデルを作ります



1と2は企業の情報システム部門の方々にとってはすんなり肯ける項目です。しかしながら3と4の部分で、大きなコストと時間が発生する場合が多く、ここが、SOA採用に踏み切ることができる企業との分かれ道になります。

この3と4を受け入れることができる企業が少ないために、現時点ではSOAの採用数が伸びていないのではないかと、私は考えています。裏を返せば、この3と4をお客様の想定内(予算と時間)に収めることができるソリューションこそが秀逸なソリューションであります。

この3と4を踏まえて、前述のSOAに期待されている要求を詳細に述べます。

吉政創成株式会社 代表取締役

IT業界のマーケティング分野で20年近い経験を持つマーケッター。株式会社トゥービーソフトジャパンをはじめとするベンチャー企業から大手企業まで幅広くマーケティング支援を行う。現在はマーケティングアウトソーシング会社である吉政創成株式会社の代表取締役を務めつつ、PHP技術者認定機構 理事長、Rails技術者認定試験運営委員会 委員長、ビジネスOSSコンソーシアム・ジャパン 理事長も兼任。

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