OSSを活用したLinuxのデータ・バックアップ
NFSサーバーとRelax and Recoverを使ったシステム・リカバリ
リカバリDVDの作成以外にも、NFSサーバーとブートCDを使って簡単にシステム・ディスクのリカバリができるRelax and Recover(通称ReaR)があります。ReaRは、mkcdrecの開発も手掛けているベルギーのHewlett-Packardのエンジニアが開発に関わっています。ReaRは、Mondo Rescueやmkcdrecと同様に、オープンソースのバックアップ・ソフトですが、ベンダーによる保守サポートや動作保証はありません。
ReaRの特徴は、NFSサーバーとブートCDを使ったバックアップ、リストアが比較的簡単にできるという点です。以下では、ReaRによるNFSサーバーを使ったLinux OSのバックアップおよびリカバリ方法について説明します。まず、以下のURLからRed Hat Enterprise Linux 5.x用のReaRを入手します。
バックアップ対象となるサーバーにReaRをインストールします。Rearにはsyslinux RPMパッケージが必要です。
# rpm -vhi syslinux-3.11-4.x86_64.rpm # rpm -vhi rear-1.7.26-1.el5.noarch.rpm
/etc/rear/local.confファイルに以下を記述します。
OUTPUT=ISO BACKUP=NETFS NETFS_URL=nfs://192.168.1.207/work
NFSサーバーは、ReaRで取得したtarballとリカバリ用のブートCDのisoイメージを保管するファイル・サーバーとなります。NFSサーバー側では、データ保管用のディレクトリ/workを作成しておきます。バックアップ対象サーバーがNFSサーバーの/workにアクセスできるようにNFSサーバーを設定します。
# mkdir /work # vi /etc/exports /work *(rw,no_root_squash) # chkconfig nfs on # service nfs start # showmount -e localhost
ReaRがインストールされたバックアップ対象サーバー側で、rearコマンドを使ってバックアップを行います。
# rear mkbackup
NFSサーバーへのバックアップが始まると、NFSサーバーの/work以下に、バックアップ対象サーバーのホスト名のディレクトリが作成され、バックアップ対象サーバーのシステム・ディスクをアーカイブしたtarball(backup.tar.gz)と、リカバリ用のブートCDのisoイメージ・ファイル(ReaR.iso)が生成されるはずです。NFSサーバー側で生成されたファイルを確認してみます。
[root@dl980g7]# pwd /work/dl360g7rhel55.jpn.linux.hp.com [root@dl980g7]# ls -lh 合計 961M -rw-r--r-- 1 root root 202 12月 19 23:06 README -rw-r--r-- 1 root root 16M 12月 19 23:06 ReaR.iso -rw-r--r-- 1 root root 377 12月 19 23:06 VERSION -rw-r--r-- 1 root root 937M 12月 19 23:06 backup.tar.gz -rw-r--r-- 1 root root 6.6M 12月 19 23:06 backup.txt -rw-r--r-- 1 root root 0 12月 19 23:06 selinux.autorelabel
ReaR.isoによるリストア
リストアを行う場合は、ReaR.isoをCD-Rなどに焼き、リストア対象となるサーバーのDVD-ROMドライブに挿入してDVDブートします。HP ProLiantサーバーの場合は、オンボードのiLO3遠隔管理チップによる仮想DVD-ROMドライブ機能でWebブラウザからisoイメージをマウントして利用することもできます。
リストア対象となるサーバーをDVDブート後、プロンプトが現れるのでrearと入力します。その後、ログイン・プロンプトが現れるので、rootでログインします。シェルのプロンプトが現れるので、rearコマンドに引数recoverを付与して実行すると、NFSサーバーからリストアを行います。リカバリが終了したら、init 6を実行し、リストアCDをDVD-ROMドライブから抜いて再起動します。
# rear recover
図15: ReaRリカバリーCDによるリカバリの様子。CDブート後、プロンプトでrearと入力するとリカバリ・モードに入る(左)。rootでログインし、シェル上でrear recoverと入力することにより、NFSサーバーからリストアが行われる(右)(クリックで拡大) |
ReaRのようなNFSサーバーを使ったリカバリーツールのメリットとしては、
- バックアップ対象サーバーのバックアップ容量が巨大な場合でも、NFSサーバーに圧縮してアーカイブ保管できる
- バックアップ対象サーバーが複数ある場合でも、それらの複数のバックアップ・アーカイブをNFSサーバーで一元的に管理できる
- OSのインストールメディアがなくても、リカバリ用のブートCDによって容易にリストアできる
といった点が挙げられます。ただし、ネットワーク経由でのリカバリ運用で注意すべき点は、リカバリ用のブートCDが、リカバリ対象となるサーバーのRAIDコントローラ配下の論理ボリュームとNICを正常に認識できる必要があるということです。Mondo Rescue、mkcdrecと同様に、ReaRにおいても必ずリストア試験を行い、正常に元に戻ることを確認してください。
以上が、オープンソースを使ったバックアップ、P2Vの基本的な手法です。オープンソースのバックアップ・ソフトは、システムが小規模で、あまりコストをかけたくない場合に威力を発揮します。
しかし、中大規模なSAN環境などでは、さまざまなバックアップ要件を満たす必要があるため、商用のバックアップ・ソフトが一般的であり、オープンソースが一般的になっているとは到底言えません。企業システムにおいては、データの保全性が低下することは命取りだからです。
バックアップは負担になりがちですが、絶対に必要なジョブです。オープンソースのバックアップ・ソフトが自社のシステムに合うかどうかをを考慮しつつ、データを失わないようにするためにどのようなバックアップ・システムを構築すればよいのかをよく考える必要があります。
オープンソースで対処できる部分と対処が難しい部分を洗い出しつつ、仮想化環境を得意とする商用ソフトとオープンソースをうまく使い分けるには、製品の調査が必要になります。ある程度実績のあるソフトを選択するというのも1つの考えです。オープンソースと既存のバックアップ・スクリプトを組み合わせて新しいシステムに適用するやり方もあります。
まとめ
本連載では、オープンソースの監視ソフト、GUIツールの導入、KVM仮想化環境の管理、バックアップ手法、P2Vのノウハウを解説しました。Linuxシステムの運用管理に関する問題点をいかにオープンソースとベンダー提供の製品で解決できるかを、簡単に述べました。オープンソースとベンダー製品の組み合わせや、それぞれの適用範囲を検討してみてください。