Icehouseで追加されたコンポーネント群とは
前回は、OpenStackのこれまでの開発の流れと、OpenStackを構成する各種コンポーネントについて紹介しました。OpenStackはそれらのコンポーネントの組み合わせによって、IaaS環境を構築できるオープンソースソフトウェアです。
今回は、2014年4月にリリースされた最新版Icehouseで新たに追加されたコンポーネントを紹介します。これらの新コンポーネントは、現在Incubation(育成中)のステータスにあり、今後開発が進められる事で正式なコンポーネントとしてOpenStackに組み込まれることになります。
Ironic(OpenStack Bare Metal Provisioning)
Ironicは、OpenStackのインスタンスとして、仮想マシンではなく物理マシンを扱えるようにするコンポーネントです。物理マシンで直接OSなどを動かす事を「ベアメタル(Bare Metal)」と呼ぶため、「『ベアメタルプロビジョニング』を実現するコンポーネント」と説明されることもあります。
仮想マシンは物理マシンと比較して、どうしても性能上不利になる事があるため、より高性能な環境を構築したい場合、ベアメタルプロビジョニングが必要となります。
[Ironic]https://wiki.openstack.org/wiki/Ironic
ベアメタルの機能は、従来はNovaに含まれていましたが、IcehouseからはIronicとして分離されました。このように、OpenStackでは機能がコンポーネントとして分離される事はあまり珍しくはありません。たとえば以前にも、ネットワークがnova-networkからNeutronに分離されています。
Ironicの基本的な動作は、まずPXEブートで物理サーバーを起動してOSやアプリケーションなどの情報をハードディスクに書き込み、再起動することで物理マシンがベアメタルで動き出す、という仕組みになっています。
最近では、ARMのような低消費電力のCPUを採用したサーバーを大量に並べたり、大型の筐体に大量にCPUやメモリ、HDDなどを格納した「高集約型サーバー」が利用されるケースも出てきています。
Ironicは、このようなサーバーをOpenStackを用いて効率良く管理する事を目指して開発が進められていくようです。物理マシンと仮想マシンの混在はもちろん、今後は様々な種類の物理マシンを混在させることもできるようになるようです。
ちなみに、Ironicのベースになっているnova-baremetalの機能は、筆者の会社も開発に関与していますが、現在は色々な会社の技術者が開発に携わっています。こういうところもオープンソースらしいですね。
TripleO(OpenStack on OpenStack)
TripleOは、OpenStackが動作する環境をOpenStack自身で構築できるようにするコンポーネントです。たとえば仮想マシンの数を増やしたいがハードウェアリソースが足りない際には、OpenStackの機能を使ってコンピュートノード(Nova Compute)をインストール、設定し、リソースを増やせるようになります。
[TripleO]https://wiki.openstack.org/wiki/TripleO
TripleOは、Novaだけでなく、ネットワーク部分はNeutron、物理マシンをセットアップする部分はIronic、その他の設定を自動化する部分にHeatを使うなど、OpenStackの既存コンポーネントと協調して動作するようになっています。
OpenStack環境の構築は、ChefやPuppetを使って自動化したり、CanonicalのJuju/MaaSのようなツールを使って構築する事もできますが、TripleOはOpenStackの標準コンポーネントとして運用サイクル内でのリソース管理を提供する事になります。
また、今後、リソース管理を行うコンポーネントとして開発が進められているTuskarによって機能を拡張していく計画のようです。
[TripleO 目次]https://wiki.openstack.org/wiki/TripleO/Tuskar
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