OpenStackの最新安定版Junoでデータプロセッシングが正式コンポーネントに採用

2014年11月4日(火)
鈴木 教之(Think IT編集部)

10月27日に開催された日本OpenStackユーザ会 第19回勉強会でNECの吉山氏が登壇し、OpenStackの最新安定版であるJunoのアップデートの内容について解説した(写真はオープンソースカンファレンス2014 Tokyo/Fallでの講演時のもの)。

「Juno」はOpenStackプロジェクトの10番目の安定版となる。当初3ヶ月に1回のリリースだったが今は半年に1回に変更されている。リリース名はアルファベット順になっており、OpenStack最大のイベントであるOpenStack Summitの開催地の近くの地名になることが多いそうだ。

Junoアップデートでは、340個以上の修正が実施された(30個の育成プロジェクト含む)。最大の変更点は、データプロセッシング機能を提供する「Sahara」が正式コンポーネントとして迎えられた点にある。これで正式コンポーネントは10個から11個に増えている。次の図はJunoリリースにおける開発貢献度(ここではレビュー数)をグラフ化したものだ。HP、Red Hat、Mirantisの順となっているが、正式コンポーネントや育成コンポーネント別に見ていくと順位に変動があり、各社の色が出ていて面白い。

出典:Stackalytics

今回新たに追加されたSaharaは、ビッグデータ処理などHadoop as a Serviceとも言える機能を担うことになる(厳密にはHadoopだけではなくApache Sparkなど別の処理系も含む)。

なお、現在育成プロジェクトであるベアメタル機能のIronicだが、次回のKiloリリースで正式コンポーネントに追加されることが発表された。また、新たに3つの育成コンポーネントも進められている。

ここからは正式コンポーネントの開発ポイントについて掻い摘んで紹介する。各コンポーネントの相関関係は以下の図が参考になるだろう。

Dashboard機能「Horizon」:Saharaのサポートが追加され、メニューに「データ処理」というタブが増えている。またNeutronでは分散仮想ルーター機能が追加された。

Object Storage機能「Swift」:すでに安定している。今後はErasure Codingに対応していく予定。標準ではミラーリングをしている(オリジナル1ヶ所、レプリケーション2ヶ所)ため、総容量の3分の1しか使えない。RAIDのデータ冗長化のように、保存できるデータ量を大きくするための実装が進められている。

Compute機能「Nova」: 育成プロジェクトのIronic(ベアメタル)のためのドライバが追加された(もともとNova内に物理サーバーを扱う機能があったが、それがIronicとして分離された経緯がある)。また、Conductorの機能が増加しVMの作成などがSchedulerからConductorが扱うように変更されている。対応ハイパーバイザーでは、VMware ESXが廃止されvCenterに変更されている。

Image Service機能「Glance」: VMイメージに付与できるメタデータのカタログが定義された。柔軟性を確保しつつ独自ルールも定義できるようになった。

Networking機能「Neutron」: Open vSwitchで分散仮想ルーターが実装された、従来のゲートウェイ経由だったものをVMホスト間の通信を直通できることに。L3エージェントの冗長化構成が追加された。

Block Storage機能「Cinder」: 基本機能は大きく追加されることはなさそうだが、複数ボリュームの同時スナップショット、バックアップなどに対応。ストレージバックエンドのレプリケーションに対応したことなどが注目点である。

Identity機能「Keystone」:Keystone間での連携ができるようになった。

Telemetry機能「Celiometer」:複数の計測値に基づいた新しいしきい値の計測が可能に、負荷が高い機能毎に別のデータベースを選択しボトルネックを排除できるように。

Orchestration機能「Heat」: AWSのCancelUpdateStackと同等の機能が追加された。デプロイ失敗した状態からリトライできるようになる。

Database Service機能「Trove」: Neutronに対応、MongoDBのクラスタリングやMySQLのDBレプリケーションに対応。PostgressSQLのドライバが新たに対応されたのは日本ユーザーには朗報かもしれない。

Data Processing機能「Sahara」: 旧名サバンナからサハラへ。HadoopだけではなくApache Sparkなどに対応しプラットフォームが拡張されている。Apache Hadoop, Apache Spark, Cloudera Distribution, Hortonworks Platformなど。Intel Hadoopはプロジェクト終了とに伴い廃止されている。

吉山氏のスライドは以下URLで公開されている。
http://www.slideshare.net/yosshy/openstack-juno

著者
鈴木 教之(Think IT編集部)
株式会社インプレス Think IT編集グループ 編集長

Think ITの編集長兼JapanContainerDaysオーガナイザー。2007年に新卒第一期としてインプレスグループに入社して以来、調査報告書や(紙|電子)書籍、Webなどさまざまなメディアに編集者として携わる。Think ITの企画や編集、サイト運営に取り組みながらimpress top gearシリーズなどのプログラミング書も手がけている。

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