OpenStack、Docker、Hadoop、SDN、.NET…、2014年のOSS動向をまとめて振り返る

2014年12月26日(金)
吉田 行男

こんにちは、日立ソリューションズの吉田です。

盛り上がったクリスマスも終わり、あとは年末の大掃除を残すのみとなってきました。そろそろ各所で今年の総まとめが始まっています。この週刊OSSウォッチでも、今年のOSSの動きを総括したいと思いますので、最後までお付き合いいただけければと思います。

OpenStack

  • 【04/21】オープンソースのクラウド基盤「OpenStack Icehouse」がリリース、Novaがローリングアップデート対応(参照記事
  • 【10/17】「OpenStack」の新バージョン「Juno」がリリース--Hadoopでビッグデータ処理が可能に(参照記事

昨年から引き続いて、OpenStackの話題で今年も盛り上がりました。

4月には、9番目のリリースである「Icehouse」が公開されました。「Icehouse」では、「Database as a Service」を実現するためのコンポーネントである「Trove」が正式なコンポーネントに追加されました。これにより、IaaS機能を実現するためだけであった、OpenStackがより上位のサービスをカバーするようになったと言えると思います。

また、10月には10番目のリリースである「Juno」が公開されました。「Juno」の最大の特長は、ネットワークの仮想化(Network Function Virtualization, NFV)が初めてサポートされたことで、このNFVによって、高価なハードウェアからコモディティサーバにネットワーキングサービスを移行できました。また、エンタープライズ向けの機能として、データ処理サービス「OpenStack Data Processing」(Sahara)が正式に導入されました。この機能を使用することで、Apache HadoopやインメモリフレームワークのApache Sparkを利用したビッグデータクラスタの配備や管理を自動化することができます。

一方、商用利用という観点でOpenStackを見るとRedHat社からディストリビューションがリリースされたことも今年の大きなトピックスであったように思います。今までは、UbuntuやSUSEからしかリリースされていなかったので、これでほとんどすべてのLinuxディストリビューションからでたことで今年は『OpenStackディストリビューション元年』と言えるかもしれません。

Docker&CoreOS

  • 【01/29】米Black Duckが恒例の「オープンソースルーキー」を発表、Docker、OpenDaylight、Serverspecなどが入選(参照記事
  • 【04/24】「AWS Elastic Beanstalk」でDockerコンテナの作成、管理が可能に(参照記事
  • 【05/14】レッドハット、コンテナ仮想化「Docker」やストレージ「Ceph」に注力(参照記事
  • 【10/16】MS、Dockerと提携、次期 Windows Server に採用へ(参照記事

1月に過去1年に立ち上がったオープンソースプロジェクトの中から優れたもの10種を選ぶ「BlackDuck Open Source Rookies of the Year」に選ばれたDockerでしたが、その後の活躍は目を見張るものがありました。「Docker」は、OSの上にコンテナと呼ばれる分離したユーザー空間を作り出すことで、軽量で効率よく複数の仮想サーバを実現するコンテナ型の仮想化ソフトウェアです。

現在では、RedHatやCannonicalといったLinux関連の大手企業からのみ支持を集めているわけではなく、MicrosoftやIBMなど次々に提携を発表するなど、ますます広がりを見せています。また、AWSやGoogleといったクラウド関連企業もDockerコンテナの作成や管理ができるようになっており、ますます広がりを見せています。

  • 【08/14】Docker管理を容易に、オープンソースの管理ツール「Panamax」が登場(参照記事
  • 【08/15】ZFSベースのDockerコンテナ管理ツール「Flocker」(参照記事

「Docker」関連で注目されているツールを紹介すると、最初は「Panamax」です。「Panamax」は、コンテナを使ってクラウドインフラストラクチャを構築するツールで、Dockerコンテナの構築や設定とベストプラクティスを組み合わせることで、このプロセスを不要とすることができます。

次は、「Flocker」はZFSベースのデータボリューム管理機能とマルチホストに対応したDockerクラスタ管理機能を備えるツールで、データベースやキュー、key-valueストアをDockerを使って動作させ、さらにそれらを異なるマシン上に容易に移動させることが可能になります。

  • 【06/13】正式版「Docker 1.0」がリリース――Microsoft AzureもDocker利用を支援(参照記事
  • 【12/03】CoreOSが「Docker」と決別--独自のコンテナ実装「Rocket」を公開(参照記事

一方、Dockerコンテナ型仮想化に特化した「CoreOS」の安定版が7月にリリースされました。対応するクラウド環境は、「Amazon EC2」「Rackspace Cloud」「Google Compute Engine」など10種類以上をうたっている。10月には、「Microsoft Azure」でDocker専用LinuxのCoreOSサポートをMicrosoftが発表するなど、「Docker」同様、こちらも広がりを見せています。

ところが、12月に入って突然、「Docker」はクラウドサーバ構築用のツールやクラスタリングのためのシステムとなって幅広い機能を持つようになったことで、当初のシンプルで組み立て可能なコンポーネントではなくなったとして独自の「Rocket」というコンテナランタイムを公開しました。「Docker」と「CoreOS」の行方には目が離せません。

2000年頃からメーカー系SIerにて、Linux/OSSのビジネス推進、技術検証を実施、OSS全般の活用を目指したビジネスの立ち上げに従事。また、社内のみならず、講演執筆活動を社外でも積極的にOSSの普及活動を実施してきた。2019年より独立し、オープンソースの活用支援やコンプライアンス管理の社内フローの構築支援を実施している。

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