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クラウド時代の始まり

2009年9月9日(水)
丸山 不二夫

エンタープライズ・クラウドの独立 - Microsoft Azureの登場

 クラウド概念が成立すると、エンドユーザーにではなくサービス提供者にサービスを提供するというエンタープライズ・クラウドのビジネスの可能性に注目して、この市場に新しく参入しようという動きが生まれてきます。Googleは、自らのインターネット・クラウドのリソースを転用して、サービス提供者向けにクラウド上でWebアプリケーションの構築を可能とするGoogle App Engineを公開します。

 エンタープライズ・クラウドの新しい画期をなすのは、MicrosoftのクラウドWindows Azureが登場する2008年のことです。Microsoftは、多くのインターネット・クラウド・サービスを展開していたのですが、彼らのクラウドは、これらから派生したものではありません。彼らは、先行したGoogle、Amazonらのシステムを研究し、巨額の投資をしてスクラッチから巨大なクラウド・データセンターの建設に着手しました。

 Azureの特徴は、自らを「クラウドOS」と名付けていることに、よく表れています。もちろん、先行したGoogleにも、そのようなリソース管理の機能が備わっているでしょうし、先に見たAmazonのシステムでは、まさに、そうした機能がAmazon側から見てシステムの心臓部分であることは明らかです。

 ただ、Googleの場合は、具体的なサービスのAPIは公開しますが、その背後にあるリソース管理のメカニズムやインターフェースは、今日に至っても、まだ、まったく公開されていません。

 Amazonの場合には、基本的には、データセンターのホスティングのメタファーに基づいていて、彼らのクラウドからサーバーを借り出す時に、そのメカニズムが背後で発動するだけで、利用者がそれを意識的にコントロールすることはできません。Azureに至って初めて、クラウドOSの機能を利用して、クラウド上のリソースを組み合わせて、ユーザーが望むシステムを構築することが可能になりました。

 Googleらのインターネット・クラウドのサービス提供のスタイルを見て、クラウドはエンド・ユーザー向けで、エンタープライズでは使えないと考えている人もまだ多いように思います。ただAzureは、クラウドのエンタープライズ利用に強くフォーカスして作られたシステムです。

 データセンター内の自社のシステムで可能なことは、エンタープライズ・クラウドの上でも可能なはずです。Azureの取り組みを通じて、クラウドに限らない情報システムの一般的な特性について、理論的なレベルで興味深い考察がなされています。それらについては、別の機会で詳しく述べたいと思います。

 Azureでは、すべてのシステムをクラウド上に構築できるのはもちろんのことですが、クラウドとOn-Premiseのシステムの境界を自由に変えることができます。非常に自然に、クラウドと在来のシステムの混合したシステムを構成できます。また、そのこととも関係するのですが、クラウド上のサービスの開発に、これまでの開発者のスキルが、そのまま利用できるようになっています。こうした特徴は、クラウドの利用・移行にとっては大事なポイントになります。

おわりに

 以上が、筆者の考えるクラウドの創世記の主要な出来事です。

 意外に思われるかもしれませんが、クラウドの時代は、まだ本格的には始まっていません。メディアを見ると、たくさんのクラウドの提案があるように思うかもしれませんが、実際にビジネスでクラウドを利用しようにも、商用ベースで利用できるサービスは、Amazon EC2/S3、Salesforceなど、まだ数えるほどしかありません。それらの利用者も増加はしていますが、まだまだ少数の利用にとどまっています。Google App EngineやAzureの商用サービスに値段が付いたのは、ごく最近のことです。

 エンタープライズ・クラウドの利用は今年の後半に始まり、本格的な導入が始まるのは来年からになると筆者は考えています。さまざまなクラウド提案をよく見比べて、自分のビジネスにどのようなメリットとリスクがあるのかを考えるいい機会だと思っています。

 次回は、クラウドの技術的な特徴をもう少し詳しく紹介したいと思います。

昨年まで、20年間、北海道稚内に在住。元稚内北星学園大学学長。現在は、活動の拠点を東京に移して、様々のコミュニティ活動に参加している。早稲田大学客員教授。Cloud研究会代表。

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