そもそもWindows Azureとは
Japan Windows Azure User Groupの発足
Windows Azureは2010年1月に日本での商用サービスを開始した。以後、Microsoft Tech・Days 2010、Microsoft Tech·Ed Japan 2010と、マイクロソフトのイベントのメインテーマとして盛大に取り上げられた。使用事例が増え、検討するユーザーが多くなるにつれ、Windows Azureのユーザーグループの結成を求める声が強くなっていった。
そこで、Widows Azureに積極的に関わっていたメンバーがマイクロソフトの支援の元、Windows Azureのユーザーコミュニティグループ、Japan Windows Azure User Group(JAZ)の結成準備を行った。Microsoft Tech·Ed Japan 2010の2日目、2010年8月26日には、横浜ぷかり桟橋を出港する船上で、JAZの発足イベントが開催された。(参考:マイクロソフト エバンジェリスト砂金氏Blog)。
発足イベントで発表されたJapan Windows Azure User Groupの基本情報は以下のとおり。
略称 | JAZ |
公式サイト | http://jazug.jp/ |
メンバー募集サイト | http://jazug.groups.live.com/ |
Twitterハッシュタグ | #jazug |
JAZは、ちょっと興味がある=ゆるふわな方から、実ビジネスで使うんだよねという方まで歓迎する、ゆるふわなコミュニティであると発表された。発足イベントでは、3つの部屋で30近くのライトニングトークが実施された。ライトニングトークで使用された資料は、JAZUG Launch Cruisingにて順次公開される予定である。
オフラインでの勉強会を計画する動きがあったり、産学連携を模索する動きがあったりと活発にアイディアが交わされている。興味がある場合は、Twitterのハッシュタグを見つつ、会員登録することをお勧めする。
マイクロソフトがクラウドに取り組む意味
JAZが結成され、ますます盛り上がりを見せているWindows Azureは、マイクロソフトのクラウドサービスである。正確に表現するなら、Windows Azureは、マイクロソフトが提供するPaaS型のクラウドサービスである。
マイクロソフトは、Windows、Windows Server、Office、SQL Serverなどで知られるソフトウエア業界の覇者であり、ソフトウエアの売り切り型ビジネスを展開してきた会社である。クラウドサービスは、ソフトウエア売り切り型ビジネスに相反する側面があり、クラウドへ積極的に取り込まないのでは無いかと懐疑的に見られる原因となっている。
マイクロソフトCEOのスティーブ・バルマーは、2010年3月ワシントン大学での講演でクラウドを重要施策としていることを示した。1年以内に社員の90%がクラウドに関わると表明したのだ。マイクロソフトのクラウドへの傾倒を強く表明したと言える。(参考:Steve Ballmer: Cloud Computing)
マイクロソフトがクラウドに傾倒する理由として考えられるのが、将来を見据えた成長戦略にある。マイクロソフトが提供する製品は、バージョンアップを重ねる度に機能追加や改善を行ってきた。バージョンアップを重ねることで、画期的な進化の余地は少なくなっている。マイクロソフトが製品の新バージョンを発売したとき、最大の競合となるのが、自社製品の旧バージョンである。旧バージョンで充分に満足している顧客に新バージョンへの購買意欲をわかせるのは難しい。
例えば、Windows 7の次期バージョンの最大の競合は、Mac OSやLinux OSのUbuntuでは無く、Windows 7である。
ソフトウエア売り切り型ビジネスでは、買い替えが進まなければ、売り上げが伸びない。売り上げるために魅力的な製品を作成すると、次の製品の時にハードルが上がるというジレンマが待ち受ける。このような状況下では、毎月課金が発生するクラウドサービスを推進することがマイクロソフトの安定収入へとつながる。
以上のように考えると、マイクロソフトがクラウドを推進することにも納得できるかと思う。
SIerがクラウドに取り組む意味
SIerなどのITベンダーがクラウドを利用するメリットは、アプリケーションのリプレースタイミングに関係がある。通常、アプリケーションのリプレースを行うタイミングは3通りある。
- ハードウエアの保守期限切れ
- OSやランタイムのサポート期限切れ
- アプリケーションへの不満&業務フローの見直し
クラウドで提供されるアプリケーションの場合、リプレースタイミングの1つ目と2つ目が無くなる可能性が高い。1つ目は、Windows Azureの中の話であり、クラウドベンダーが対応するものである。SIerにもエンドユーザーにも関係が無い話となる。2つ目も、管理をするのはマイクロソフトなのでエンドユーザーに関係が無くなる。(Windows Azureのサポートライフサイクルについて言及された資料は無いが、下位互換を維持しつづけることで対応し続けると考えられる。)リプレイスタイミングとして残るのは、3番目のみとなる。
顧客のアプリケーションがクラウドに移行した場合、アプリケーションを提供しているベンダーによる長期での囲い込みが可能になり、囲い込まれてしまう。ほとんどのアプリケーションは、クラウドに移行しうる為、顧客を囲い込まれてしまわないように、囲い込む必要ができ、結局SIerとしては無視することはできない。
クラウドでの提供が適さないと言われるアプリケーションは、
- 高度なデータ整合性が要求される
- 高パフォーマンスを求められる
- 高可用性(年間稼働率99.99%以上)を求められる
- 法令で規制されている
などの特殊な条件があるものである。それ以外のアプリケーションはクラウドへの移行を検討する余地がある。