間違いだらけの製品選び
ビジネス・インテリジェンスを構成する要素(1)
前回は、昨今の製品動向として、米Netezza製品を引き合いに、DWHアプライアンスを解説しました。今回は、ビジネス・インテリジェンス(以下、BI)を構成する製品の選定を通じ、間違った製品を選ばないためのコツを解説します。
読者の皆さんはBIに関してよく知っていると思いますが、製品選びについて解説する前に、再度簡単におさらいしておきます。
BIは、2000年代に入って登場したキーワードです。それ以前は、データ・ウエアハウス(以下、DWH)というキーワードがよく使われていました。大量の企業内データを格納して分析するという意味では、BIとDWHに大差はありませんが、考え方で異なる部分があります。
BIには、「ごく一部の情報分析の専門家だけが使うのではなく、一般の経営者や社員が各自で情報を分析することで、意思決定スピードを飛躍的に向上させる」という考え方が含まれています。それが大きく異なる部分です。
BIを広い意味でとらえると、それを構成する要素としては、DWHやOLAP(OnLine Analytical Processing)ツールなど、さまざまなものが存在します。以下では、DWH内のデータを利用して分析を行う「ツール」に焦点をあてて解説します。
分析ツールにも、さまざまなものが存在しており、企業内の役割に応じて使い分けるのが一般的です。経営者やマネージメント層には、経営コックピットやダッシュボードと呼ばれる経営指標管理を行うためのツールを用い、各KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)の状況を簡単に見渡せるようになっています。
ただし、日本の場合、BSC(Balanced ScoreCard)を利用した経営管理は欧米ほど定着しておらず、財務指標を用いた経営管理が主流です。このため、経営者は定型帳票と呼ばれるツールを利用し、単純にその指標の結果だけを確認するケースが多く見受けられます。経営ダッシュボードを使うケースでも、どちらかと言えば各財務指標を一見して分かりやすくする工夫の1つとして利用しています。
ビジネス・インテリジェンスを構成する要素(2)
OLAPツールは、マーケティングから営業企画まで幅広い用途で利用されています。このツールは、スライス&ダイスやドリルダウンなどの機能を用い、仮説立案後の結果検証にも用いられます。コンピュータ・リテラシの高い経営者やマネージメント層の方の中には、非定型分析を行う目的でOLAPツールを使う方もいます。
営業部門やスタッフ部門など、最も多くのユーザーが利用しているツールが定型帳票です。売上分析レポートや顧客分析レポートなど、日常の意思決定で必要になる情報が、それを通じて提供されます。また、日本特有の複雑な罫線(けい線)にも対応できます。OLAPツールを利用して仮説検証した結果、それが有用であると判断された場合、その分析が定型帳票化されるケースもあります。
分析にはさまざまなものがありますが、高度化のステップとして、最も簡単なレポーティング(定型帳票)から、非定型分析(OLAP)、統計解析、データ・マイニングという順番で難易度が上がると言われています。このうち、統計解析やデータ・マイニングなどに関しては、また別の機会に解説いたします。
今回は、BIを構成する製品の選定を行う場合に、どのような部分に気を付ければよいかを解説します。次ぺージから、実際にいくつかのユーザー事例を紹介しながら、製品選びの課題と解決方法を示します。