ソラコムが新しいIoT向けサービスInventoryとJunctionを発表

2017年8月4日(金)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
ソラコムが新しいサービスのInventoryとJunctionを発表した。さらに京セラとの連携により、LPWAの一つであるSigfoxへの対応も実現した。

IoT向けのクラウドネットワークプラットフォームを提供するソラコムが、2017年7月5日に行われたカンファレンスで2つの新しいサービスを発表した。デバイス管理サービスの「SORACOM Inventory」とクラウド側のゲートウェイを通過するパケットに対して処理を追加する「SORACOM Junction」だ。他にも京セラコミュニケーションシステムと組んでLPWA(Low Power Wide Area)のひとつであるSigfoxへの対応なども発表された。さらに、LoRaWAN対応デバイスの新機種やLoRaWANゲートウェイの新機種も同時に発表した。

ソラコムの代表取締役社長、玉川憲氏によるキーノートセッションではこれまでのソラコムの歩みを振り返りながら、グローバル展開、LPWAのLoRaWANの対応、AWSだけではなくAzureやGoogle Cloud Platformへの対応など最近のトピックに触れながら、ソラコムの目指すプラットフォームの姿を解説した。

プレゼンテーションを行うソラコムの玉川氏

プレゼンテーションを行うソラコムの玉川氏

ソラコムにとってのゴールは「あくまでもプラットフォーム」であり、「あらゆる無線とクラウドをつなぐ」ことだと言う。そういう意味では、LoRaWANにもSigfoxに対応するのも当たり前だろう。

無線とクラウドのベンダーに「拘らない」ソラコム

無線とクラウドのベンダーに「拘らない」ソラコム

今回発表されたInventoryとJunctionも、ユーザーからのニーズを元に製品化されたという。またSORACOM Funnelで実装されるパートナー各社のクラウドサービスへの接続を可能にするPartner Hosted Adaptorも新たに2社の実装が発表された。インフォテリアの「Platio」とブレインズテクノロジーの「Impulse」だ。AWS/Azure/GCP以外のサービスへの連携を可能にするアダプターの開発が、ソラコム以外のパートナーによって拡大することでバックエンドのサービスとの連携がより簡単になるという。エコシステムを拡大して顧客に選択の自由を与えるという方針だろう。

SORACOM InventoryはIoTデバイスの管理を行うソフトウェアで、ソラコムが管理するサーバーとデバイスにインストールするエージェントから構成されるため、顧客側は利用するデバイスにエージェントを入れるだけで状態の管理、再起動などが可能になる。

SORACOM Inventoryの概要

SORACOM Inventoryの概要

SORACOM Junctionはソラコムが運用するクラウド側のVirtual Private Gateway上を通過するIoTデバイスからのパケットに対して、インスペクション、ミラーリング、リダイレクションの3つの機能を提供するものだ。インスペクションはパケットの解析、ミラーリングはパケットをコピーし任意のサーバーに転送する機能だ。

リダイレクションはパケットの経路を変更し、別サーバー内でパケットのトラフィックを制御したり、特定のアプリケーションのパケットのみ通過させたりすることができる。これらの機能も、ユースケースとして多くの事例を経験してきたことから把握できたニーズを元に開発されたということだ。ただ、全てが連携するパブリッククラウド側での処理となるため、エッジ側での制御ではないことに留意したい。CeBITでソラコムとPreferred Networksがデモを行ったGPUを使ったエッジサイドでの処理ではなく、あくまでもIoTデバイスからのパケットをクラウドまで持ってきて処理を行うというものだ。質疑応答の際に、エッジでのパケット処理などのニーズについて質問された玉川氏は、「市場動向などを見ながら検討したい」とコメントし、ここでもニュートラルな姿勢を崩さずに市場ニーズに対応するという姿勢が伺えた。

CeBITで行われたソラコムとPFNによるデモ

またキーノートセッションに登壇した京セラコミュニケーションシステム、代表取締役社長の黒瀬善仁氏は、Sigfoxの利点などを紹介。ここでは遠距離にあるデバイスからの通信が可能になる点などを訴求した。

Sigfoxの遠隔地通信の説明

Sigfoxの遠隔地通信の説明

またデバイスからのデータ送信だけではなくデバイスに向けたデータ送信、つまり下りの通信についても制度改正が実施されれば可能になるとし、現状で下りの通信が提供されていないのは技術的な問題ではないことを強調した。

Sigfoxの下りサービスの概要

Sigfoxの下りサービスの概要

最後にはパネルディスカッションとしてパナソニック、みずほフィナンシャルグループ、ローソンの役員などが登壇。ここでは各社のIoTの取り組みの紹介とソラコムの顧客として日本を代表する大企業が名前を並べていることを充分に訴求したように思える。すでに事例も7000社を超え、1年で倍増以上の成長を見せるソラコムにとっては、この上ない援護射撃といったところだろう。

パネルディスカッションに参加したソラコム玉川氏ら

パネルディスカッションに参加したソラコム玉川氏ら

今回の「Discovery 2017」は約3000人の申し込みがあったという。実際、キーノートセッションの会場は満員だし、パートナーによる展示ブースも人で溢れていた。IT関係のカンファレンスの中でも、参加者の興味の高さとビジネスの盛り上がりを実感できるカンファレンスであった。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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