NoSQLデータベースのMongoDB、日本への展開は慎重な姿勢
非構造化データを扱うスキーマレスデータベースのMongoDBが、年次カンファレンスMongoDB World 2017をシカゴで開催した。今回は2日目のキーノートセッション、そしてMongoDBのパートナー事業のトップであるAlan Chhabra氏へのインタビューをお届けする。
MongoDB World 2017の2日目のキーノートセッションは、MongoDBのパートナーの紹介とアワードの表彰で始まった。
最初に登壇したInvisionのCTO、Bjorn Freeman-Benson氏はデモのスタッフを2名登壇させ、デスクトップでプレゼンテーションの内容をフリーハンドでメモをとらせながらトークを進め、Invisionが進めるコラボレーションとプロトタイピングのためのプラットフォームを訴求した。
次は、MongoDBが設定した様々なゴールを達成したパートナーを表彰するInnovation Awardだ。Cisco、HSBC、Pivotalなどが表彰された。Ciscoはエンタープライズ向けのコマースプラットフォームをMongoDBに移行した点が、HSBCもリレーショナルデータベースからのMongoDBへ移行した点が、そしてPivotalはCloud Foundryからのサービスブローカー経由でMongoDBが利用できる点などが評価されたようだ。最終的にパートナー・オブ・ザ・イヤーを取ったのはインドのシステムインテグレーターであるInfosysだった。
ここまではMongoDBにとってのパートナーを持ち上げるという演出で、若干注意力が途切れがちになったことは否定しないが、その後に登壇したMongoDBのLead Software EngineerのJustin Moses氏は、Node.jsを使ってピアノなどの楽器を再生するというデモを実施。このデモとMongoDBがどう関連するのかと言えば、生成された配列をMongoDBに保存できるということなのだろうが、エンタープライズ向けには少し不可思議なデモであったことは否めない。Moses氏が主に開発を行っているオープンソースソフトウェアということだろう。
そして次はゲスト講演という形式で、ゲームデベロッパーのJane McGonigal氏が登壇。McGonigal氏は一昨年、大きなヒットとなった「スタンフォードの自分を変える教室」という著書で日本でも有名になった心理学者のKelly McGonigal氏の双子の姉妹で、ゲームデザイナーであるという。 McGonigal氏は、ゲームが脳に与えるポジティブな効果について講演を行った。
また非定型データのMongoDBというのを意識してか、デームをプレイすることでより多くのデータが収集され、活用されることを強調。単に時間を無駄に潰すためのものと思われていたゲームが、脳にとっては活性化のための大きな役割を担っていると解説し、ゲームとそのエコシステムが人間に役立っていることを解説した。
ここまででキーノートセッションは終了したが、MongoDBという製品とはあまり関わり合いのないコンテンツが多かったように思われる。しかしその他のブレークアウトセッションはどれも満員で、参加者の興味は他のカンファレンスに比べても非常に高かったように思える。これはNoSQLという狭い領域に情報が集約されていること、モニタリングやRDBからの移行などITプロフェッショナルにとっては重要なポイントを押さえていたからではないだろうか。
MongoDBの責任者に訊く日本でのビジネス展開
ここからは、別途インタビューを行ったAlan Chhabra氏との対話をお届けする。Chhabra氏はMongoDBの中でパートナー及び間接販売の責任者という役割を担っている。
自己紹介をお願いします。
私はMongoDBの中でパートナーに関わる全てのビジネスの責任者です。MongoDBの売り上げのうち、40%はシステムインテグレーターやコンサルティング会社、ISVなどのパートナーやOEMからのものになりますが、それを統括しています。これからその40%をもっと伸ばしていくのが私の使命になります。MongoDBは、レッドハットなどのオープンソースソフトウェアとは違い、我々自身がMongoDBを開発しています。それをコミュニティ版などとしてフォークさせて複数持つのではなく、コードはそのままにツールなどを追加したものを別のライセンスとして提供することで売り上げをあげています。MongoDB自身は2500万回以上もダウンロードされており、多くのデベロッパーがMongoDBを使って開発を行っています。パッチや機能追加などについては、外部のデベロッパーが貢献を行うことは可能です。ただしソフトウェア自身については健全なコントロールを行っているといえるでしょう。
MongoDB Stitchについて、パートナーの反応はどうですか?
パートナーや、特にシステムインテグレーターはお客様のシステムをモダナイズするというゴールを持っています。そのために非構造化されたデータをMongoDBに格納するというのは、至極まっとうな選択です。ただし、システムにとってはLDAPの認証であるとか、他のシステムとの連携が求められるといったことがよく起こります。そのために、MongoDB Stitchは最適なプラットフォームと言えるでしょう。実際にこのイベントが始まる前日にパートナーだけのミーティングを開いてMongoDB Stitchについて情報を開示しましたが、反響はとても良かったのです。スタートアップにとっても、彼らのサービスと連携できる可能性が拡がったということで大変歓迎されています。もちろんMongoDB Stitchを使わないという選択も可能ですので、必ずしもこれを押し付けるつもりはありません。
あなたはパートナービジネスの責任者ということですが、日本市場についてのプランは?
我々は日本市場を重要だと思っていますが、まずはパートナーを通してMongoDBのビジネスを拡げることを最優先しています。サポートについても同様に、パートナーにお願いしようと思っています。もう少し時間が経ってパートナーが増えてきた段階で、我々の人員を現地において法人を立ち上げるということになると思いますが、まだ少し時期が早いと思います。我々が直接手がけているわけではありませんが、AdobeやSitecoreの製品にはMongoDBがバンドルされていますし、Infosysも日本でアプリケーションのモダナイゼーションのサービスを立ち上げると語っています。他にも多くのシステムインテグレーターやコンサルティングパートナーが日本でのビジネスにMongoDBを使っていますので、着実に日本市場においても成長していると言えると思います。
日本市場でも成長はしているが、日本法人を立ち上げるには時期尚早だと?
はい。ですがすでに楽天トラベルやTOYOTAのように、MongoDBを使ったユースケースも出てきています。TOYOTAの場合は、主にヨーロッパにおいて展開が進んでいると思います。今朝もMongoDBの社内では、次にどのような手を打つべきかについて議論を交わしています。
すでに日本ではマイクロソフトがMongoDBのAPIと互換性のあるDB as a ServiceであるDocumentDBを発表していますが。
今回の発表ではMongoDB AtlasというDB as a ServiceについてAzureやGCPのサポートを発表しましたし、それについては非常に良いフィードバックを貰っています。
会場から思わず拍手が起こりましたね。
その通りです。実際、我々の売り上げのうち、大手顧客からのものが占める割合は2%程度です。エンタープライズだけではなく、非常に多くの企業がMongoDBを使っているというのがわかると思います。そういった状況において、「より持続性のあるビジネスをグローバルに展開する」という課題をクリアしていかないといけないのです。NoSQLを展開する企業が、日本でのビジネスを拡げようとチャレンジしていますが、あまりうまく行ってはいないようです。我々はパートナーと共に持続可能なビジネスモデルを作り上げるように努力しているということです。
MongoDBの日本での展開は、なによりもパートナーを優先するというMongoDBのChhabra氏。MongoDBの可能性については強い口調で語るものの、日本市場に対する見方はまだ慎重なようだ。今回のカンファレンスでは日本からの参加者も少なく、西海岸で開かれるIT系カンファレンスではお馴染みの中国、台湾などからの参加者もそれほど多くなかったように思える。今後のMongoDBによるアジア地域でのテコ入れに期待したい。
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