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「FFXV」に活かされたAIとは?「Pokémon GO」に続くARゲームの登場も間近か…日々進化するゲーム業界のAI・ARに迫る

2017年12月5日(火)
小林 和正

11月21日と22日、GMOインターネット株式会社は都内で「【ゲーム×AI、AR】『ゲームの未来を考える!<AI、VR、AR、e-Sports>~先駆者たちが最先端技術と最新トレンドを語る~ Presented by GMOアプリクラウド』」を開催した。21日はAIとAR、22日はVRとe-Sportsをテーマにセッションが行われた。本稿では第一夜のAIとARのレポートをお届けする。

AI部門 デジタルゲームの中のAI、外のAI

冒頭に登壇したのは、株式会社スクウェア・エニックス リードAIリサーチャーの三宅 陽一郎氏。ゲームの中のAIとして同社のアクションRPG「FINAL FANTASY XV」を題材に、デジタルゲームの人工知能を紹介した。かつてはシステムとAIに明確な線引きはなかったが、ゲームのインテリジェント化が進んで人工知能が独立したという。そして現在では「メタAI」「キャラクターAI」「ナビゲーションAI」の3つに分散して協調する分散人工知能になっている。同氏はそれぞれの役割と仕組みについて説明した。

株式会社スクウェア・エニックス リードAIリサーチャー 三宅 陽一郎氏

メタAIはプレイヤーを楽しませるようにゲームを展開する。例えば、仲間の制御ではプレイヤーのHPが0になった状態では仲間に救出されると戦闘不能を回避できるわけだが、仲間全員に来られてもあまり意味がない。メタAIが誰か1人を救出に向かわせる指示を出すことで、合理的に戦闘を継続できる。

キャラクターの頭脳となり、自律的な判断を行うのがキャラクターAIだ。キャラクターAIの知能アーキテクチャを「エージェント・アーキテクチャ」と言い、環境世界からセンサー(感覚)で取得した情報を記憶および認識して自分を中心にした世界を再構築する。その後、意思決定して運動を構成し、エフェクター(身体)で環境世界に影響を与えるといった流れで動いている。

続いて、エージェント・アーキテクチャで中心となる意思決定モジュールの仕組みを解説した。FINAL FANTASY XVでは主に循環型グラフを構成するステート・ベースのステート・マシンとツリーグラフを構成するビヘイビア・ベースのビヘイビア・ツリーを組み合わせる階層的な入れ子構造を採用している。すなわち、ステート・マシンのノードの1つにビヘイビア・ツリーが入っており、さらにそのビヘイビア・ツリーのノードの1つにステート・マシンが入っているといったものだ。これを同社では「AIグラフ」と呼んでおり、「AIグラフエディター」と呼ばれるオリジナルツールで作成する。

ナビゲーションAIは、名前の通り地形を認識する人工知能だ。キャラクターが通行可能な場所を示すナビゲーション・メッシュを元にA*アルゴリズムで目的地までのパス検索を行い、キャラクター自身が経路を検索する。さらに、キャラクターが動的に戦術を見つける戦術位置検索システムもナビゲーションAIに含まれる。探索したい領域に生成したポイントの中から障害物や敵の周りなど不要なポイントをフィルタリングし、残ったポイントの中から最適なポイント(例えば弓兵なら高い位置にあるポイント)を選択して移動する。

以上のように、最近のゲームではメタAI、キャラクターAI、ナビゲーションAIの3種類の人工知能をうまく融合させることにより、キャラクターに目的を与えるだけで自ら判断し行動できるのだと三宅氏は語った。

続いて、同社AIエンジニアの眞鍋 和子氏が登壇し、ゲームの外のAIについて事例を交えて紹介した。このAIはプレイヤーが知ることのできる情報を入力し、プレイヤーが可能な行動を出力する。最大のメリットはタイトルに特化せず、内容が異なるゲームにも適用できる汎用性の高さだという。

株式会社スクウェア・エニックス AIエンジニア 眞鍋 和子氏

近年は運営型のモバイルゲームが増えており、短期間の開発サイクルでアップデートを繰り返す必要がある。多くのQAテスターが必要になるが、人手で対応するには大変な時間とコストがかかってしまう。そこで、プレイヤーAI(プレイヤーの代わりとなるボット)に自動でプレイさせてコンテンツを攻略させたり、一定時間経過後の状況を観察してQAの効率化を図ったりする。最も重要なのは頻繁な更新に対するアプローチだが、新要素の追加時には自動で再生成できるようになっているそうだ。

眞鍋氏は、スマートフォン向けに展開しているリアルタイムアクションバトルRPG「グリムノーツ」を例にプレイヤーAIの有用性を紹介した。このゲームは4人の主人公にヒーローをそれぞれ2人ずつ計8人セットしたパーティー編成となる。2017年7月26日時点で主人公が8人、ヒーローが数百種類、さらに武器やアクセサリー、強化アイテムなども用意されている。これだけの要素があると膨大な組み合わせになることは想像に容易い。ある特定の組み合わせが意図せずゲームバランスを崩壊させる可能性があるため、プレイヤーAIで調べるというわけだ。

プレイヤーAIは指定されたパーティー編成でシミュレーションバトルを行い、最適な組み合わせを探す。シミュレーションバトルのダメージ計算式は実ゲームと同等だが、必殺技やヒーロー切り替えなどいくつかの要素を省いて簡略化されている。実ゲームでは1バトルに数分を要するところ、シングルスレッドで約1秒というスピードで実行できる。実行結果から勝利時はバトル時間、敗北時は与ダメージ量でバトルの内容を評価し、「遺伝的アルゴリズム」を用いてパーティー編成を改善していく。

遺伝的アルゴリズムは、良い個体同士の遺伝子を掛け合わせることで次の世代となる新しい個体を生み出す手法だ。この手法で装備の組み合わせを最適化させて成長していく。パーティー編成を遺伝子にしたことで、プレイヤーAIの修正なしで新しい属性やスキルの追加、大幅な装備パラメータの変更に対応できる。ゲームとAI間はAPIを利用しており、指定した設定でバトルを要請し、結果は数値で返ってくる仕組みだ。本来は人間と同じようにプレイさせるのが理想だが、画面の情報を理解するのが困難だという。

プレイヤーAIの成長結果を見てみると、最初は開始直後に敗北していて全く勝利できていないが、世代を重ねて勝利が増えていくと同時に戦闘時間も短くなっている。ところどころ急激に改善している(段差になっている)部分がある。眞鍋氏はこれを突然変異による局所解脱出と見ており、局所解脱出が発生する前後でパーティー編成を比較したところ、戦闘職から防御職に変更されたことで戦闘時間を短縮できたことがわかったと述べた。

遺伝的アルゴリズムは優れた遺伝子を受け継いでいくことから、頻度を集計すると価値の高いヒーローや装備を発見できる。アソシエーション分析では、単体では弱いがある組み合わせで強くなるものを見つけられる。これらの結果は、バランスブレイカーが存在しないように価値とコストのバランスを人間が調整する際に役立つ。

最後にプレイヤーAIのメリットとして、開発チームから独立して作業できること、タイトルに特化しない技術の蓄積ができること、社外と知見が共有できることを挙げた。一方で、汎用性を持たせたことで細かいチューニングには経験や工夫が必要になるが、デメリットよりもメリットの方が多いと述べ、講演を締めくくった。

AR部門 サイバーエージェントグループが取り組む『AR』とスマートフォンのゲーム市場の今後の展望

最初に株式会社VR Agent 取締役の張 巧実氏が登壇し、スマートフォンゲームにおける同社の取り組みを発表した。AR(Augumented Reality)は日本語に訳すと拡張現実で、我々が知覚している現実世界に情報を重ねて拡張する技術や拡張された環境のことを指す。

株式会社VR Agent 取締役 張 巧実氏

位置情報を基に現実世界でポケモンをゲットして遊ぶ「Pokémon GO」が一大ブームを巻き起こしたのを皮切りにAR市場が盛り上がりを見せており、実際に四半期でARアプリが6割増えたという。モバイル向けではAppleの「ARKit」やGoogleの「Tango」などのフレームワークも登場し、今後更なる技術躍進と市場拡大が予測できる。

張氏は同社の取り組みとして「アメブロEX」と「P[AR]TY by AWA」を紹介した。Ameblo EXはマーカーを読み取ると文字が浮き上がり、音声入力でブログを投稿できる。P[AR]TY by AWAは仮想的作り出したDJ空間の”黒”を識別し、エフェクトを適用したりパーティクルを発生させたりして演出する。どちらもイベントのために製作されたインスタレーションで、製品としては展開されないが、ARを使った新しい体験と価値を提供できる面白い試みだ。

本題となるスマートフォン向けのARアプリとして紹介されたのが、「夢100AR」と「グリモアAR」だ。どちらも2Dゲームで、登場するキャラクターを3Dのように見せることを重視して開発された。2DゲームのARアプリを出した理由は、3Dゲームよりも2Dゲームが市場を牽引しているからだ。IP(Intellectual Property)やキャラクターに立体感を持たせることでロイヤリティを向上させるのが狙いだ。

ゲーム内のキャラクターが現実世界に現れて動くのは、AR初体験のユーザーにとっては斬新かつ悦楽な体験だったに違いない。ポジティブな反応だけではなく、やはりネガティブな意見もあった。デベロッパーとユーザーでARに関する知識のギャップがあり、使い方がわからないユーザーもいたようだ。一番の課題は、最初は楽しめてもキャラクターが出現するだけではすぐに飽きてしまうことだ。ARの特性を活かしながら継続して遊べる工夫が必要だろう。

張氏は今後も2Dの見せ方を模索してプロモーションを軸にしていくという。現時点ではPokémon GOを除いてヒットがないARアプリ市場は、まだまだ発展途上で伸び代がある。引き続きARアプリに取り組みつつ、画面内に収まらないリアル体験とARの融合にも挑戦していくと述べた。

第一夜最後の登壇者は、株式会社サイバーエージェント SGE統括本部 CTOの白井 英氏だ。過去のスマートフォンのゲーム市場とコンシューマゲーム機の歴史を辿り、ハードウェアの性能とヒットタイトルの推移から今後の展望を述べた。

株会社サイバーエージェント SGE統括本部 CTO 白井 英氏

比較対象としてコンシューマゲーム機の性能を振り返ってみると、ハードウェアサイクルが長いという特徴もあり、長期間で段階的にスペックが向上している。一方で、スマートフォン(直近5年のiPhone)の性能は短期間の間に驚異的なスピードで進化していることがわかる。最新モデルに至ってはコンシューマゲーム機に追いつかんばかりの処理能力を誇る。

フィーチャーフォンの頃はボタンを押すだけの単純なゲームが大半を占めていたが、スマートフォンではタッチパネルを搭載したことで多彩な操作が可能になった。中でも「パズル&ドラゴンズ」や「モンスターストライク」など、フリックやスワイプを活かした手軽なゲームが人気を博した。

昨今はスマートフォンの性能が著しく高くなったことで「MOBIUS FINAL FUNTASY」や「リネージュ 2 レボリューション」など、コンシューマゲーム並みのハイクオリティなゲームが登場している。また、位置情報から現実世界にポケモンが出現するPokémon GOが普段行かないような場所へと足を運ばせ、社会現象になるほどヒットしたのは記憶に新しい。

以上のことを踏まえると2つの方向性が見えてくる。ポイントは「スマートフォンの高い性能」と「ポケッタブルで携帯性に優れている」ことだ。今までコンシューマゲームでしか体感できなかった美しいグラフィックをスマートフォンゲームで実現する流れが加速していく。スマートフォンの特性や機能をうまく取り入れ、ARで新しい体験をもたらすゲームも増えていくだろう。白井氏は、トレンドの対戦プレイやマルチプレイにAR体験を加え、スマートフォンらしさを活かしたゲームがPokémon GOを超える勢いでヒットするのではないかと推測した。

エンジニア、ライター。成蹊大学 理工学部 情報科学科 言語情報研究室所属。

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