ベイズの定理でプロジェクトの失敗を予測
「ベイズの定理」の応用例
「ベイズの定理」の応用例を示します。最も有名な例はスパムメールの判定への応用でしょう。多くのメーラーでは特定の語を含むメールをルールベースで抽出することによりスパムメールを特定しはじく実装を持っています。
しかし、その言葉が含まれているかどうか含まれているかだけで判断するとその単語が含まれていると必ずスパムとしてしまうような柔軟性のない判定になり、またメールの受信者によって特定の言葉を含むメールがスパムなのかどうかを細かに設定することはできなくなります。
そこで、「ベイジアンスパムメールフィルター」と呼ばれる手法を用います。この手法では「ベイズの定理」を用い、特定の単語を含むメール(以下、ワード)がスパムメールである確率を以下のように算出します。
P(スパムメール|ワード)
= P(ワード|スパムメール)・P(スパムメール)/P(ワード)
この式からある単語を含むメールがスパムである確率がわかりますので、受信者は例えば「P(スパム|^*)≧0.9となる単語「*」を含むメールはスパムである」と設定しさえすればよく、さらに特定の単語を含むメールを受信者がスパムかどうか振り分けることにより受信者にとって最適な確率に徐々になります(^は上付き文字を表します)。
また、ベイズの定理はコンピュータ以外の分野でも応用が可能であると考えられています。例えば、ある一定の条件を満たす集団の中で、ある病気を患っている人の確率とその病気を患っている人がある検査で陽性が出る確率から、その検査で陽性が出た人がその病気である確率を求める作業にも使うことができます。
プロジェクト管理利用する「ベイズの定理」
では、この「ベイズの定理」をプロジェクト管理で利用できないか検討してみましょう。期日通りに完了させることはプロジェクト成功の必須要件です。よって、プロジェクトマネージャは進ちょくを監視し、期日通りに終わるのか判断し、問題があれば修正しなければなりません。
例えばあなたが上司Xであるとすると、図3の場面はよく見られると思います。あなたは、Yさんはスケジュールを結果的に9割の確率で守るものの、スケジュールに関する発言は7割程度の信頼しかないと常日ごろ感じています。つまり、Yさんは最終的には責任感のある人なんでしょうが、上司としては管理しにくい人といえます。さて、この場面で「ほぼ予定通り」とYさんがいった場合、実際ほぼ予定通りで終わる確率はどの程度でしょうか?
早速、算出してみましょう。
P(予定通り|「ほぼ予定通り」と発言)
= P(「ほぼ予定通り」と発言|予定通り)・P(予定通り)
/{ P(予定通り)・P(「ほぼ予定通り」と発言|予定通り)+P(遅れた)・P(「ほぼ予定通り」と発言|遅れた)}
= 0.7・0.9/(0.7・0.9+0.3・0.1)=0.9545…
つまり、発言の確からしさが7割といえど、実はYさんが「予定通り」といった場合あなたは予定通りに終わることを9割以上の確率で信頼してよいことになります。
今回は「ベイズの定理」を紹介しました。この定理もこれまでの「ゲーム理論」や「フェルミ推定」と同じく人間を考慮し不確実な事象に直面する場合に使われるという意味で、今後のプロジェクト管理で必要性が増してくるでしょう。