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KubeCon 2018 EU開催 着実に拡大するKubernetesエコシステム

2018年5月25日(金)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
Kubernetesを始めとするクラウドネイティブなシステムに関するカンファレンス、KubeCon+CloudNativeConがデンマークのコペンハーゲンで開催された。

コンテナオーケストレーションツールのKubernetesをコアとしたクラウドネイティブなオープンソースソフトウェアに関するカンファレンス、KubeCon+CloudNativeConがデンマークのコペンハーゲンで開催された。

初日のキーノートで挨拶に立ったCloud Native Computing Foundation(以下、CNCF)のエグゼクティブディレクターであるDan Kohn氏は、まずカンファレンスの規模が昨年から大きく拡大したことを紹介した。特にホストするプロジェクトの拡大、メンバーの増加などについて触れ、クラウドネイティブなシステムを志向するユーザーが増えていることを示した形になった。実際、カンファレンスの参加者は2017年のベルリンが約1500名であったのに対して、今回の参加者は4000名を超え、2倍以上の大きな伸びとなった。

CNCFのDan Kohn氏

CNCFのDan Kohn氏

キーノートの中で特にKohn氏が取り上げたのは、タイトルにもなっている「How good is our code(我々のソフトウェアはどのくらい良いのか?)」というテーマについて、Continuous Integrationの重要性を訴えるものだった。

SQLiteを例に挙げてソフトウェアの品質に言及

SQLiteを例に挙げてソフトウェアの品質に言及

Kohn氏は、例としてSQLiteという軽量のリレーショナルデータベースを取り上げた。これはアプリケーションに組み込みのデータストアとしてよく使われているデータベースシステムだが、一人のエンジニアが2000年に公開を始めたいわゆる「枯れた」ソフトウェアだ。しかしSQLiteに対してAmerican Fuzzy Lopと呼ばれる遺伝的アルゴリズムを使ってテストデータを生成するツールを使うことで、たった30分の実行時間で22個のバグを検出することができたという。

この例からLinuxやKubernetes、Node.jsなどのSQLiteよりも巨大なソフトウェアにおいては、「バグがないはずがない」ということを強調した。その上でバグをなくすために何をするべきかに言及し、継続的なテストの実施と開発を高速化するために、Continuous Integrationが重要だと語った。そのためにKubernetesのコミュニティでは非常に人気の高いGoogleのKelsey Hightower氏のツイートを紹介し、「アプリケーションをビルドするCIが完成していないのであれば、Kubernetesを入れても意味はない」ことを訴求した。

続いて、CNCFが作成しているクラウドネイティブなシステムに近づくためのランドスケープとトレイルマップが紹介された。KubernetesやPrometheusなどCNCFがホストしているプロジェクトに加えて、商用ソフトウェアなども包括的にリストアップしたものがランドスケープ、そしてそれらを使ってクラウドネイティブコンピューティングを実現するための手順をガイドとして挙げたものが、トレイルマップということになる。

クラウドネイティブなシステムのためのプロジェクトを一覧できるランドスケープ

トレイルマップを見ると、クラウドネイティブなシステムに向かうためにはコンテナ化が最初のステップであり、その後にCI/CDを実装し、Kubernetesによるオーケストレーションは3番目と位置づけられている。これは重要なポイントで、コンテナ化の次はKubernetesでオーケストレーションという実行時のツール選びよりも、組織として開発から実装までを自動化する方法論を採用することが、クラウドネイティブへの道であるということを示唆している。

この後はCNCFのプロジェクトを総括的に紹介するためにAqua SecurityのLiz Rice氏が登壇した。Sandbox、Incubation、Graduatedという3つのレベルでプロジェクトが育っていくというのがCNCFのプロジェクトホスティングシステムだが、RookやVitessなど20のプロジェクトについて駆け足に現状を紹介した。

CNCFのインキュベーションの3つのレベルを紹介

CNCFのインキュベーションの3つのレベルを紹介

その後、CERNにおけるKubernetesの事例の紹介や、Cisco、VMwareによるプレゼンテーションが行われた。CiscoはサービスメッシュのIstioを全面に押し出したプレゼンテーション、VMwareは意外にも製品ではなくオープンソースソフトウェアにおけるダイバーシティの重要性を訴えるものであった。

CiscoによるIstioの概要説明

CiscoによるIstioの概要説明

最後に、CNCFのTechnical Oversight CommitteeのチェアーであるAlexis Richardson氏によるGitOpsに関するプレゼンテーションが行われた。Richardson氏は、Weaveworksの創業者兼CEOとしても知られている。Richardson氏のキーノートでは、「KubernetesとServerlessが将来的にはマージされるだろう」と指摘。なぜならデベロッパーがしたいことは究極的には「コードをプッシュして本番環境にあげること」であり「Podを立ち上げること」ではないからと解説。そのためにはソースコードリポジトリーを中心に開発から運用が回る「GitOps」が必要であると力説した。またデベロッパーは今後、倫理を持つことが重要だと説明。これはFacebookのデータがユーザーの同意を得ずに外部の分析業者に流出したことを例に挙げて「こういうことが起こる前にデベロッパー自身がコードの意味を理解して、たとえビジネスサイドからの要求があったとしても拒否するべき」と締めくくった。これで午前中のキーノートセッションは終了した。

WeaveworksのCEOでもあるAlexis Richardson氏

WeaveworksのCEOでもあるAlexis Richardson氏

全体を通して、CNCF配下のプロジェクトが順調に推移していることが見てとれるキーノートであった。プロジェクト間で機能がオーバーラップしていることもあるが、コミュニティの自主性を尊重しながら自由な競争に任せるというやり方が、CNCFではうまく機能していることを感じた。CiscoやVMwareなどのスポンサーも存在感を示しつつ、Kubernetesがクラウドのインフラストラクチャーとしてエコシステムを拡大していることを実感できる内容となった。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

連載バックナンバー

クラウド
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2018/6/5
DevOpsをさらに推し進めた「GitOps」という開発手法が、KubeCon+CloudNativeConが紹介された。
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Kubernetes最新情報とダイバーシティがトピックのKubeCon 2日目

2018/5/30
KubeCon+CloudNativeCon 2日目には、Kubernetesの最新情報を始めとする多くのトピックが紹介された。

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