プログラミングの常識を疑え!
プログラミングとは何か
プログラミングと聞いて、みなさんはまず何を連想するでしょうか?
狭義の意味では、人間の意図をプログラミング言語によって記述すること(コーディング)ですが、より広い範囲、ソフトウエア開発全体を連想する人も多いかと思います。
狭義の意味だけに絞ったとしても、プログラミング言語にはさまざまなものがありますし、記述する内容や書き方のスタイル(プログラミングパラダイム)にもいろいろなものがあります。
例えばCやC++のようなコンパイラ言語は、OSを初めとした、さまざまなシステムやアプリケーションを作るのに向いた言語と言われています。これらの言語で書かれたプログラムは、コンパイラに対して細かな指示を与え、効率的な実行可能ファイルを生成するための記述です。
それに対してShellやPerlのようなスクリプト言語は、その名の通り、システムの動作内容などを台本のように記述します。そして、システムが持つインタプリタが直接読み込んで実行し、複雑な作業の自動化などに用いられるケースが多いです。
とはいえ、コンピュータが十分に高速化した現在では、スクリプト言語によってシステムやアプリケーション自身が記述/拡張されるケースが増えてきており、それぞれの役割分担は以前ほど明確なものではなくなりつつあります。
従来はOSの上で実行されるだけのプログラムがほとんどでした。やがてJavaプログラムのようにVM(Virtual Machine)上で実行されたり、JavaScriptのようにWebブラウザ上で動くプログラムも多くなり、より自由度が高まってきています。
最近では、ただ実行するだけではなく、LLVM(Low Level Virtual Machien)(http://llvm.org/)のように、実行可能ファイルを「ゆりかごから墓場まで」最適化し続けるための実行環境も実用段階に入ってきています。これは、コンパイラ、インタプリタ、プロファイラ、VMなどを統合するものであり、より柔軟かつ高度な自動最適化が可能になると考えられています。
開発環境の多様化
さらに、電子回路をプログラミング言語で記述し、ソフトウエアからハードウエアを生成するHDL(Hardware Discription Language)や、プログラムをロードすることでハードウエア自体を変更可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)のような技術も普及しつつあります。
もはやハードウエアとソフトウェアの境界さえ絶対的なものではなくなりつつあり、システム構成の自由度は格段に向上してきています。そして、ソフトウェア開発の際に使用するライブラリや開発環境、ミドルウエアも非常に多様化してきています。時代が進み、技術が高度になるにつれて、ますますプログラミングという概念は複雑でとらえどころの無いものになりつつあるような気がします(図1)。
そこであえてもう一度、プログラミングという概念を整理してみて、その本質とこれからの向かうべき方向について考えてみるというのが、この連載の目的です。
次ページでは、プログラミングを取り巻く固定観念について考えてみましょう。