ついにその全容が明らかに! クラウドネイティブサービスのためのオラクルの新しいコンテナ開発プラットフォームとは
オラクルが現在、エンタープライズのシステム開発でのコンテナ活用に向けて、技術開発を加速していることをご存知だろうか。今やすべての開発者にとって仮想化の標準となりつつあるコンテナ技術を、より簡単に、かつ高度に利用できるクラウド開発環境「Oracle Cloud Native Framework」を新たにリリース。Kubernetesを中心としたコンテナ・ネイティブ技術の普及を推進する、日本オラクル 早川 博氏に、オラクルの新たなコンテナ技術戦略を伺った。
新たなビジネスを探る人々に支持され
仮想化の標準技術となったコンテナ
エンタープライズの開発者にとって、もはやコンテナは目新しい言葉ではない。むしろ現在のクラウドアプリケーション開発の標準技術と言っても過言ではないだろう。ここまでコンテナが急速に普及した背景には、新しいビジネスチャンスを発見しようという世の中の機運の高まりがあると早川氏は指摘する。
「企業はこれまでバックオフィスの業務の効率化などに使ってきたITを、これからは新たなビジネスチャンスを発見するツールとして積極的に活用していこうと考えています。そのためには、新しいアイディアを短期間で開発して試しては改良を重ねていく=アジャイルなシステムリリースを実現できる開発環境が不可欠です。そうした需要がコンテナをクラウドサービス開発の主役に押し上げたのです」。
一方、実用化が進むにつれ問題も出てきた。というのも、運用管理すべきコンテナが大量になり、その運用管理業務が複雑化しがちであることだ。実際のサービス環境では100~数千個のコンテナがあるケースも珍しくなく、開発したコンテナをどのハードウェアにデプロイするのか、また落ちた場合は、どうやって問題のあるコンテナを検出し、再起動するのかなど、とても人手では管理しきれるものではない。
「そこで登場したのがコンテナ・オーケストレーターと呼ばれる複数のハードウェアを1個のクラスタとして包括的に管理できるツールです。デプロイからローリングアップデート、再起動など一連の操作を自動化して、管理者の負担と人的ミスを大幅に減らします。すでにこの分野で、デファクトスタンダードとなっているのがKubernetesです」。
開発技術者が直面する「第2の波」と
コンテナの「3つの重要課題」とは?
早川氏はKubernetes登場までのコンテナの急速な拡がりを「第1の波」と定義した上で、すでに「第2の波」が押し寄せつつあると指摘する。そしてこれは同時に、コンテナを利用するすべての開発者が解決しなくてはならない新たな課題を意味しているという。課題には、大きく分けて以下の3つがある。
- 開発文化の変革の遅れ:オンプレミス時代のカルチャーやスキルセットからコンテナへの切り替えは難易度が高く、変化への適応が進んでいない
- OSSの乱立・DIYの限界:ひと口にOSSといってもあまりに多くの選択肢があり、どれを選ぶべきかわからない。またメンテナンスや管理も自前では限界がある
- プロプライエタリなクラウドサービス:特定のベンダーによるクローズドなAPIやサービスを選んでしまうと、将来的にベンダーロックインに陥る可能性がある
これらの課題に対して、どのような対応策を講じれば良いのか。オラクルでは、3つの課題それぞれに対する新しいアプローチとして「Inclusive(包括的)」「Sustainable(持続可能)」「Open(オープン)」のキーワードを掲げる。
「まず『包括的』とは、クラウドとオンプレミス、伝統的手法と新しい手法といった違いを超えて、標準化された技術や手法を利用できること。『持続可能』は、将来を考えてどのOSSを選べば良いか、どのように運用管理すれば良いかを提案する取り組みです。最後の『オープン』は、ベンダーの利益に偏らない、あくまでオープンな環境やコミュニティ主導の環境を重視することを指しています」。
この3つのキーワードとアプローチは、コンテナ技術の「第2の波」を迎え撃つオラクルの基本的なコンセプトとスタンスの表明だと早川氏は言う。
オラクルが提案する新しいプラットフォーム
「Oracle Cloud Native Framework」
では、これからオラクルはコンテナ技術を利用する開発者に向けて、どのような機能をリリースしていくのだろうか。早川氏は、その基盤となるものが「Oracle Cloud Native Framework」だと明かす。
「Oracle Cloud Native Frameworkとは、クラウドネイティブな世界で使われるOSSなどをマネージドサービス化して、単一のプラットフォーム上に統合・公開するものです。これらのサービスを使って、誰でも簡単にさまざまなクラウドサービスを開発できるようにするのが、この新しいオラクルのプラットフォームの最大の目的です」。
すでにアプリケーション開発とオペレーション用のサービスのいくつかは公開されており、現在開発中のものも順次公開されていく予定だ。「すべてのサービスが公開完了すれば、ほとんどのクラウドネイティブなシステムが、このプラットフォーム上で開発できるようになるでしょう」と、早川氏は期待を隠さない。
エンタープライズITの世界をリードしてきたオラクルだけに、プラットフォームの開発過程でも常にエンタープライズ利用にふさわしい機能を意識してきた。例えば、本番環境でシビアなトランザクションや高負荷がかかった場合にも稼働を担保できること。また企業の要求レベルに応える高度なセキュリティを維持できること。そして、何より重視したのは「オープンな技術をフルに利用して開発すること」だったという。
「すべてをOSSで開発できれば、どんなクラウド環境でも、同じOSSの実行環境を用意することができます。オラクルのプラットフォームでありながら、あくまでオープンな開発環境にこだわった点で、Oracle Cloud Native Frameworkは、従来の開発環境とは考え方もアーキテクチャも大きく異なっているのです」。
サーバーレス アプリ開発を容易にする
Oracle Functionsの実力とは?
早川氏が「Cloud Native Framework」の中で注目しているトピックスが「Oracle Functions」だ。2018年に米国内のイベントで発表された、この新しいクラウドサービスを活用することで、クラウド上でサーバーレス アプリケーションを容易に構築し、実行できるという。
「Oracle Functionsでは、実行エンジンにOSSのFaas基盤であるFn Projectを利用しています。これはオラクルが主導して開発したものですが、GitHubで公開されており、世界中の開発者が自由に利用可能です。Oracle Functionsで動作する機能は、Fn Projectがインストールされた環境であれば、PCやオラクル以外のクラウドなど、どこでも動かすことができます。
基本的にオープンソースであり、Apache 2.0のライセンスで提供されていること、また、マルチ言語サポートであること、さらにDockerが動く環境ならどこでも動かせる汎用性の高さが、開発者にとって極めて有用なツールとなるのは間違いない。
また「考え抜かれた開発者エクスペリエンス」が提供され、ローカル開発環境からデプロイメントまで、すべてがシンプルでわかりやすく、使いやすいUI/UXで快適に実行できるのも重要なセールスポイントだと早川氏は付け加える。
「Oracle Functionsを使うと、わずかなコマンドを打つだけでファンクションが動くなど、開発者の負荷を大きく減らしながら、品質の高いサービスを作ることができます。自分で使ってみて、シンプルな使いやすさに驚く方も少なくありません」。
オラクルが提案する新しいプラットフォームで、
新たなアプリケーション開発と運用を
このように、新しいシステム開発のインフラとして注目されている「Container Native」をテーマとしたセミナー「Container Native Day」を、2019年3月8日(金)に開催する。当日の会場にて、実際にデモを行いながら、さらに詳しい機能をご紹介したいと意気込む早川氏。ぜひ当日は、新しいOracle Cloud Native Frameworkの実力を、会場で確かめてみてはどうだろう。
Kubernetes攻略をどう進めるか、もっと簡単にKubernetesを利用する方法はあるか
日時:2019年3月8日(金) 14:30~17:00(受付 13:00より)
会場:オラクル青山センター(東京都港区)
詳細/参加登録:Webサイトはこちら
その他、2019年、さらなるエンタープライズ・クラウド活用へ向けて、第2世代クラウドのビジョンと活用のパワーをみなさまへ
「Oracle Cloud Dayセミナーシリーズ」詳細はこちら
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