LPI日本支部、エグゼクティブディレクターを招き最新のパートナーシッププログラムを紹介
Linux Professional Institute(以下LPI)は、Linuxやオープンソースソフトウェアに対する試験制度を通じて、プロフェッショナル同士のコミュニティの形成を目的とする国際的な非営利団体である。LPI本部からエグゼクティブディレクターであるG. Matthew Rice氏と、パートナーシップのディレクターであるRafael Peregrino da Silva氏が来日するのに合わせて、Think ITではインタビューを実施した。なおインタビューには、LPI日本支部のコミュケーションディレクターである伊藤健二氏も同席した。
2018年7月の記事では、LPI日本支部が立ち上がった経緯などに関してRice氏が説明しているので、参考にして欲しい。
参考:オープンソースの資格制度を運用するLPIが日本支部を結成 LPI-Japanとの違いとは?
自己紹介をお願いします。
Rice:私はもともとはCのプログラマーでした。それからBashやTCLなどを経験して、ここ4年ほどはLPIのエグゼクティブディレクターをしています。その前は、LPIのCertificationに関する統括をやっていました。
da Silva:私ももともとはプログラマーでしたが、LPIに参加する前はブラジルでLinux Magazineを出版する仕事をしていました。実はそのマガジンはドイツの出版社の子会社でしたので、その関係で10年ほどドイツにいたことがあります。今はブラジルに戻っていますが、パートナーシッププログラムの責任者になる前は、ラテンアメリカ地域のディレクターをやっていました。
今回の来日の目的は?
Rice:基本的にはLPIのプロモーションですが、今回は特にパートナーとのミーティングを重点的に行っています。今回は、近く発表するパートナープログラムについて、パートナーやメンバーに対して説明を行うために来日しました。また来月には、もう一度日本に来てフォーカスグループインタビューを行い、より詳細なフィードバックを集めるつもりです。そしてそれが、今後のLPIの活動の方向性になるはずです。
前回のインタビューの時にLPIは単にエンジニアが資格を取ることを奨励するだけではなく、資格保持者であるメンバーが横につながる、そして組織のガバナンスに参加するということが大きな目的として説明されました。それに関しては変わりはないですか?
Rice:変わりありません。日本でメンバーであるエンジニアとも話をしましたが、反応はとても良いものでした。またLPIの資格がグローバルであるという部分も評価されています。さらに横のつながりという意味では、違う国のエンジニア同士がそれぞれの言語をお互いに教え合うようなこともコミュニティとしてできたら良いなとは思っています。またメンバー同士がプログラミング言語を教え合うメンタープログラムも実現したいと考えています。実際には「exercism.io」というプラットフォームでプログラミング言語を教え合うサービスを展開していますので、そことは話し合いをしています。
exercism.ioはLPIの外部の組織ということですね?
Rice:そうです。しかしこの「プログラミング言語をメンターが教える」というプラットフォームは、言語以外にも応用ができるのではと考えており、それについても創業者とは話をしています。exercismは2018年の12月にVersion 2をリリースして改善が進んでいますので、どこかで協業ができるようにしたいのです。
私個人もBashのメンターとしてexercismには登録しているのですが、なかなかメンターとしての仕事が進まないので、創業者のKatrina Owenにはとっても申し訳なく感じています(笑)。
参考:exersicm.io
パートナーシッププログラムについて教えてください。
da Silva:これはパートナーシッププログラムだけに限らないのですが、我々の目的は資格保持者、つまりプロフェッショナルを支援することです。そのため、パートナーシッププログラムもその目的に沿って設計されています。これまではAcademic PartnerとCorporate Training Partnerの2種類だったものを拡張し、新たに4つを追加します。具体的にはChannel Partner、Hiring Partner、Solution ProviderとCorporate Sponsorになります。
一つずつ説明していきましょう。Channel Partnerは、すでにコミュニティを持っている企業や他の組織とのコネクションを持っている組織です。例として、ブラジルにあるASESSPROという団体が挙げられます。これはブラジルのIT企業300社が加盟している非営利団体です。ASESSPROとLPIは、相補的な関係になります。ASESSPROには多くのエンジニアがいますし、そのエンジニアにとってLPIの資格は役に立つはずです。そのエンジニアコミュニティとのつながりを作るという意味で、Channel Partnerと呼んでいます。他にもミシガン州の大学を統括する組織などもChannel Partnerですし、日本だとPing-tもChannel Partnerになります。
Hiring Partnerは、エンジニアを雇う立場にいるIT企業がLPIのパートナーとなるものです。雇用する際に、LPIの資格認定を受けることを必須要件として提示することが条件ですが、パートナーになることで社内の人材が資格を取る際にディスカウントを受けることができます。さらにLPIのデータベースから、匿名で認定されたメンバーを検索することもできます。例えば「沖縄でLPIC-3を持っている人が何人いるのか?」といったような条件で検索できますし、メンバーがOpt-inしていればオファーレターを送ることも可能です。
Solution ProviderはHiring Partnerの逆で、オープンソースソフトウェアのソリューションを提供する企業がパートナーとなることで、Hiring Partnerと同じ利点を得ることができます。またLPIは、プロモーションをお手伝いする形になります。これは有償のサービスですが、それほど高いフィーではありません。
そして最後に、Corporate Sponsorが加わります。これはLPIのミッションに共感し、資金提供を始めとしてサポートを行ってくれる企業となります。
パートナーが充実することでメンバーに様々なメリットがあることは理解できますが、コミュニティとして相互に助け合うという部分に関しては具体的にどうやるのでしょうか?
伊藤:実際には、お互いに助け合うという部分やメンターになって誰かをヘルプするというのは、メンバーによるコミュニティに対する貢献の一部だと思います。つまりメンバーが一人でできることもありますし、そういう部分を含めてコミュニティが 成り立っていくのだと思います。
Rice:貢献について言えば、メンバーはポイントでカウントするシステムになっています。これは3年間で60点を獲得すればメンバーシップを更新できるというもので、その中にはトレーニングクラスを受けるというものもありますし、試験に合格するというのもそのひとつです。またオープンソースソフトウェアに関する記事を書く、本を書くというのも貢献のひとつとして挙げられます。
それはどうやって申告するのでしょう?
Rice:それについては現在、開発を進めているメンバー用のポータルサイトに自身の活動を追加することで、可能になる予定です。例えばあるエンジニアがLinuxについての記事を書いて公開したら、そのURLを自己申告することで活動とみなされます。メンバー同士がつながるという部分も、このポータルサイトを利用して交流することを想定しています。現在、開発は進んでおり、今年の夏ぐらいにはメンバーにβテストなどの告知ができるようになると思います。それはOdooというオープンソースのERPをベースにしています。
また試験自体についても、外部のエンジニアが対象となるソフトウェアについて試験を作るためのプラットフォームを準備しています。これができれば、例えばKubernetesに詳しいエンジニアが試験を作るということも可能になりますし、ローカライゼーションも容易になる予定です。またソフトウェアそのものの試験だけではなく、ライセンスに関する知識など身につけるための新しい試験、LPIではBOSS(Business of Open Source Software)と呼んでいますが、それも準備しています。全てはメンバーがHappyになることが目的ですので、全部を一度に進めることはできませんが、前に向かって進んでいることを理解して欲しいですね。
参考:Odoo
※ ※ ※
16万人以上のアクティブなメンバーを持つLPIは、グローバルな試験制度とキャリアサポートを行う集団という表題に向かって着実に歩を進めているようだ。LPI-JapanがLPICからLinuCに移行し、あくまでも試験制度を中心に進める方向であるのに対し、LPIはオープンソースに関わるエンジニアの技術面だけではなく、ビジネス面でのサポートも視野に入れており、メンバー同士の互助組織を目指すことがより明確になったインタビューであった。また試験の価格についても2019年5月を目標に見直しが進んでいるという。グローバルの価格に合わせて低価格化を行い、試験にチャレンジするエンジニアを増やしたいというのがLPIの意向である。
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