CNDO 2021、YAMLの加工ツールyttをVMwareのソリューションアーキテクトが解説
CloudNative Days ONLINE 2021から、YAMLファイルの加工ツールであるytt(YAML template tool)についてデモを交えて解説するセッションを紹介する。昨今YAMLファイルは、Kubernetesの設定ファイルを始めとして広く利用されている。このセッションは、元Pivotalのエンジニアで今はVMwareのソリューションアーキテクトである槙俊明氏によるものだ。
k14s(Carvel)の一部であるytt
yttはCarvelというオープンソースソフトウェアのツール群の一部である。元々Carvelは、Pivotalが開発していたk14s(Kubernetes Tools)というツールの一部であり、VMwareによるPivotal買収完了後に改名されたものだ。yttは複数のツールで構成されているものの一つという位置づけになる。このような経緯から、VMwareがyttの開発を支援しているというわけだ。
参考:Introducing k14s (Kubernetes Tools): Simple and Composable Tools for Application Deployment
このブログ記事は2019年6月にPivotalチームによって書かれたもので、k14sの生い立ちの背景が良くわかる内容になっている。ここで重要なポイントは、Pivotalのエンジニアが強烈にHelmを意識しているということだろう。それはyttの説明に「複雑で多目的なツールであるHelmを使った経験からk14sを開発した。シンプルで一機能だけを実装したツール群を連携させたほうが、オールインワンのHelmよりも理解しやすくデバッグも簡単になる」とあることからも見て取れる。
ここではアプリケーション開発から実装までのステップを例に、yttを含むk14sがどのように位置付けられているのかを解説している。アプリケーションはソースコードを書くだけではなく、その構成ファイルの作成、パッケージの作成、実装のための操作が必要になる。k14sでは構成ファイルの作成をytt、パッケージ作成をkbld、実装をkappが受け持つ形でツールが構成されている。他にも、開発用のPCからKubernetesのクラスターにアクセスするためのkwtというツールも公開されている。kwtはTelepresenceと同じような機能を果たすツールだが、Telepresenceが多機能化に向かっているのに比べると、機能はシンプルさを保っている。
ここではOverlayとTemplateという単語が簡単に解説されている。OverlayはベースのYAMLを元に変更を加える機能、Templateは変数の代入や「if - then」などのロジックを加える機能と説明した。比較されているソフトウェアにはそれぞれ特徴があるが、普及度という面ではkubectlに採用されたKustomizeと、Microsoftが強力にバックアップするHelmが圧倒的と言えるだろう。Helmは元々Deisが開発していたKubernetesのパッケージマネージャーで、MicrosoftがDeisを買収した後にCNCFのプロジェクトとして採用され、2020年4月にインキュベーションプロジェクトからのGraduationとなったプロジェクトだ。
なおKustomizeについては、2018年のKubeCon Chinaのレポートでも紹介しているので参照されたい。この時点ではKustomizeはOverlayではなく「Patchを当てる」という表現を使っており、用語の使い方も変化したのかもしれない。Kustomizeの概要は後半に記載されている。
参考:KubeConChinaで見たKubernetesエコシステムを支えるツールたち
yttの特徴
その問題点を解決するツールとして紹介したのがyttだ。
YAMLファイルを加工するためにYAMLを使うというアプローチだが、特殊なDSL(Domain Specific Language)を使わずに行うとは言いつつも、Pythonに似たStarlarkという言語を使ってロジックを記述するというのが解説された。
Kustomizeと比べると、テンプレート言語を使えて機能が高く、Kubernetes専用でもないが、普及度、知名度では圧倒的に遅れをとっていると言うのが、客観的な評価と言えるだろう。
yttのテンプレート機能
ここからはyttのテンプレート機能を、例を挙げて説明するフェーズとなった。ここで、CarvelのサイトにあるPlaygroundと呼ばれるページが紹介された。これは、実際にyttを使ってYAMLファイルに対する加工をブラウザー上で確認できるというものだ。Playgroundには多くの例が含まれており、yttで何ができるのかを実体験できる強力なツールとなっているので、ぜひ体験して欲しい。
CarvelのサイトにあるyttのPlayground:Carvel - ytt
この例では「#@」で始まる変数の記述がyttの処理を経てYAMLの記述に変換されていることがわかる。
この例では関数の記述に明示的にendを書く必要があるという部分を説明し、yttならではの違いを強調した。
この例ではmetadataのnameがdemoを検索し、その値を100から500に変更するという記述を解説した。
この例ではリストの中のデータを検索して、値を変更するやり方を説明している。
yttの特徴は元になるYAMLファイルを一切変更せずに書き換えられる点であり、これ以降はレシピの紹介としてKubernetesのManifestを書き換える例を紹介していくフェーズとなった。
この例ではKubernetesのPodのレプリカ数を変える例を紹介した。先ほどの例のYAML内の変数を検索し、その属性であるReplicasを書き換えている例だ。
この例ではコンテナのイメージ名にレジストリーの名前を追加するという書き換えを紹介している。
最後にまとめとしてyttの強力なカスタマイズ機能を紹介してセッションを終えた。yttの公式サイトは以下を参照して欲しい。
ytt公式サイト:Carvel - ytt
YAMLファイルの運用管理は、多くのツールがKubernetesネイティブになるに従って、これからニーズが高まってくる領域と言える。CarvelなどのPivotalの資産やHeptioを上手く活用できるかどうかは、VMwareの舵取りに掛かっている。TanzuがVMwareのクラウドネイティブの新しいブランドとしてオープンソースも商用ソフトもまとめられている形だが、VMwareがリードするオープンソースプロジェクトは別枠で存在し、VeleroやHarborなどと同様にCarvelはその中に含まれるという形態のようだ。
VMwareのOSSプロジェクト:VMware® Open Source Software
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