クラウド運用における「可視化」の課題を解決するNECのクラウドコスト最適化ソリューションとは
はじめに
前回は、クラウドの利活用においてクラウドのコスト管理が重要になってきている点や、コスト管理の最適化にフォーカスしたプラクティスであるFinOpsについて触れた。
また、合わせて実際にFinOpsのプラクティスを取り入れ、クラウドのコスト管理を実現する上での課題として下記の3点についても解説した。
- 可視化における課題
- 最適化における課題
- 人的コストにおける課題
今回は、NECソリューションイノベータ株式会社が提供する「NECクラウドコスト最適化ソリューション」を用いて、上記の3つの課題のうち、特に「可視化」にフォーカスして解決策を紹介する。
「NECクラウドコスト最適化ソリューション」とは
NECクラウドコスト最適化ソリューションでは、クラウド利用の高度化をサポートするSaaSである「CloudNatix」を活用している。
CloudNatixは、昨年には「Intel Ignite Fall 2023 US Cohort」の最終10社にノミネートされるなど、注目を集めているサービスであり、マルチクラウド、マルチアカウントに対応した利用者のVM/コンテナリソースの可視化、コストの最適化、運用の簡便化を支援する機能を有し、利用者のFinOpsへの取り組みを加速するツールになっている。
NECクラウドコスト最適化ソリューションではCloudNatixをコアコンポーネントとして活用し、ユーザーのクラウド環境の「利用状況の可視化」「コスト最適化の分析」「最適化の実行」を支援する。
また、FinOpsに必要な各フェーズ(可視化、分析、最適化)を迅速に回し、かつ人的コストを軽減するとともに、NECのクラウドエキスパートがコンサルとしてユーザーに伴走しながら、クラウドの運用高度化の実現を支援する。
さらに、NECのクラウドエキスパートがコンサルとしてユーザーと伴走することで、FinOpsに必要な各フェーズ(可視化、分析、最適化)をより迅速に回し、かつユーザーの人的コストを軽減しながら、クラウドの運用高度化の実現を支援する。
クラウド利用状況の可視化
可視化における課題
前回の「可視化における課題」でも触れたように、クラウドの利用コストを削減し、適正化していくためには、まずクラウドの利用状況、全容を把握することが重要である。
合わせて、実際に最適化を実施するためには、「いつ」「どこの誰が」「どれくらい」クラウドのリソースを利用しているか、といった点も明らかにし、詳細にクラウドの利用状況を理解する必要がある。
しかし、クラウドベンダが提供する支払い明細からは、リソースの利用状況(例えばリソースに割り当てられているCPUやメモリがどのくらい有効に使われているかといった利用状況)を読み取ることができず、最適化(改善)が必要かどうかの判断難しい。
また、近年はマルチクラウド、マルチアカウントでの活用が行われるケースも珍しくなくなってきているが、例えばユーザー企業が全社のクラウド利用状況の全容を把握するためには、各クラウドベンダ、アカウント毎の支払い明細を確認し、利用状況を確認する必要があるため、非常に手間がかかることも課題となっている。
CloudNatixが提供する可視化機能の概要
CloudNatixでは、こうした課題を解決するため、ユーザー企業のクラウドコストを横断的かつ階層的に管理し、簡単にコスト構造を把握するための機能を提供している。
情報システム部門が全社のクラウドの利用状況を確認し、各事業部単位でも自身の部門が利用しているクラウドを可視化する、といったイメージを掲載する(下図)。
CloudNatixではAWS、Azureといった異なるクラウドベンダの情報を収集し、一元管理できる。また、単一のクラウドベンダの利用でも複数のアカウントを利用している場合には、それらのアカウントの情報を一元的に管理、可視化することも可能だ。前述のように、昨今はマルチクラウド、マルチアカウントでの運用が標準的になってきているため、可視化においてはこうした横断的に情報を集約し管理できるツールが非常に有効になる。
また、図のような組織構造をユーザー企業が利用しているクラウド側の設定を変更せず、CloudNatixの機能だけで実現することも可能だ。もちろん、利用しているクラウドプロバイダーやアカウント、付与しているタグ情報なども構造化に利用できるため、これら情報を用いながらユーザー企業が見たい単位、見たい軸での可視化を実現できる。
こうしてCloudNatixに収集したデータは、下図の例のようにダッシュボードで一望できるようになる。
リソースの使用量(CPU、メモリ)やCloudNatixの節約提案を適用した際の削減額の総額といった、クラウドのインフラコストに関連する情報が、その値の変動も含めて可視化されるとともに、CloudNatixで定義した組織ごとに確認することもできるようになる。
以降では、可視化機能についてユースケースと合わせてさらに詳細に紹介する。
ユースケース1:システム管理者視点での可視化
例えば、全社のシステム管理者の立場であれば、まず自社のクラウド利用状況の全容を素早く把握するとともに、クラウドの適正利用が進んでいない部門に対しての改善指示を行う、といったアクションが必要になるだろう。
管理者の視点では、CloudNatixを用いることで複数のクラウド、複数のアカウントの情報を1画面に集約して確認できるようになり、複数のクラウドのコンソールを別個に確認し、情報を整理して問題個所を特定する、といった手間を省くことが可能になる。全社のクラウドコストの状況や最適化のポテンシャルを簡単・迅速に確認できるようになる。
また、クラウドのVMやコンテナといったコストの消費状況は前述の組織単位にドリルダウンして確認することも可能なため、浪費の多い組織に対して改善を促すといったようなアクションも取りやすくなる。最適化の機会の多い組織を集中的にフォローする、他の組織と比較して効率的にインフラが利用できている組織の取り組みを紹介するなど、効率的に推進できるようにもなる。
ユースケース2:事業部や組織単位での可視化
それでは、管理部門以外の事業部や組織単位での可視化ではどうだろうか。
システム全体の管理者ではなく、事業部ごとといった下位の組織においては、「自部門の情報のみ」など管理対象に合わせた権限を付与し、可視化範囲を制限するといったこともCloudNatixで簡単に実現可能だ。クラウドの利用コスト(支出情報)のような機微なデータは、アカウントの管理者や情報システム部門の管理者など、特定のユーザーのみが閲覧できるように制限されているケースがほとんどだ。そのため、現場の利用者は月次の請求のタイミングなど、支払いが確定したタイミングで請求額を認識することになるため、コストの改善、最適化が後手になってしまう。
しかし、CloudNatixでは前述のとおり、情報の可視化の範囲を制限できるため、利用者自身に関連するインフラコストの状況を、リアルタイムに確認することが可能になる。
例えば、全体管理者が全社の情報にアクセスできるのに対し、A事業部の責任者は事業部全体を、A1部門は自部門のみの利用状況を…といったように、組織構造に合わせてクラウドの利用状況、改善ポテンシャルを可視化できる。
このように、クラウドの利用者全員が自身の責任の及ぶ範囲の利用状況やコストの削減ポテンシャルを見える化することで、全社横断の改善の取り組みだけでなく、組織単位でコストの最適化が必要かどうかの気づきを得たり、実際にコスト最適化のためのアクションを起こしやすい環境を簡単に整備できる。
・CloudNatixが提供するさらなる可視化機能
また、CloudNatixでは、さらなる可視化機能としてユーザーが見たい内容をカスタマイズし、独自のダッシュボードを作成する機能も提供している(2024/02時点ではAWSのみ)。
例えば、月次や週次といった期間で組織ごとの支出の変動をグラフ化したり、Reserved Instansesの適用状況といった、さまざまな用途で情報を可視化できる。
おわりに
今回は、前回で紹介したクラウド運用の課題に対する解決策として、NECクラウドコスト最適化ソリューション、およびソリューションのコアとなるCloudNatixの概要について紹介するとともに、「可視化における課題」についての具体的な解決策についても紹介した。
冒頭で紹介したように、CloudNatixはコスト最適化の課題である「可視化」「最適化の提案、実行」を強力に支援するツールである。次回は、引き続きNECクラウドコスト最適化ソリューション/CloudNatixが提供する「最適化の課題」の解決策について紹介していく。
*NECクラウドコスト最適化ソリューションでは、無料のトライアルも提供しています。実際に可視化、最適化などに課題をお持ちで、ご興味がおありでしたら、以下のサイトからお問い合わせいただければ幸いです。「NECクラウドコスト最適化ソリューション」
https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/sl/cloud-cost-optimizer/index.html
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