はじめに
今回は前回の応用例として、もっと意味のある図形を描くために「三角関数」の「sin(正弦)」と「cos(余弦)」を使います。三角関数は要するに円周上の(X,Y)座標に関する計算を三角形を用いて計算するようなものです。
今回のサンプルはほとんど前回のテンプレートに書き足すだけです。まずラインを1本とSIN波とCOS波を描きます。次に円1個と色相12色の円を描いて、新規レイヤーを作成していきます。
SIN波とCOS波を描く
SIN波とCOS波は短い直線をたくさん繋げて曲線のように見せています。人間の人差し指を曲げてみてください。3本の直線の骨が曲がっていますが、少し曲線にも見えますね。
1本のラインを描く
前回のテンプレート「template.py」を参考に、サンプルスクリプト「line.py」のようにスクリプティングして「▷(実行)」ボタンを押すと、黒い1本のラインが描画されます(図1)。
今回は図形の境界が滑らかに見えるように「アンチエイリアス」をかけます。Windows標準の文字はズームしてみると塗りの境界がギザギザで、PDFファイルの文字の方が塗りの境界が滑らかに見えますよね。あれはアンチエイリアスがかかっているからです。
図1:1本のラインを描画
・サンプルスクリプト「line.py」
05 | def create_doc(width,height): |
06 | doc = Krita.instance().createDocument(width,height, "Document name", "RGBA", "U8", "", 300.0) |
07 | Krita.instance().activeWindow().addView(doc) |
11 | pixmap = QPixmap(doc.bounds().size()) |
12 | pixmap.fill(QColor(255,255,255,255)) |
15 | painter.setRenderHint(QPainter.Antialiasing,True) |
16 | pen = QPen(QColor(0,0,0,255)) |
19 | painter.drawLine(0,0,800,800) |
21 | return pixmap.toImage() |
23 | def set_layer(doc,img): |
27 | layer = root.childNodes()[0] |
28 | if img.sizeInBytes() == 4 * layer.channels()[0].channelSize() * doc.width() * doc.height(): |
30 | ptr.setsize(img.byteCount()) |
31 | layer.setPixelData(QByteArray(ptr.asstring()), 0, 0, doc.width() , doc.height()) |
36 | doc = create_doc(800,800) |
39 | doc.refreshProjection() |
【サンプルスクリプトの解説】
「draw_line」関数で直線を描画します。
イメージのデータを「pixmap」変数に代入し、真っ白に塗り潰し(fill)ます。
「QPainter」クラスのインスタンスを「painter」変数に代入し、pixmap変数への図形の描画を開始(「begin」メソッド)します。
「setRenderHint」メソッドで図形にアンチエイリアスをかける設定をします。
「QPen」クラスで線(輪郭)の色を黒色に指定し、太さを50に指定して(X,Y)座標の(0,0)と(800,800)を繋いで直線を描画します。
「end」メソッドで「pixmap」変数への描画を終了し、「QImage」クラスに変換したデータを戻り値として返します。
「begin_draw」関数の「create_doc」関数で800x800pxのドキュメントを作成し、draw_line関数を呼び出します。
SIN波を描く
サンプルスクリプト「line.py」に追記し、サンプルスクリプト「sin.py」のようにスクリプティングして「▷(実行)」ボタンを押せば、SIN波の曲線が描かれます(図2)。
正弦を取得する「sin」関数には引数に角度ではなく円周率の「ラジアン」を渡します。ラジアンとは円1周の360度を「2π(パイ)」とした場合の度を表します。
図2:SIN波の描画
・サンプルスクリプト「sin.py」
04 | pixmap = QPixmap(doc.bounds().size()) |
05 | pixmap.fill(QColor(255,255,255,255)) |
08 | painter.setRenderHint(QPainter.Antialiasing,True) |
09 | # pen = QPen(QColor(0,0,0,255)) |
12 | # painter.drawLine(0,0,800,800) |
15 | return pixmap.toImage() |
17 | def draw_sin(doc,painter): |
18 | for i in range(0,doc.width()): |
19 | color = QColor.fromHsl(i%360, 255, 128, 255) |
24 | radian = math.radians(x1) |
25 | y1 = doc.height()/2-90*math.sin(radian) |
27 | radian = math.radians(x2) |
28 | y2 = doc.height()/2-90*math.sin(radian) |
29 | painter.drawLine(x1,int(y1),x2,int(y2)) |
【サンプルスクリプトの解説】
「draw_line」関数で「draw_sin」関数を呼び出します。
スクリプトを「#(コメントアウト)」すると、その行のスクリプトは実行されません。#を書く代わりにその1行を削除しても構いません。
「draw_sin」関数でSIN波を描画します。
曲線の色は色相を変えて描くので「fromHsl」クラスメソッドで0~360未満の整数で表します。
(X,Y)座標=(i,中心-90*sin(iのラジアン))です。ただし直線をひくので、そこから(i+1,中心-90*sin(i+1のラジアン))へのライン(drawLine)を描きます。
COS波を描く
サンプルスクリプト「sin.py」に追記し、サンプルスクリプト「cos.py」のようにスクリプティングして「▷(実行)」ボタンを押せば、SIN波に重なってCOS波も描かれます(図3)。
余弦を取得する「cos」関数も「sin」関数同様、引数にラジアンを渡します。角度からラジアンに変換する中身は「ラジアン=角度*2*π/360」で計算します。πは約3.141592です。
図3:SIN波とCOS波の描画
・サンプルスクリプト「cos.py」
04 | pixmap = QPixmap(doc.bounds().size()) |
05 | pixmap.fill(QColor(255,255,255,255)) |
08 | painter.setRenderHint(QPainter.Antialiasing,True) |
12 | return pixmap.toImage() |
14 | def draw_cos(doc,painter): |
15 | for i in range(0,doc.width()): |
16 | color = QColor.fromHsl(i%360, 255, 128, 255) |
21 | radian = math.radians(x1) |
22 | y1 = doc.height()/2-90*math.cos(radian) |
24 | radian = math.radians(x2) |
25 | y2 = doc.height()/2-90*math.cos(radian) |
26 | painter.drawLine(x1,int(y1),x2,int(y2)) |
【サンプルスクリプトの解説】
「draw_line」関数で「draw_cos」関数も呼び出します。
「draw_cos」関数でCOS波を描画します。
曲線の色は色相を変えて描くので「fromHsl」クラスメソッドで0~360未満の整数で表します。
(X,Y)座標=(i,中心-90*cos(iのラジアン))です。ただし直線をひくので、そこから(i+1,中心-90*cos(i+1のラジアン))へのラインを描きます。