Zabbix Summit 2024開催。キーノートの目玉はZabbix Cloudとバージョン7.0
2024年10月4日、5日にラトビアの首都リガで開催されたZabbix Summit 2024から、初日のキーノートセッションを紹介する。
今回のカンファレンスも過去のZabbix Summitと同様にRadisson Blu Hotelで開催され、約450名の参加者、37名のプレゼンテーター、パートナーやZabbix社員を含めると500名程度が年に1度のカンファレンスに集った。リガに集まった参加者の国籍は48ヶ国にもおよび、毎年の感想になるが同窓会的な雰囲気が至る所で感じられるIT産業でも独特の雰囲気を持ったカンファレンスである。
2024年でリアルのカンファレンスは12回目という。
キーノートの目玉はZabbix Cloud
Zabbixはオンプレミスのモニタリングソフトウェアとして有名だが、最近はIoTデバイスのモニタリングやクラウド上で利用するケースも増えており、実装の方法はさまざまだ。その中で今回のキーノートセッションの一番のトピックは、Zabbix Cloudだろう。キーノートのプレゼンターはもちろんZabbixのCEOであるAlexei Vladishev氏だ。
Zabbixを使う理由はインフラやアプリケーションのモニタリングだが、実際にはZabbix本体のアップグレードやセキュリティパッチの適応、パフォーマンスチューニング、データベースのバックアップなどさまざまな管理作業が発生する。それをZabbix側で担当しようというのがZabbix Cloud誕生の背景だ。いわゆるSaaS版のZabbixとも言える。
価格については当日配布されたパンフレットに詳細に記載されているのでその内容を紹介したい。
価格はNanoから始まり2xLargeまでの7段階、それぞれモニタリングするアイテム数とインターバルから算定される。詳細はZabbixのパートナーに相談して欲しいが、ざっくり言えば最小で月50USドル、2xLargeで月5000USドルを超える金額になっている。またリージョンは北米(バージニア)、ヨーロッパ(フランクフルト、アイルランド)、アジア(シンガポール)、南米(サンパウロ)の5か所のデータセンターに限定されている。アジアからのアクセスは日本ではなくシンガポールに集約するということだろう。
これでオンプレミスからパブリッククラウドに加えてSaaS形式でのモニタリングが提供可能となったことになる。冒頭で挙げたZabbixそのものの運用管理の手間がなくなり、常に最新かつ最適な構成でのZabbixを利用できるというのが最も大きなアピールポイントだ。
またZabbix Cloudはオンプレやパブリッククラウドと組み合わせて使うハイブリッド構成にも最適と説明した。サービスとしてモニタリングを提供するシステムインテグレータなどにとっては、顧客ごとのインスタンスを実行することも可能だと言う。
すでにZabbixの公式サイトから利用開始できるようになっている。デバイス数と収集するメトリクスの数と頻度によって毎月のコストを算出する機能も用意されているので参考にして欲しい。
サービスとして提供する際の認証のために必要なクレデンシャルについて、パスキー対応が特に発表されなかったのは残念だ。Vladishev氏へのインタビューでは「必要性は十分に理解している」という回答をもらえたので、今後の進化に注目したい。またハードウェアという意味では、機械学習の主要なプラットフォームであるGPUクラスターについてもバージョン7.2においてモニタリングの対象とする方向で検討していると説明した。
Zabbix バージョン7の新機能
ここからはZabbixのバージョン7に関する解説に移行した。
細かな変更だが、ZabbixのライセンスがGPLv2からAGPLv3に変わったと解説。これはネットワークサービスとしてZabbix Cloudが提供されることに合わせるための変更だろう。
他にはグラフィックユーザーインターフェースの進化を説明。リアルタイムでモニタリングの結果を表示するWidgetにさまざまな改良がくわえられたことを説明した。
そしてWebサイトのモニタリングという部分では、エンドユーザーが行う動作を合成したやり方でモニタリングが可能になったと説明した。
これはECサイトなどから情報を収集する方法と同じ発想だが、Zabbixの場合はあくまでも自社サイトのモニタリングのための実装ということで、著作権の問題などは発生しないという考えだろう。問題が発生した場合に自動的にスクリーンショットを撮ってログとして残すような機能も用意された。ただこのスクレイピング形式だと、Webサイトを運用管理している部門とのすり合わせは必須になる可能性が高いと思われる。New RelicやAppDynamicsが宣伝しているWebモニタリングの発想とは異なるいわゆる力技的にデータを収集する実装方法と言える。この方法であればWebサイトの構築にさまざまなフレームワークが使われていたとしても、一元的なデータの収集が可能になるということだろう。
また大規模なモニタリング環境に向けた複数Proxyを使った場合のダイナミックなロードバランシングも実装された。これは複数のProxyが実装されている場合に1台のProxyが実行不可となった場合に、他のProxyがモニタリングするインスタンスグループの再構成を行ってモニタリングを継続するという機能だ。
この機能についてもVladishev氏にインタビューした際に「あの機能はどうやって実装しているんですか? アメリカの企業なら機械学習でやりました! って宣伝しそうですけど」と質問してみると「あれはちゃんとしたアルゴリズムを作って実装しています。我々はアメリカの会社ではないので(笑)」と真面目に答えてくれた。
その他にも、いかにもユーザーからのリクエストに対応して改善した機能をいくつか紹介。ここでもユーザーからの意見に真摯に対応するZabbixらしさが出ている部分だと思える内容だった。
初日のキーノートということで新機能満載の内容となった。2023年に紹介された機能も複数含まれていたが、それらについてもより具体的に解説するのが、いかにもZabbixのキーノートであると感じられた。